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絶対許せんケジメを付けろ

「姫様!」


 突然投げられた物体が爆発した瞬間、プルートは私の手を掴んで引き寄せて闇の防壁をドーム状に展開して衝撃も巻き起こった土煙も防ぎきるけれど、爆発音さえも防いじゃってるから外の様子がさっぱりね。


 これじゃあレナの様子が分からないじゃない。


「姫様、直ぐに解除を……」


「良いわよ。私が破るから」


「いえ、これって陸生のドラゴンの突撃にも耐えられる強度でして……」


 ドラゴンの突撃も防ぐ? へえ、それは結構な事ね。でも……私と比べたら文字通りにレベルが違う!

 ステータス画面なんて存在しないから確認は出来ないけれど、何らかの理由で大勢の敵足りえる敵を倒せば強くなれるこの世界でゲームではラスボスだった私が戦い続けたらどうなるのか。


 それは私の拳が語る。息を深く吸い込んで全身に酸素を供給、踏み込みと同時に腕を振り抜いた。


「せい!」


「素手で砕いたぁ!?」


 私の周囲に展開された障壁はハードカバー程の分厚さで、その強度は下手な金属よりも上。これならドラゴンの突進だって十や二十程度の回数なら余裕で耐えられるでしょう。




 で? その程度で私の拳に耐えられるとでも? 答えは目の前で重機の突進を受けた発泡スチロールみたいに砕け散った障壁よ。


「この程度で驚いていちゃ大変よ? 私もお兄様もこの程度じゃ終わらないもの。って、レナー! 大丈夫ー!?」


 私が殴って砕いた場所を中心に崩壊を始めた漆黒の障壁から抜け出した私は驚き顔のプルートの方に振り返り、慌てて周囲の状況を確認する。

 土煙が酷いから手をブンブン振って振り払い、慌ててレナが走り去った方に向かう。周囲の草木は地面ごとひっくり返されて、爆発が起きた方を中心に結構な深さのクレーターになってるし、これじゃあ……。


「お願いだから無事で居て……」


 そう願いながら向かったクレーターの中心にレナの姿があった。でも、これだけの爆発を至近距離で受けたんだから当然だけれど無事な訳が無くて、原型すら留めていなかった……。


「そん……な……。こんな事が、こんな事が認められる訳がないじゃない! ふざけないで! ふざけるなぁああああああっ!」


 その場で膝を着いて認めたくない現実を消し去りたいと願って拳を振るうけれど、小さなクレーターばかりが増えるだけで現実なんて何も変わってくれやしないって本当は分かっているの。



「レナが、レナが……」


 そう、私がどんなに否定しても何も変わらず、認めなくても現実は目の前にある。あの爆発でぼろ布同然の無残な姿になった……メイド服を邪魔だとばかりに脱ぎ捨てた無傷のレナが立っていて、呼吸に合わせて巨大な脂肪の塊が揺れていたのよ。



「レナが着痩せするタイプだったなんて。それも胸とお尻だけとかふざけてんのっ!?」


「そう言われましても私のスタイルは生まれ持った物ですし、何も特別な事はしていませんよ? ……眼鏡は無事で助かりました。あっ、姫様も無事で良かったです」


 困った様に首を傾げれば更にレナの胸が揺れる。

 あれかしら? 私の大きくなる分を吸われた結果が目の前のセクハラエロメイドなのかしら? 


 爆発物を投げて来たのは間違い無く敵だし、貴族令嬢として見逃せないから拳で千倍返しにするとして、普段から服の上からでも分かる巨乳のムチムチ系セクシーボディの癖に脱ぐと更に凄いとか……。



「プルート、此奴は私達貧乳同盟の敵よ」


「そんな同盟に参加した覚えは無いのですが……」


 遠慮しているプルートに親指を立てて笑顔を向ける。私が認めてあげるから大丈夫よ。私と貴女は今日を持って同志になったわ。

 それを笑顔とウインクで伝えればプルートには届いたみたい。これぞ貧乳の絆って奴ね。


「……えっと、それよりも先に仕掛けた相手をどうにかしませんか? ……”実入りは良いし居場所も出来るけれど気苦労が耐えない”と予知していましたがこんな感じだったとは。レナさん、と、取り敢えずこれを着て下さい」


「あっ、マッパになるって分かってたのね」


 プルートが荷物の中から服を取り出してレナに渡しているし、爆発は兎も角としてこうやって服が無くなるって予想していたみたい。

 でも、その服ちょっと小さくない? 胸、凄く強調されているし、身長は合っていても胸のせいで布が不足してヘソが見えているんだけれど?


