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全巻読破済み (お気に入りは二巻)

 未だ空が白み始めたばかりの時間帯、使用人達の一部は既に忙しく働き、僕やリアスも鍛錬に時間を費やす頃合いだけれど、今日は身体を休める日だ。


 このままベッドに潜ったまま二度寝したい所だけれど、凄い寝相のリアスが僕のベッドに居るから危なくって無理だし、起こすのは悪い気がする。

 それにしても目が覚めるまで寝相に巻き込まれなかったのは奇跡じゃないか? もっと実用的な奇跡が欲しいけれど。


「……惰眠を貪るとかは許されない立場だけれど、こうやって後暫く寝る事が許されるのに目が冴えちゃうってのは何か損した気分だよ。散歩にでも行こうかな?」


 ご飯まで時間が有るし、偶には普段馬車で通る道を歩いてみるのも悪くない。

 まあ、リアスが起きてからだけれどね。


「主、お着替えならば此処に。では、私は背を向けていますので」


 散歩に行く前に寝間着を脱ごうと思ったけれど、夜鶴が居るから流石に抵抗が有る。

 え? この前混浴したばっかりだろって? それとこれとは別だって。


 夜鶴はそんな僕の気持ちを察したのか一切表情を変えず声にも抑揚を出さずに着替えを差しだして背中を向ける。


 その姿に僕は思わず呟いた。


「……可愛いなぁ」


 だって一切何も感じていないって装って居るんだけれど振り向く時に僅かに頬が赤くなっているし、この前の事を思い出しちゃったんだろう。

 僕もちょっと思い出す。水着姿で僕の身体を洗った分体にも感じる物があったんだけれど、普段のセクシー系忍び装束よりもずっと露出度が低いタオルを巻いた姿も中々好みだった。


 そんなんでお風呂に入ったから濡れて身体に張り付いて……うん。


「か、可愛いっ!?」


「ほらほら、リアスが起きちゃうから静かにね? そうやって普段とのギャップが可愛いと思ったんだけれど、驚かしちゃったならゴメンね?」


「いえ……嬉しいです」


「……う~ん。あれ? どうしてお兄ちゃんが私の部屋に……あっ、そっか。私が潜り込んだんだ」


 僕達の声が五月蠅かったのかな?

 目を覚ましたリアスは半分寝ながらも昨日の事を思い出し、納得したのか再びベッドに寝転んだ。


「今日は休む日だから二度寝~」


「そう。じゃあ僕は散歩に行って来るよ。夜鶴、君も一緒に来る? 散歩デート的なさ」


「い、いえっ!? これから仕事が有りますので!」


 本来は主の命令に従うだけの道具に過ぎない筈の夜鶴なのに、本来から持っていたのか、それとも何かがあって芽生えたのか女の子らしい感情に振り回されている所が可愛いと思う。


「あっ、そうだ。今度は僕が君を洗ってあげようか?」


「あらっ!?」


 ……うん、本当に可愛いな。何を想像したのか妄想したのか声に動揺が見られるし、もう少しからかって反応を楽しみたいけど、折角朝の散歩を楽しめる機会だから出掛けようか。


「……お戯れが過ぎます」


 ジト目を向けられちゃった。

 少し調子に乗っちゃってたね。


「ごめんごめん。それよりも前に約束したデートは何時行く?」


「主の都合が良い日で……」


 ちょっと抗議して来た夜鶴をもう一度からかい、着替え終わったので部屋から出て行く。

 少し弄くり過ぎたし、放課後に何かお詫びの品でも買って帰ろうかな? 勿論約束していた新しい鍔とか柄に巻く布じゃないのを。



「服とかが良いかな? 夜鶴に似合いそうなのは極東の服だけれど……」


 要するに着物とかの和服が彼女には似合いそうだと考えながら扉を閉める。


「おや、今日は鍛錬はお休みの筈では? お早う御座います、若様」


 扉を閉めて廊下を歩いて行くとトイレから出て来たパンドラと鉢合わせ。顔色は良いし、夜遅くまで無理して働いていないみたいで一安心だ。


「今日は目が覚めちゃってさ。お早う、パンドラ。散歩に行こうと思うんだけれど、君も一緒に行くかい? それとも仕事が残っているのなら手伝える範囲で手伝おうか?」


「ふふふ、ご安心を。早急に処理すべき仕事ならば昨夜早くに終わった所ですし、今日は若様の仕事のスケジュールを調整してお休みにしましたので放課後にお願いがあったのですが……朝でも構わないでしょう」


「わっ!?」


 どうやら昨夜は無理をしなかったらしい事に安心した時、パンドラが僕の手を取って隣に立つと、そのまま腕を組んで肩を寄せて来た。


 そしてこの時点で彼女は限界が近い! あの下着姿での誘惑が嘘みたいだ!


