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誤算

ある会社の誤算

作者: 夏野やすみ

 A社は、リストラによって経費削減とともに従業員の質を高めようと、厳しい通達を社内に出した。

「大きなミスをした者はクビ」

 どの程度の失敗がリストラの対象になるのかはよくわからなかったが、社員たちも非正規社員たちも戦々恐々。不安と緊張のあまり、かえってミスをしてクビになる者が続出した。

 その一方で、他人の評判を落とすことによって自身の保身をはかろうと、同僚の些細な失敗を何倍にも拡大して上司に密告したり、悪口を広めようとする者も多かった。

 さらには、これを機会にライバルや嫌いな人間を排除しようとする者さえ現れた。

 そうすると、そういうギスギスした人間関係に堪えかねた者は、ストレスからミスを犯してクビになったり、自ら辞めていったり。

 いつしか、会社に残るのは、居丈高にまくし立てて他人にストレスをかけるのが得意な者や、根回しして他人の悪口を広めるのが得意な者ばかりになっていった。

 そういった口で世渡りしてきた者たちは、仕事ができると自負しており、周囲にもそう思われていたが、実際には往々にして地味な根気仕事は苦手。根気仕事を人にさせて、自分はそのアラを探し、「こんなミスをするなんて信じられないね」「結局、俺たち仕事のできる人間が補わなくちゃならないんだよな」などと触れ歩いていたが、いざ蹴落としたライバルの仕事を受け継いでみると、なかなかこなしきれない。

 だが、彼らがミスをしても、もはやクビにする余裕はA社にない。リストラのしすぎで人が半分以下に減ったのに、人を使い捨てにしているという悪評が広まって、求人に応じる者がめったにいないからだ。

 かくてA社は倒産した。


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