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忘れちゃ駄目な事

ブクマ二百突破 別サイトでは900間近で嬉しい

「おや? 若様が大変な目に遭っていますね。同時に美味しいと言えない事も? ……意味が分かりません」


 レナと共に山に向かっている途中で合流したプルート。ゲームでは好感度を教えてくれる以外にも幾つかの魔法修得イベントに関わる彼女だけれど、その占いの方法は詳しく説明されていなかったわ。

 確か一回目の会話で”凄い動き”だってビックリされているだけなんだけれど、今この時、私はその意味を理解した。


 こんな事になったのは歩きながらの会話の途中で、私がお兄ちゃんが何をしているのかを教えて貰おうとしたからなんだけれど……。


 歩いてる途中に唐突に立ち止まり、腕を後ろ向きにゆっくりと回しながらスローな動きで真後ろに反らし、最後はブリッジでフィニッシュ、頭に舞い降りた情報を平然とした口調で教えてくれるんだけれど、どうしてブリッジのままなのかしら?


 でも、ちょっと聞き辛いわよね、何となく。


「その変なポーズに何か意味があるのですか?」


 流石はレナね! 普段から唐突に下ネタをぶち込む空気読めないっぷりが此処で炸裂よ。あんな変なポーズをわざわざ取る理由とか普通は聞けないわよ。

 何か気まずくなる理由が有るのかも知れないし……。



「いえ、特に意味は有りません。趣味ですが、何か?」


「あら、そうなのですね。私が若様にセクハラ同然の行為を働くのと同じ理由なら止める理由は無いでしょう」


 趣味なの!? そしてセクハラの自覚は有るけれど、二つの意味で止める気は無いの!?


「アンタ達って本当にマイペースよね。それにしてもお兄様が厄介だけれど美味しい目に遭ってるのね。……日常茶飯事ね」


「普段からですね。あの方、何かとトラブルに巻き込まれますから。何割かはラッキースケベ有りで」


「……そうなのですか? 私もその辺は占っていませんでした。何かと巻き込まれる運命だとは分かっていますが、どうも占いが時属性の魔力で阻害されるので……」


 あら? プルートったら戸惑ってるみたいで実は楽しんでいるみたいに見えるけれど何故かしら?

 大抵の事は何となく分かるのに、例外的な”分からない”って事が楽しいの?


「ええ、新鮮な気分です。例えるならば既読の本ではなく粗筋のみを読んでから物語を読みみたいで。大抵の事は分かる私ですが、故に未知に対する好奇心が強いのですよ」


「ふーん。食べ慣れた物よりも新作メニューの方が食べてみたいって感じかしら? さて、さっさと行くわよ」


 ……それにしても普段から女の子と接点が出来たり、無自覚に口説いたり、本当にお兄ちゃんったら。

 うーん、矢っ張りロノスとして生まれた事で運命なのかも。


 お兄ちゃんは知らない事だけれど、”魔女の楽園”が開発される前にボツになったゲームが在るって設定資料の裏話に載っていたとお姉ちゃんが言っていたけれど、その主人公を流用したのがロノス・クヴァイルってキャラクターなのよね。


 エッチなゲームだったらしいけれど、お兄ちゃんもその影響を受けているのかしら?


「しかし、若様はそんなに異性との関わりが?」


「積極的に求めてはなくて、偶然遭遇するってのが多いんだけどね。よし、到着! どうせだったら山頂まで徒競走でもする?」


「しません」


「私の惨敗が決まっていますので」


 話をしている内に山の麓まで辿り着いた私達。そのまま先頭を歩いていたレナが第一歩を踏み出して、って、振り返ってこっちに歩いて来た!?


「ちょっと何やってるのよ? ほら、山が気になるんだから登るわよ! もう、色ボケだからって十代でボケちゃったのかしら?」


 少しも迷う様子を見せずに踵を返したまま私の横を通り過ぎるレナの腕を掴んで文句を言うんだけれど、何故か不思議そうな顔をされた。

 いや、首を傾げて溜め息を吐きたいのは私よ。


「……姫様。遂に本当に脳味噌が筋肉に浸食されたのですね。此処で山を眺めたのですから、山に入る必要は無いでしょう?」


「はぁ!? いや、ちょっと訳の分からない事を言わないでよ。山の麓から山を眺めただけでどうして異変が分かるのよ!」


「それは山を眺めたから……あれ? どうしてでしょう?」


「……レナ。ちゃんと寝てる? こんな時間から寝ぼけちゃ駄目よ?」


「……」


 さっきまで山を調べるのには麓から数秒眺めれば良いって考えに疑問を持っていない様子だったのに、目が覚めたみたいに疑問を口にした。

 ちょっと心配になって来たわね。悪さが過ぎてメイド長から罰を受けた結果全然寝ていないんじゃないの?


