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強くなる意志

 アース王国において妖精は”触らぬ神に祟り無し”な認識だ。

 妖精の領域は基本的に近付いた時に起きる被害は自己責任、それでも良いなら勝手に寄って、友好を結べたなら何か分け前が欲しい、まあ、そんな感じでやって来て、叔母上様が嫁いでからは少しはマシになったんだけれど、妖精の王国嫌いは当分直りそうにない。


「……妖精の姫さんが来てるとか、暫くお前の屋敷には行かねえ方が良いな」


 まあ、そんな訳で妖精は王国の民に対して悪戯を仕掛けるし、その被害に遭った事のあるらしいフリートだって当然妖精が苦手だ。

 お昼休み、偶には男同士女同士に分かれてのご飯になったんだけれど、僕の屋敷に事後承諾でレキアが住む事になったのを知った途端に露骨に嫌な顔をしていた。


「安心しなよ、フリート。ラキアは王国だけじゃなくって僕にも悪戯を頻繁に仕掛けるからさ」


「それの何処に安心様子が有るんだよ、テメェ。俺様にも分かりやすい説明しろや」


「……あー、無いか」


「にしても妖精の女王ってのはとんでもないな、おい。どうしてテメェの周囲の女はそんなのばっかりなんだ?」


「さあ? まあ、将来尻に敷かれるのは決定かな? 僕、お尻よりは胸の方が好きなのに。でも、尻だって嫌いじゃないし、感触を楽しむよ」


「そりゃ結構。てか、乳より尻だろ、尻! チェルシーなんざ結構良い形をしててよ。この前もデートの時に触っちまった。……その後で強烈なローキック喰らったがな」


 こうやって猥談を自然に出来るのが男だけの利点だと思う。

 だって女の子が居る時にはちょっと出来ないけれど、猥談って楽しいし。


 でも、フリートは胸より尻か……。


「矢っ張り友人であっても人は分かり合うのが難しいね……」


「唐突だな、テメェ!? ……てか、入学して数日で結構な出来事の連発だよな、テメェ達兄妹はよ。この世界が物語だったら主役だろ、血統を考えてもよ」


「主人公ねぇ。確かに誰もが自分の人生の主役だけれど、物語の主人公って感じはしないよ。英雄である聖女の子孫で、王様の従兄弟にして宰相の孫で、特異な属性を兄妹揃って使えるだけだからね。後は学園に入学してから数日で色々と事件に巻き込まれてる位だしさ」


「いや、十分だろ。寧ろ盛り過ぎの部類じゃねえか」


「精々僕なんて神様クラスの敵を倒した後で立ち塞がる最強にして最後の敵を兄妹で務める位じゃないの?」


「いや、お前よりも強いのがお前の身内に居るだろ。馬鹿やったら止めて来そうなのが。……てか、俺様は何を馬鹿馬鹿しい話をしてるんだ? この場合、俺様が脇役じゃねぇかよ」


「いやいや、君なら主人公の仲間その2位にはなれるんじゃないかい?」


 おや、どうやら気に入らなかったんだね。

 フリートはそっぽを向いて黙りこくってるし、自分から言い出した事なのにさ。


「……まあ、確かに僕より強いのが身内だけでも結構居るけどさ……僕達兄妹が組めば近い内……それこそ一年以内に勝てる様になる自信はあるよ」


 ゲームで実際にラスボスだったって事は関係無く、その自信がある。

 その強い人に鍛えて貰ったからこそ今の被我の実力差が分かって、そして自分達が成長して近付いているのを把握出来ている。


「確かにレナス達は強いけれど、アレは完成された強さだ。対して僕達は成長中、追い越せるし、追い越さなくちゃ駄目だ。待っているであろう過酷な運命に打ち勝つ為にもさ」


 シアバーン達神獣将が復活したなら、さっき僕が冗談めかして口にした神クラス……光神の悪心も復活する前提で動くべきだ。

 封印が解かれないのが一番だけれど、準備してないのは問題外だからね。


「あの人達は強いけれど、それを負かした事は絶対の自信になる。過信になれば脅威になるけれど、恐ろしい相手を前にして心が折れない事は重要だ」


「……そーかい。まあ、頑張りな。俺様もダチとして動ける範囲で力を貸してやるからよ。……ああっ、さっきの自分が悪役になって最後は倒されるみたいなのは二度と言うなよ。ムカつくから」


