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親の再婚で義理の妹と同居するようになった。天真爛漫で可愛い妹は俺に懐いてくれているけど、俺は君に手を出せない

「じゃあ、お兄。また後でね」と、香澄は言って、手を振りながら降りていく。


「あぁ、またな」と俺が見送っていると、「あなた達、本当に仲が良いわね。付き合ってるの?」と、亜希が横から話しかけてきた。


「いや、付き合ってないよ。兄妹として仲が良いだけだよ」

「ふーん……」と、亜希は素っ気なく返事をして、横髪を人差し指でクルクルと巻き始める。


 少しして腕を下ろすと「それってあなたがそう思ってるだけで、相手はそう思ってないんじゃないの?」


「え? そんな訳ないよ」

「どうして、そう言えるの?」

「だって香澄、俺に照れているような仕草を滅多に見せないもん」


 俺がそう言うと、亜希は外を眺め「ふーん……」と、また素っ気なく返事をする──しばらく沈黙が続き、俺も外を眺めた。


「それに俺……親から、あの子に手を出すなって釘を刺されているんだ」

「──そうなんだ」


 亜希はそう答えて言葉を詰まらせる。あの時の言葉がモヤモヤしていたから、誰かに聞いて欲しくて、ついつい口に出してしまったが、まぁ当然、反応に困るよな。俺は何を言い出しているのやら。


「ちょっと意地悪な質問していい?」

「良いけど……何?」

「もし親の言葉が無かったら、付き合いたいと思っていた?」

「……」


 おいおい、今日の亜希は随分とグイグイ来るな……恋愛話が好きなのか?


「えっと……どうだろ? 正直、意識はしてなかったから分からない」

「そう」


 もし親の言葉が無かったらね……亜希のその言葉が引っ掛かって、電車を降りるまで、ずっと考えていた──。


 ※※※


 学校から帰った俺は、友達と話していて読みたくなった漫画本を手に取ろうと本棚の前に立った。


「あれ? ない?」


 もしかすると香澄が借りて行ったのかもしれない。俺はそう思って隣の香澄の部屋へと向かった──香澄の部屋のドアをノックすると「香澄、居る?」と声を掛ける。


「いるよ、どうぞ」


 返事を聞いてから部屋に入ると、香澄はカーペットの上に寝ころびながら、漫画を読んでいた。


 おいおい、マジかよ……所々に服が散乱してい、下着まで転がっている。俺はジロジロと見ちゃいけないと思い、直ぐに視線を逸らした。香澄は起き上がり「お兄、どうしたの?」


「少しは部屋を片付けたら、どう? その……友達とか来たら恥ずかしいぞ」

「大丈夫だよ。私の部屋に入るのは家族と女友達だけだから」

「そう……」

「それを言いに?」

「いや、俺の○〇っていう漫画、知らないか?」


 香澄は両手をポンッと合わせると、「あ~、ごめん。借りたままだった」と言って、立ち上がった。


 机の前に行き、漫画を手に取ると「ありがとう」と、笑顔で渡してきた。俺は「次からはちゃんと返してくれよ」と言って受け取る。


「はーい。あ、そうだ。せっかくだからお兄、ここで読んでいきなよ」

「え、いいよ」

「そう言わないで」と香澄は言って、クッションを俺の前に置き「座って」


 そこまでされたら何だか申し訳なくて、俺は「あ、うん。ありがとう」と返事をして座った。


 香澄はわざわざ、もう一つあるクッションを移動し、俺の横に座る。チラッと視線を向けると、相変わらず照れているような様子は無かった。香澄は異性ではなく、俺の事を兄として見ていて慕ってくれているんだ。


 でも俺は……俺はどっちなのだろう? トクン……トクン……と感じる胸の高鳴りが、俺を混乱させていた。


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