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受け入れたら楽になる(個人の感想であり、効果には個人差が有ります)

「えっと、話すよ? あれは五日前の事だったんだけれど、凄く草臥れた姿のお姉さんが山にやって来たんだ……」


 ドリアードによると精霊である自分に個別名は無いとの事でドリアードと種族名で呼ぶ事になりましたが、姫様が妙に張り切った様子で彼女の話を聞く様子です。

 先程まで私の事で怒っていたのは何だったのかと思う反面、あの程度の爆発では怪我など負わないという信頼だったとも思えますが、この場に若様が居なかったのが残念だとも思う。


「そんな事よりもさっさと要点だけ話しなさい。そしてお礼を渡しなさい」


「合法的に胸を見せて反応を楽しめたのですがね……」


「あのぉ、話はちゃんと聞きませんか?」


「……うわぁ。其処の黒髪の彼女が正にそのお姉さんと同じ感じだったよ」


 思わず欲望が口から出た私と欲望に正直な姫様、そして困った様子のプルートさん。しかし、どうせなら事故ではなく故意に肌を見せたいですね。若様秘蔵の本は一枚一枚自分で脱いでいく描写を細かく描いたのが多かったですし、そっちの方が好みなのでしょう。


 徐々に反応が大きくなる若様の姿を思い浮かべただけで……じゅるり。

 ああ、私の胸を直に見た事で気まずさを感じつつもその後は私の姿を見る度にその姿が浮かんで落ち着かない若様の姿も見てみたいですね。


 先に手を出されるのは仕方無しに譲りましたが、先に裸を見せるかどうかまではパンドラには譲っていませんし、夜鶴達が背中を流す場に乱入するのも……割と有り。


「あの、本当に話して良いかな? 眼鏡の子が舌なめずりしていて怖いんだけれど……」


「発情しているだけよ。日常茶飯事だから気にせずに続けなさい」


「ええっ!? ま、まあ、良いや。それでそのお姉さんなんだけれど……」


 ドリアードは少し戸惑いながらも話を始めます。私を野外で全裸にするに至った経緯を……。




「いえ、靴と靴下は残っていましたから全裸ではないでしょうか?」


「話の腰を折らない!」


「そうですね。腰は振るだけで十分です」


「あのぉ、本当に話を早く聞かないと少し面倒な事になるって予知が浮かびまして。……転職先を間違えたかも知れません」


 ドリアードが最初にその人物を見た時、印象としては自殺でもしに来たのかって位に疲れた顔をしていたらしいです。

 

「確かビキニだっけ? 僕も遭難した人間から案内のお礼にせしめた荷物の中にあった本でしか知らないんだけれど、確かそんな感じの服の上にドラゴンの頭部の帽子を被ってるって格好で、褐色の肌の殆どを露出させた若い女だったよ」


「痴女でしょうか?」


「プルート、鏡有るかしら?」


「いえ、残念ながら手元には」


「山って色々な奴が来るし、草木を荒らしたりゴミを捨てたりする奴は土砂崩れに巻き込んだりクマとかをけしかけてお仕置きするのも僕の趣味だし、何かしないか見張ってたんだ。お仕置きした後は肥料になるし、反撃で此処の僕が消えても他の場所の僕が居るから困らないしね」


 ……土砂崩れにクマって普通の人なら死んでいますが、ドリアードには特に気にした様子は見られません。


 元々精霊とは自然のエネルギーが形と人格を得た存在であり、世界各地に居ますが同じ精霊は同一人物が複数の肉体を持っているのと同じ事らしいですし、先程の命乞いだってお願い事の為であって、多少数を減らしても此方も大して気にしないと思っているのでしょうね。