「……うん、ごめんね」


 成る程、怒っていたのは其処か。

 確かに敵って最後は打ち倒されるのが宿命だからね。



 ……宿命か、ちょっと気になる事が有るんだよね。


 僕達はゲーム通りに行動しない事を前提に動いていたけれど、実際に変えてみると他の誰かがゲームのシナリオを補う様に動いたし、僕達が攻略キャラの代わりにアリアさんと親交を深めている。


 ”歴史の修正力”ってのは漫画とかでは結構使われる展開だったけれど、それが動いているのかも知れない。

 ゲームのシナリオでは貴重で強力な力故に目を付けられた僕達だけど、それを知ってるからその通りに動かなければ大丈夫……とは限らないか。


「……問題は舞踏会だよね」


 最近まで口車に乗らなければ大丈夫だと過信していたけれど、僕だったら騙くらかしが効かない相手には別の手段を選ぶし、そもそもの話からしてリアスはゲームとは違って簡単に騙される馬鹿……じゃないと思うし、なら普通に別の手か他の人を選ぶだろう。


「……アイザック、何をしてるんだろうね?」


 昨日から学園に来ていない彼は、公では急な呼び出しで帝国に帰ったってされているけれど、パンドラの調べじゃ途中で行方不明になり、乗っていた馬車の同行者達も消えたらしい。


 ……もしかして彼が僕達の代わりに?







「ったく、あのボケが。冗談でも自分が俺に討たれる存在みたいな事言ってんじゃねーよ」


 放課後、チェルシーと一緒に街に繰り出した俺様だが気は収まらない。

 時期が迫った舞踏会のパートナーが決まっていない連中が必死にフリーな奴を探すが、俺様には婚約者のチェルシーが居るから探す必要は無いし、こうやって暇潰しにも付き合わせていた。


「いや、世の中には主人公が負けて終わるお話も有るわよ? それでも不用意な話だと思うけれど、ロノス様にしては変ね。妹とペットの話題以外ではそんな失敗は……まあ、少ないわよね」


 俺の婚約者であるチェルシーはロノスとは……正確にはその妹のリアスとは長い付き合いで、だから俺の話を聞いて妙だと思ったらしい。

 ……幾ら俺が唯一同等以上と認めたダチについてとはいえ、惚れている女が他の男を理解してるみてぇなのは嫉妬しちまう。


「……」


 何も言わず、強引に肩に手を回して引き寄せる。

 最初は驚いた様子だったがチェルシーは抵抗せず、俺様に頭を預けてきた。


「……毎回毎回黙って引き寄せるの止めてよね。偶には口説きながら出来ないの?」


「おう! 愛してるぜ、チェルシー。最高の美女が隣を歩いてるもんだからついやっちまった」


「……恥ずかしいから矢っ張り止しなさい」


 ……止せって割には随分と上機嫌に見えるけどな。

 これ、もしかして勢いに乗れば行けるんじゃねーか?

 このままの雰囲気で適当な所で休憩を言い出して……あ痛っ!?


「抓るなよ、急に!」


「イヤらしい顔をしてるからよ。結婚したら好きなだけさせてあげるから……今はこれで我慢なさい」


急に脇腹を抓られた事に文句を言えば、ジト目で襟を掴まれて引き寄せられて、俺様とチェルシーはキスをしていた。


「……はい、終わり」


 唇が重なっていたのは僅か五秒ほどで、その後で耳まで真っ赤にして照れてるチェルシーはそっぽを向いて可愛い顔を見せちゃくれない。


 ああ、にしても俺の婚約者はマジで最高に良い女だよ……。




「ああ、そうだ。ロノスの所に妖精の姫さんが来てるそうだが、一体どんな奴なんだ?」


 ちょっと気になってた事だが、会いに行くのは抵抗が有る。

 何せ公式の記録では誤解とか行き違いからの争いってなってるが、妖精と王国が揉めた理由はどう考えても王国が悪い。



 何せ当時の我が儘姫の頼みを聞いた王が妖精をペットにすべく派兵したってくっだらねぇ理由だ、そりゃ嫌われるっての。

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