ハプニングは突然に
問・山の中で男装系美少女である友人が発情しました。どうすべきでしょう?
解答・そんなの急に答えられる訳が無い
「アンリったら少し不用心だったね。モンスターの体内にあった物を確かめもせずに顔に近付けるだなんてさ」
アンリの手から落ちて転がった虹色の玉を拾い上げた僕はポチの口元を拭くために持って来ていたタオルでくるんだ上で内部の時間を停める。
彼女みたいに不用心に嗅いだりしなかったら効果は薄いし、ハンカチだけで十分なんだけれど一応こうしておかないとね。
七色オオミミズの体内から出て来たこれは”七色情香”って名前のお香の材料になる物で、これを砕いて薬品と混ぜてお香にするんだけれど、匂いだけで強力な媚薬になっている。
しかもお香にする事で適切な濃度になる訳で、加工前は少し効果があり過ぎる。
それを不用意にもモロに嗅いでしまったアンリがどうなってるかって言うと、呂律が回っていない上に顔は真っ赤で手は無意識の内に胸に触れていた。
「び、|媚薬《びやきゅ〉!? ひょれで、どうやったらおしゃまるんだ?」
「どうやったら治まるって、時間経過しか。にしても個人差が有るのは聞いていたけれど、此処まで効果が有るだなんて。……確か普段から溜め込んでる人ほど反動で」
「うっひゃい! ひゃっ!?」
思わず口から出てしまった余計な知識がアンリを怒らせ、ポカポカと殴って来たんだけれど、今はそんな行動でさえ体を刺激するのか少し色っぽい声を上げて動きが止まる。
息が荒いし、僕に掴まって何とか立っている状況だ。
「あっ、確か体を冷やせば治まるとも……。魔法、使える?」
「む、無理……んんっ!」
これは重傷だな。少し強い風が体を撫でただけで反応しちゃったし、下手に支えようと触れたらどうなる事やら。
魔法さえ使えるなら氷魔法が得意な彼女には体を冷やすだなんて簡単だけれど、とても集中出来る状態じゃないのなら難しい。
僕が使う訳には行かないしなぁ。
……それにアンリに付いた残り香のせいか僕にも効果が出て来てしまったぞ。
アンリは男装がギリギリ通じる程度には中性的だけれど、それでも女寄りの顔だし、性別を知ってる僕には女の子にしか見えない。
いや、違うな。すっかり忘れていたけれど元々女の子にしか見えないのに男装をさせた上で魔法の力を籠めたチョーカーで喉の辺りを隠しつつ認識を阻害しているんだった。
女の子だって偶然知った僕には効果が薄れて女寄りの中性的に見えるんだけれど、アンリは立派な可愛い女の子だ。チョーカーを外した姿を見せて貰った事が有るからね。
そんな子が媚薬の影響で妙に色っぽくなってるのは目の保養になるし、ちょっと毒にもなりそうで困る。
「キュイキュイ!」
「え? ”喉が渇いたから水を飲みに行きたい”だって? 生水じゃなくって湯冷ましを持って来ているから……うん? もしかして近くに池でもあるの?」
「キューイ!」
冷たい水の匂いがするのか。これは渡りに船って奴だ。うん、急いで向かわないとアンリが後で悶える事になりそう。
何故かと言うと媚薬の効果は体温を下げれば薄まるけれど、興奮によって体温が上がれば効果は増して行くばかり。今も体中が敏感になっているけれど特に強い場所に指を這わせる寸前で止まっていたし、アンリに移った匂いが僕にも微妙に出て来ている。
「このままじゃ流されて非常に不味い事になりそうだし、急いで向かわないと。アンリ、乗って!」
姫抱きだとアンリの体が直ぐ前にあってダイレクトに匂いが伝わって来るからと僕はしゃがんでオンブの姿勢を取って背を向ける。
ちょっとだけアンリは迷った様子を見せながら僕の背中に乗ったんだけれど、耳元には乱れた息遣いが届き、鍛えているけれど女の子の柔らかさも背中に鼓動と一緒に感じてしまう。
「……ぁん。ぎょ、ごめん。体、こひゅれて……」
「急ごう!」
「……揺らひゃないで」
「悪いけれど我慢して!」
ポチの案内の下、僕が山道を駆ければ振動を感じてかアンリが悲鳴を上げ、ガシってしがみついて来た。
僕の方も頭が働かなくなって来たし、急いだ方が良いぞ。
アンリは友人アンリは友人アンリは友人アンリは友人アンリは友人アンリは友人アンリは友人アンリは……。
頭の中で何度も言い聞かせて冷静さを何とか保ち続けて背中に感じる感触を何とか誤魔化し、走り続けていると目の前には大きな池が目に入る。
「キュイ!」
もう色々と頭が働かないからポチに釣られて僕もジャンプ、結構高さだ。
「……あっ」
空中に飛び出した時に気が付いても既に遅く、僕はアンリを背負ったまま池に落ちた。
「ぷはっ! は、鼻に水が入った……。アンリ、大丈夫?」
「……ああ、何とか落ち着いて来た。未だ少し媚薬が残ってる気がするけれど……取り敢えず降ろしてくれ」
「脚着く? 結構深いよ? 君、背が低いし……」
池の深さは今居る所で僕の胸の辺りまで。勾配があるし向こうに行けば大丈夫そうだけれど、このまま背負って行くのはちょっと辛い。
「……岸まで連れて行ってくれ。脚を浸していれば多分冷える」
まあ、そうなるよね。僕は言われるがままアンリを岸に連れて行けば少し落ち着いた様子で、未だ少し息が荒いけれど大丈夫そうだね。
「キュイキュイキュキュキューイ!」
「ピーピーピーピッピピー」
ポチは可愛いなあ。後ろ半分は猫科だからか僕には従順で素直でも気紛れな部分のあるポチは水浴びを嫌がったり喜んだりして、今は水浴びの気分らしい。
タマと一緒になって楽しんでいるし、見ているだけで癒される。
「ちょっと向こうに行って来るよ。向こうなら君でもゆっくり立っていられる場所が有りそうだしさ」
「手間を掛ける」
「気にしなくて良いよ、友達だからね」
手をヒラヒラと振りながら先に進んで行く。冷たい水の中を進めば体も冷えて頭も冴えて来て、風景を楽しむ余裕すら出来たし、僕も少しのんびりしようかな?
さてさて、結構な騒ぎになってしまったし、ターゲットが警戒して隠れていないかと心配になる中、少しずつ水深が浅くなって来ているし、此処ならアンリも落ち着いて……あれ? 誰か岩影に……。
池の中の巨大な岩の影に誰かの気配を感じて近付く。……いや、後から思えば不用意な行動だったよ。
だって、此処は池の中で、其処に居るって事はさ……。
「ロノス、さん……?」
「アリア……さん?」
僕の目の前には水浴びをしているから当然だけれど全裸のアリアさんが居たんだ。