「ええ、最近は若様に道具を使って弄ばれる妄想が捗って睡眠時間を削っていますが仕事中に効率良く睡眠時間稼いでいるので大丈夫です」


「レナ、本当に減給ね」


「ええっ!? ちょっと困ります! 大人向けのオモチャの新作を予約していまして足りないと困るんですよ」


「……矢張り」


 レナが狼狽しながら懇願して来るけれど流石にアウトよ。乳母兄弟だからって見逃せない。

 って言うか結構大きめのタンスに整理整頓しながらもミッチリ入る程に持っているのに未だ欲しいなんて凄いわね。本当に尊敬……せずに呆れるわ。


「プルートも大変ね。こんなのの未来まで見るだなんて」


「いえ、今のは別の事に関してです。レナさんに関してですが……見ないでも大抵分かる上に見たくないので。さて、曖昧な理解ですし試しに入ってみましょうか」


「うん? そうね。さっさと山に入って……っ!?」


 レナが踏み込もうとして急に逆を向いた場所、山に入る境界線を通った時、何か目に見えないゼリー状の物を通り抜けたみたいな悪寒に襲われる。


「今の……何?」


 凄く気持ち悪かったのは私だけじゃないらしく、二人も嫌そうな顔ね。

 誰が何したのか知らないけれど、喧嘩売ってるって事かしら?


 喧嘩なら買うわよ? 割引無しの示金で買ってあげる。


「どうやら結界に分類される物らしいですね。山に入ろうとした時、山に入る必要が無いと思わせるみたいです」


 見えない何かがあった場所に手を伸ばしたプルートは触れている部分に闇を纏わせる。

 彼女の腕を中心に渦を描きながら闇が広がり、水面の最後に波紋みたいに揺れた。


 今のなんかお洒落だし、見た目だけでも真似する魔法を創ろうかしら?


 それにしても結界に反応したのはレナだけで、私やプルートは何も感じないって事は何か条件が?


 ちょっと考えれば直ぐに答えは浮かぶ。脳味噌筋肉扱いな私だけれど、其処まで馬鹿じゃないんだから!

 


「じゃあ私やプルートには効かなかったのはもしかして……貧乳だから?」


 ローブのせいで分かり難いけれどもブリッジの時に私は確信したわ。プルートは私と大差ない貧乳だって!

 あの瞬間から私の中で彼女への好感度は爆上がりなんだから。


 チェルシーはそこそこ有るし、アリアだって大きいし、私が親しい連中の中で胸囲が同じ位なのって野郎連中だけじゃないの? ……下手したら胸筋の存在で私に勝っているのも居るかも。



……けっ!


「はい。……はいっ!? えっと、魔力の性質ですよ? ほら、姫様の周囲でも花によって大胆になった方と普段通りの方がいらっしゃったでしょう?」


 ……えっと、確かに学園のあっちこっちで溶けそうな位に積極性に攻めてる女子生徒が居たわよね。

 でもチェルシーは普段通りで、逆にお尻を触った馬鹿を平手打ちにしてやったとか。


ざまあ。ついでに玉を潰されても良かったのに。凄くその光景を見たいわね。だってお兄ちゃんの友達だろうと私は彼奴が嫌いだもん。


「うん、確かにそうね。それで他のと私達の違いなんだけれど……胸が一定以下だから? チェルシーも大きいけれど平均より少し大きいって程度だし」


「違います。魔力の質だって言っているでしょう。……姫様って普段からこんなのですか?」


「ええ、脳味噌が七割は筋肉ですから」


「失礼ね!? せめて三割にしなさいよ! ちょっと忘れただけじゃない。貧乳同盟の仲間を見つけたんだから仕方無いわよ」


 流石に言わせて貰うわ。忘れがちだし、偶に自分でも忘れるけれど私は貴族令嬢!


 ……ん? 何か飛んで来て……。


「っ! 爆発します!」


 プルートの声が響いた時、レナは飛んで来た木の実を掴んで抱えるなり走り出す。


「レナ!」




 私の声が響いた時、レナが抱えた木の実が爆発した。


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