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俺様フラフープ(ツッコミ担当)

 僕達が通う事となるアザエル学園は当然ながら王侯貴族が生徒であり、働いている人達もそれなりの家の出だったり、長い間貴族に仕えていたりとなっている。

 基本理念としては貴族としての地位は関係無しに平等であり、アース王国内に存在するものの各国が運営に携わった中立地帯である。


「……建て前よね」


「しっ! 先生方の挨拶が始まるよ」


 そしてあくまでそれは表向きの話であり、学園内ではそれで通っても、子供から話を聞いた実家間や学園を卒業した後の事を考えれば平等だなんて有り得ない。

 だからこそゲームではリアスが悪役令嬢として好き勝手に振る舞えた訳だしね。


「この学園に入ったからには……」


 今、その好き勝手に振る舞った理由の一人である学園理事長、そしてアース王国王妃でもある”ナイア・アース”……旧姓ナイア・クヴァイル(・・・・・)の挨拶が進められていた。

 そう、今の王妃は政略結婚で嫁いで来た後妻なのだけれど、僕達の叔母。

 本当は厳しくて身内贔屓をする人じゃない、まさにお祖父様の娘って感じなのだけれど、周りからすればそうはいかないよね。

 でも普通はそんな事を考えないし、そうだと知っていても何かあれば身内の情が湧くと思うのが人間だ。

 

「では、続いては一学年の主任であるマナフ先生からの挨拶です」


「新入生の皆様、初めまして。僕が学年主任のマナフ・アカーです」


 紹介されて台に上がったのはどう見ても子供な先生。

 金色の髪に白い肌、モノクルを着けてはいるけれど子供らしさが残る顔付きでは知的な感じはそれ程しない。

 そんな見た目だけれど、年齢は僕達よりも年上で、確かゲームでは攻略キャラの中では唯一最初の好感度がマイナスじゃなく、癒し枠だの合法ショタだのとお姉ちゃんは呼んでいた。