 価値観の違いとは本当に面倒ですよ。私と若様の性癖が真逆だったら困るのと同じで。

 まあ、若様が私に性癖を押し付けて来るのは興奮しますが。


「お酒を大量に持ち込んでお友達がどれだけ自分に苦労を掛けているのか叫んだ後は急に泣き出して、その後でゲロ吐いてから寝たんだけれど……」


「え? それって駄目な仲間に振り回されている苦労人気質の人が耐えきれなくなっただけじゃないの?」


「僕も最初は疲れているだけみたいだし、十日間位山に閉じこめて気分転換させてあげようと思ったんだ。でも、水も食料も用意して無かったから胡桃の一つでもあげようと思ってた時にから異変が起きたんだよ。……山や周辺に咲き乱れている変な魔力の花を見ただろ? あの花、根っ子を通して他の植物の力を吸って……うっ!」


「ちょっとどうしたの!? しっかりしなさい!」


 ドリアードは急に膝から崩れ落ち、姫様が慌てて助け起こしますが、まるで鬼族の秘薬を飲まされた状態で母様にベッドの上で搾り取られていた父様みたいに活力が見られません。

 息も絶え絶えですし、生命力が完全に枯渇し始めている状態。母様に連れられて向かった社会見学先の戦場で死に掛けた兵士がこの様な顔でした。


 あれ? だとすれば父様は腹上死寸前だったのでしょうか?


 腹の上は母様でしたけれど。


「姫様、回復魔法を彼女に……」


「うん、分かったわ。”ルナヒール”!」


 姫様が唱えたのは文献に載っている光の魔法以外の魔法。

 どうして光の力で回復するのかは謎ですが、魔法は創造した人の想像力次第な所が有りますし、ドリアードを包んだ月明かりに似た色合いの光の球が治癒効果を持っているのも姫様の発想力の賜物なのでしょう。


 頭は弱いですが、こういった所で思わぬ力を発揮するのですよね、この方は。



「しかし山の中に生息する精霊が山の中で此処まで弱るだなんて……」


 精霊は生まれ落ちた場所の状態に自らの状態も左右される存在。例え一部の花が枯れても他の花がそれを養分にして咲けば消耗は少ない筈。一部ではなく全体が精霊と連動するのですから。


 ですが例の花によって周囲の植物の力が吸われても、その花が元気なら問題は無し……とはなっていないらしいですね。

 姫様の魔法で生命力を回復させる姿を見ながら足元の花を踏みにじる。

 ……この花、当初の予想よりも普通の花では無いらしい可能性が高まった様ですね……。



 繁殖力もそうですし、あの爆発物で吹き飛ばされた木を観察すれば枯れ木になり掛けている物もチラホラと見受けられる。

 これが食料を生産する地域で起こればどうなるのか、少し考えればプルートが言った通りに時間が惜しいというのも納得の話です。


「これは王国に話して対応は丸投げって事にはなりませんか? なりませんね」


 正直言って此処で解決しても恩を売る為の証拠には乏しいですし、放置が正解な気がしますが……。



「取り敢えずレナの同類が原因って訳ね? じゃあぶっ倒してしまえば良いじゃない。夕食前の軽い運動よ」


 姫様が張り切ってシャドーボクシングまで始めましたし、私には止める事が不可能です。

 あっ、プルートがオロオロしていますが、彼女もその内慣れるでしょうね。クヴァイル家の関係者って当主とその娘達と陛下以外は結構こんな感じですから。


 特に母様とその相棒。あの二人が若様と姫様に強く影響してますよね。



「プルート、一言だけ助言を。受け入れれば楽ですよ」


「ええっ!? 姫様を止めないのですか!? 聖女の再来……かどうかは既に疑問ですが、何かあれば困るかたじゃないですか」


「だって面白そうだし」


「ほら、こんな感じですので。若様は妹とペットが絡まなければ大丈夫ですから安心しなさい。……絡んだ時は諦めなさい」


「えぇ……」


おやおや、未来予知が可能な割には随分と振り回されていて……。


「そんな事よりもお客様みたいですし、此処は私達二人がお出迎え致しましょう。……来ますよ」


「は、はい! 姫様、此処はお任せを!」


 山をこんな状態にした相手が此処まで騒いでいる私達に気が付かない筈も無く、地中を通って何かが迫って来ました。

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