「胸の辺りがパツパツですね。普段は余裕を持たせているので動きにくいと思いますが、この際我慢しましょうか」


「はいはい、巨乳連合軍は大変ね。それで本当に怪我はないの? 鍛えた鬼って本当に大変、ねっ!」


「ひぎゃっ!?」


 自覚はなくても自慢にしか聞こえない言葉にイラッとしつつ靴の先で小石をすくい上げた私は会話の途中で脚を振り抜く。

 小石は横の岩陰からこっちを伺っていた奴が隠れる岩を粉砕してその姿を露わにしたわ。

 草色の髪にはツタが混じっていて、そのツタがバラと同じ色の肌に巻き付いて服の役割を果たしている。

 大きさはレキア達妖精と同じ位だけれど背中に蝶みたいな透明の羽は存在しない。

 ……スタイルが良いわね。爆発物投げて来たんだから敵認定で構わないかしら?


「ひ、ひぃいいいいいいいっ!? お、お助けぇええええっ!?」


「あれは”ドリアード”、妖精に似た存在である”精霊”の一種ですね」


「確か自然に存在するエネルギーが意志と肉体を持った存在だっけ? いや、何よ、その”まさか覚えているなんて”って言いたそうな顔は」


「……キノセイデスヨ?」

 

 実際飛べないのか腰を抜かしたドリアードは這って逃げ出そうとしているけれど、そんな逃げ方じゃサイズ違いの私から逃げられる筈はないわ。

 一足飛びに追い付いて脚を掴んで持ち上げる。ジタバタ動いてはいるけれど体の捻り方がなってないわね。そんなんじゃ私の拘束からは逃げられないっての。


 ……それとレナ、そんな棒読みで騙される程に私が馬鹿だとでも思っているのかしら?


「ギャー!? 僕は煮ても焼いても美味しい……じゃなかった、美味しくないぞー!?」


「いや、流石に人間っぽい姿の奴を食べる気は無いわよ。それはそうとして……アンタ、さっきの爆弾はどういう気かしら? レナや私なら兎も角、爆発を受けたのがプルートだったら怪我してたかも知れないわよ?」


「いえ、私では確殺かと……姫様も無事なのですね」


「ほら! 彼女だってそう言ってるし、落とし前って知ってるかしら? 覚悟、出来てるわよね?」


 無事だったから問題無しだなんて済ませる気は私には無い。レナは家族同然で、プルートだって家に仕える人なんだから主の私は守ってあげる義務があるもの。

 そんな訳で私は貴族令嬢として当然の事であるドスの利いた声での脅しを行いながら睨む。

 ドリアードはすっかり顔面蒼白だけれど、別に殺す気は無いわ。人間と敵対関係って訳じゃない種族だし、山の異変について情報を得やすいでしょ、これならね。


「わー!? た、助けてよ、美形のお兄さん! エ、エッチな事でもして良いから命だけは……」


「私、女。お前、殺す」


「え? その胸で……ぎゃー!? ごごごご、ごめんなさーい!」


 ドリアードの頭を掴んで指に力を込めて行く。さて、貧乳の敵は死ぬべし、慈悲は無し!


「待って待ってっ!? お願いがあって君達を試したんだ。外でモンスター倒してたし、多分死なないだろうなって思ってさ! お礼はするから取り敢えず離して……」


「は? あんな大爆発する物を投げておいてお願い事? 人間と精霊の価値観が別物だってのを考慮しても虫が良すぎるわよ」


 どう考えても筋が通ってないし、話を聞く必要も感じない。まあ、後で王国の貴族にでも山に異変が起きているって伝える程度ね。


 つまり此奴を許す理由は無いのよ、私には。


「姫様、お待ち下さい! 彼女は姫様が欲する物を持っています!」


 あんな真似しておいてお願い事だなんてふざけた事を口にするドリアードに腹が立った私だけれど、慌てて駆け寄って来るプルートの言葉で手に込めた力を緩めた。

 私が欲する物? もしかして……。



「そのお礼って薬?」


 私の予想通りならお礼の品が何か決まっている。だって、それ以外は考えられないし、一旦頭を掴んだ手を離した。


「そ、そうさ! 精霊の秘薬をあげるから先ずは話だけでも聞いて。その前に逆さ吊りから解放してくれないかい? そろそろ頭に血が集まって……」


 私が欲する物で、秘薬って事は……豊胸の力がある薬ね!



「良いわ。話だけでも聞かせなさい。内容によっては私達が力になってあげる」

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