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親の再婚で義理の妹と同居するようになった。天真爛漫で可愛い妹は俺に懐いてくれているけど、俺は君に手を出せない

 家に帰り、俺はベッドに寝ころびながら携帯ゲームをしていた。するとコンコンとノックが聞こえ「瑠衣さん、ちょっと良いですか?」と香澄さんの声がした。


 瑠衣さん? それに敬語? どうしたんだろ? 俺はベッドから起き上がり「はーい、どうぞ」と答えた。


「お邪魔します」と、香澄さんがゆっくりとドアを開け、入ってくる。


「どうかした?」

「えっと……ちょっと確認しておきたいことがありまして」

「確認したい事? まぁとりあえずクッションの上でも座ってよ」

「はい」


 香澄さんは返事をして、近くにあった黒色のクッションに座った。


「それでどうしたの?」

「あの……今日、学校で友達と話していて、ふと気づいたんですけど」と、香澄さんは言って俯く。


「今朝から瑠衣さんのこと、行き成りお兄ちゃんと言ったり、タメ口聞いたりして、馴れ馴れしいとか、厚かましいとか思われてないかと心配になりまして」


「あー……」と俺は声を出し、両手をベッドの上につく。そして「俺はそういうの全然、気にしないタイプだから大丈夫だよ」


 香澄さんは顔を上げると「本当ですか!?」


「うん、本当」

「良かった……実は私、ここに来る前からお兄ちゃんの写真を貰っていて、ずっとお兄ちゃんと思って過ごしていたから、つい馴れ馴れしくしてしまって──」


 あー……なるほどね。通りで順応力が高い訳だ。


「お兄ちゃんがそう言ってくれて安心しました」

「それは良かった」

「あと、もう一つ良いですか?」

「どうぞ」と俺は、片手を差し出す。


「その……もし良ければ私の事は香澄さんではなく、もっと親しげに呼んでもらって良いですか? なんか、さん付けだと寂しくて……」


 俺は手を引っ込め「分かった。じゃあ……最初は香澄ちゃんで良いかな?」と答えると、香澄ちゃんは明るい笑顔を見せ「はい!」と、元気よく返事をした。


「ほかに何かある?」

「うぅん、もう大丈夫」

「そう。じゃあ何かあったら、またおいで」

「うん」


 香澄ちゃんは返事をして立ち上がると、笑顔で手を振ると部屋を出て行った。


 最初は大人しそうなんて思っていたけど、今までのやり取りを振り返ってみると天真爛漫という言葉がよく似合う子だと思う。


 ここ最近、普通の生活に飽きていただけに、これから先、どんな生活が待っているのか、とても楽しみだ。


 ※※※


 それから数ヶ月の月日が流れる──。


「おにい、部屋に入っていい?」

「どうぞ」


 香澄が部屋に入ってきて、ベッドに寝ころんで携帯でゲームをしている俺の横に立つ。


「お兄、またゲームしているの?」

「そうだけど?」

「下に誰も居ないから、一緒にテレビ観ようよ」

「え~……いま良い所なのに?」

「良い所でもセーブして! だって寂しいんだもん」

「──分かったよ」


 俺は途中のゲームをやめ、徐に起き上がる。香澄は可愛らしく小さくガッツポーズをすると「やった」と、声を漏らした。


「じゃあ先に行って待ってるからね」

「はいよ」


 俺は携帯をズボンのポケットにしまうと、居間へと向かった──香澄は既にソファに座りテレビを観ていた。俺はソファの横にある椅子に座る。


「お兄……」と、香澄の不満げな声がして俺は顔を向けた。


「どうした?」

「寂しいと言っているのに、なぜそこに座る?」と香澄は言って、ソファをポンポンと優しく叩き「普通、こっちでしょ?」


「えー……確かに二人座れるけど、狭くて恥ずかしくない?」

「兄妹なんだから恥ずかしがる必要ないじゃない?」

「そうなんだけど……」

「だったら、こっちおいでよ」


 俺は徐に起き上がりながら「分かったよ」と返事をして、香澄の隣に座る──肩が触れそうなぐらい──いや、微かに触れるぐらい近くて、ほら恥ずかしい。


 香澄の方はどうなんだろ? 気になってしまい、チラッと香澄の方に視線を向けてみる。香澄は全然気にしていない様子で、テレビを観ながら笑っていた。まぁ……予想はしていたけどね。とにかく俺が照れているなんてバレない様に、テレビに集中することにした。


 ──数分して、香澄が「面白いね」と、俺に近づき頭を肩に乗せてくる。おい、マジかよ!! と、驚いていると、ダイニングのドアが開く音が聞こえ、更にビックリする。


 それでも香澄は俺の肩に頭を乗せながら、テレビを観ていた。いや、まぁ……いやらしい事をしている訳ではないが、大したもんだな、おい。


「ただいま」

「お帰り」

「お帰りなさい」


 母さんが履いているスリッパの擦れる音が段々と近づいてくる。俺はこの状況を親に見られていると思うと、ドキドキで後ろを振り返れずにいた。


「あら、あなた達。随分と仲良しねぇ……」


 素っ気なくそう言った母さんの言い方が何となく棘があるように感じる。だが香澄はそんなこと感じなかったらしく、嬉しそうな笑顔を浮かべ「でしょ~」と答えた。


 少し沈黙を挟むと、母さんは「香澄ちゃん。キッチンに食材があるから、冷蔵庫にしまってきてくれる? 私は瑠衣と話があるの」と言った。


 なんか怖ッ! 話って何だよ。嫌な予感がする。


「はい、分かりました」と香澄は返事をして、ソファから立ち上がると、キッチンへと向かった──。


 気まずくて顔を向けられなかった俺に、母さんは「瑠衣、こっち向きなさい」と言ってくる。俺は「はい」と返事をして母さんの方に体を向けた。


「高校生だし、分かっているとは思うけど、瑠衣。あの子に手を出すんじゃないわよ。やっと掴んだ幸せだから、手放したくないの。あなたならこの意味、分かるわよね?」


 ヒステリックになる訳でもなく、淡々と話す母さんが、逆に怖い。確かに母さんの言っている意味は分かる。俺の本当の父親は酒癖が悪く、仕事もロクにしないでギャンブルをしていた人間だ。それに比べれば今は雲泥の差ぐらい幸せなのは理解できる。だから俺は「──はい」と答えるしかなかった。


「お願いね」と母さんは言って、キッチンの方へと歩いていく。俺は何も返事をせずに見送っていた。将来なんてどうなるかは分からない……だから俺はここでは返事をしたく無かった。


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