「僕としては嬉しいけれど、今日は甘えて来るんだね。僕としては嬉しいけれど」


 大事な事だから二度言った。

 僕の腕にはパンドラの結構大きい胸が押し付けられて、髪からは良い香りがする。こんな綺麗な人に密着されたら嬉しいのは当然だ。


 それに彼女って何時も背筋伸ばして凛とした感じの知的美女だけど、この姿は貴重で新鮮味があった。


「……私だって時には誰かに寄りかかりたくなりますから、甘えを見せて良い若様には甘える事にしました。嬉しいのでしたら……私も嬉しいです」


「そっか。じゃあ、もう少し甘やかすよ」


「ふぇ?」


 その”甘えたい”って気持ちは凄く分かるし、普段から頑張っている彼女を甘やかしたい気分の僕は彼女を引き寄せると額にキスをする。

 おや、数秒間は何が起きたか分からない顔で、次に額に手を当てて真っ赤っかだ。


 普段のキリッとした態度とのギャップが素敵だよね、パンドラはさ。


「……これで唇だったらどうなるんだろ?」


 この前、唇が頬になって、頬が額になったからご期待通りに額にキスをしたし、そっちが好きならって今度も額にしたけれど、照れるパンドラを見ていると好奇心が湧いて来て、気が付けば口から漏れていた。


「だ、駄目ですよ!? 未だ純潔だって捧げて……逆ですね」


「うん、順序が逆だね」


「……取り敢えず次の機会に。出来れば若様からして欲しいです……」


 これ、抱き締めたら駄目かなぁ? ちょっと魔が差したけれど調子に乗ったら怒られそうだから止めておこうかな?


 反応が見たいからするのも悪いし……。


「では行きましょう……」


 何処かぎこちない足取りのままパンドラは僕と腕を組んで歩き出す。そう言えばこうやって二人だけで何処かに行くって何時以来だろう?


 確か出会った日に一緒に遊んで以来だし、これって僕と彼女の初デートって事かな?



 未だ早朝だからか道を歩いている人の姿は疎らだけれど、パン屋から香ばしい匂いが漂い、新聞配達の少年が軽快な動きを見せている。

 後は犬の散歩をするご老人程度な中、腕を組んで共に歩く僕達はどんな関係に見えているんだろうか?

 兄姉? それとも恋人?


 まあ、パンドラと僕の婚姻は決定しているんだけれどね。


「……」


 それにしても出てから一切会話が出来ていない。こんな時、僕は何を話すべきかって考えていたら路地裏へと続く狭い道が見える。

 あっ、リアスと一緒に占い師を探しに向かった道だ。


 ゲームにおいては好感度を教えてくれる謎のお姉さんであり、その実はアリアさんと同じ闇属性の使い手にして本当に未来を見る力を持つ凄い人。

 漸くたどり着いたのに占いの館が閉店してたのはもしや面倒事が嫌でスカウトに向かった僕達を避けたんじゃって今では思う。


「あっ! 確かあの日だった筈」


 その日にパンドラと再会して、有能な人材のスカウトの報告を受けたのに未だ紹介して貰って居ないんだよね。確か”時期尚早だと言っていました”って感じでさ。


 時期尚早? どうしてだろう?


「ねぇ、パンドラ。いい加減スカウトした人の情報を……」


 教えて、その言葉は唇に当てられた人差し指に遮られ、パンドラは少し意地の悪い笑みを向けて来た。



「今の私は若様とデート中、つまりはオフです。仕事は忘れて、今は私の事だけをお考えを」


 パンドラは生徒に諭す教師みたいに僕の唇に当てた指を自分の唇に当て、もう一度僕の唇に当てる。


「……そっか。ゴメンね、パンドラ」


「分かって下されば結構です。では、朝早くからやっているカフェにでも行きましょう。それとも秘蔵の本みたいに路地裏で私が若様の好きな大きな胸で……」


「カフェに行こうか!」


 ……いや、どうして秘蔵の本について把握しているの!?

 て言うかパンドラ、さっきから大胆過ぎるんだけれど、何か変な病気じゃ……。


 漂って来る花の甘い匂いを感じつつ、僕は少し混乱していた。


 


絵、発注したい 忍者かギャグ担当

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