「……エルフだ」


「エルフって初めて見たな」


 そう、あの先生はファンタジーではお馴染みの種族で、本来は深い森の奥で暮らす魔法に優れた狩猟を生活の糧にする長命な種族。

 周囲の人達も子供にしか見えない容姿や尖った長い耳にどよめき立っている。


「あんなんで大丈夫なのか……?」


 まあ、実際見た目だけじゃ頼りないよね。

 僕はゲームの知識で彼が強いって知っているけれど、武勇伝広まっている訳でもない。


「馬鹿共が。学年主任になってる時点で只者じゃないのが分からないのか」


「フリート、そういうのは聞こえない様に言うものだよ?」


「知るか。俺様が馬鹿な雑魚の為にどうして気を使わなくちゃならねぇんだ」


 マナフ先生への不安を周囲が呟く中、僕の後ろの席に座っていた俺様フラフープ……じゃなく、大公家の長男で僕の友人でもあるフリートが聞こえる大きさの声で悪態を付いた。


 此処に居るのは当然だけれど貴族ばかりで、急に馬鹿呼ばわりされればプライドを刺激されて相手を睨みもする。

 結果、燃え盛る炎を思わせる赤い髪をオールバックにした三白眼の大男に睨み返され、相手が誰かも察して縮こまってしまったけれど。


 それにしても……。


 彼とは叔母上様の結婚式で意気投合し、偶に手紙を交わす仲だけれど、偶に会う度に派手になって行くのには驚かされる。


 金色のアクセサリーで全身をジャラジャラと飾り付け、胸元のボタンを外して逞しい胸板を晒しているのだから、その長身もあって余計に目立つ。


あと、単純にガラが悪い。


「其処! 入学式の最中は静粛に!」


「んげっ! ……さーせん」


 だから少し声を出していれば当然目立つし、注意だって受けるんだ。

 離れた場所に居るのに直接浴びて居ない僕でさえ竦み上がりそうな叔母上様の怒気はフリートにも効果が抜群だ。

 あっ、リアスったら笑いを堪えているよ。

 仲、悪いからな。


 まあ、お陰で向こうも静かになったし、フリートには感謝だ……。


 ヒソヒソ話の話題は先生だけでなく、僕から少し離れた場所に座る彼女……ゲームの主役であるアリアさんもだった。


 内容は世間一般的に闇属性へ向けられる侮蔑的な言葉で、前世の記憶が有る僕も面白い物じゃない。

 それに少しでも関わった相手だし、虐めその物が不愉快だ。


「……黒髪ねぇ。まあ、俺様に関わらないんだったらどーでも良いさ。胸はそれなりだが顔は地味だしな」


 残念な事に友人であるフリートもアリアさんへの蔑視を持っているんだ。

 これでも昔よりはマシだったんだけどね。


「……黒い毛といえばリルは元気?」


「ん? まあな。ちょいと前に病気になっちまったが医者に診せたし回復に向かっているってよ」


 昔、お祖父様の付き添いでこの国に来た時(その際も相変わらず話はしなかったけれど)、フリートに誘われて屋敷を抜け出した時に黒い毛の犬を拾ったんだ。


 あくまで嫌われているのは黒髪だけれど好かれてもいないその犬をフリートは気に入り、強引に飼い始めてリルって名前を付けた。


 黒い犬を飼っているからって黒髪のアリアさんへの嫌悪が減るのも変な話だけれど、悪い事に繋がらないなら別に良いのかな?


「彼女、苦労しそうだな……」


 他の生徒は相変わらずだし、僕やリアスの影響で少し貧乏になった彼女が心配だ。

 僕達がやったのは領地を富ませただけで悪い事でもなく、他にも影響を受けた人は居るだろうけれど、実際に知り合った相手と知らない相手は全くの別物だから……。



 ……あっ、叔母上様に睨まれた。暫く黙っておこう。

 





「ああ、うぜぇ。テメェらに吸わせる甘い汁なんざありゃしないんだよ」


 この学園には大勢の貴族の子息子女が揃うけれど、当然ながら実家の地位には差が有るんだ。

 だから貴族としての地位が低い家の出の人達は、地位の高い家の出身の人相手に学友の内に取り入って将来の利益としようとする。


 彼方此方で既に親が同じ派閥に入っているグループや祖国が同じ人達が集まる中、宰相の孫であり陛下の従兄弟である僕や大公家の跡取りのフリートの所には、同盟国だからかリュボス聖王国やアース王国の出身者が集まって来ていた。


 皆、現在何処の派閥にも入っていないか、落ち目の派閥から脱出を目指す家の人達で、僕達を担ぎ上げたがっていたのをフリートが乱暴に追い払う。

 元々荒くれ者みたいな見た目の上に大公家の跡取りの不興を買うのは勘弁して欲しいのか慌てて去って行く。


「君も酷いよね。あんなに邪険に扱わなくても良いのに」


「はっ! 俺様に追い払うのを任せておいてよく言うぜ」


 ……バレたか。


 僕、こういう人達を追い払うのは苦手なんだ。

 やんわりと追い払うのは効果が薄いし、変に取り巻きが居ても動き辛いんだよ。

 相手の家の地位ばかりを気にしては友達が出来ないけれど、向こうだって僕の家の地位を実家の為に利用したくて近付いて来たんだしさ。


 正直言って世渡りが下手だと自分でも思うし、こういったのはリアスの方が得意なんだよね……。

 

「……何だ? 騒がしいが喧嘩みたいだな」


 フリートが追い払ってくれるから取り入ろうとしてくる人を避けながら校門を目指す途中、何やら争いらしい騒ぎ声が聞こえて来た。


「帝国と王国の貴族のいざこざじゃないの? これから三年間、頻繁に起きる事だよ。リアスは知り合いと話すからって別の方に行ったけれど巻き込まれないと良いな」


 学園に集まっているのは四カ国だけれど完全に友好国って訳でもなくて、最近まで国境近くで小競り合いを続けていた国同士のアース王国とアマーラ帝国の貴族同士の仲は険悪だ。


 ……ああ、そう言えばゲーム開始時に相性診断の選択肢が有って、リアスに絡まれたアリアさんを助けてくれた相手は初期好感度がマイナスじゃなかったんだっけ?


「お前の所のじゃじゃ馬……睨むな。妹が下手に介入しなけりゃ良いけどな」


 もう無関係なんだけれど、お姉ちゃんが何度も何度も繰り返していたから何となく覚えている。





「あら、怖いのね? だったら不戦勝って事で終わらせましょうか。負けた側には当然要求を飲んで貰うけれど……」


 確かこんな感じでリアスが庇った相手とアリアさんの二人に勝負を申し込んで、代理人として雇われた傭兵がダンジョン奥で待って……あれ?


 揉めてるのってリアスっ!?


「お前の妹と揉めてるのって確か辺境伯の次男だな」


 アリアさんを庇っているのはリアスで、ゲームでは庇う候補の一人がリアスと睨み合っていた。


「……良いだろう。其処まで言われれば僕だって黙っていられない。決闘だ!」


 緑色の髪をした少し神経質だから絶対に直ぐにハゲそうな糞野郎がリアスに向かって唾が飛びそうな勢いで叫んで汚い手袋を投げつける。



「……フリート。今夜って月の出ない晩だったっけ?」


「落ち着け、馬鹿」


 

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