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腹黒令嬢の白昼夢

別サイトで新作オリジナル書いてました

 ああ、何という好機なのでしょうか。


 ロノス様を誘惑する為の服選びの途中、思わぬ横入りで予定が遅れたのは残念だったのですが、それもこの時の為だったのならばと納得出来るというものです。


「知り合いが迷子になっているから詰所に連れて行くだなんて巡回の兵士に任せれば良いものを。彼等の給金は税金から出ていますのに」


 お人好しとでも言えば良いのでしょうか? わざわざ貴族である自分が連れて行くとは余程の相手なのかと少し気になった事ですし、ちょっと気になったのですよね。



「ねぇ、アリア。ちょっとお迎えに言ってみませんこと?」


「はい! ちょっとどんな子なのか気になってしまいましたし……」


 気になっていたのは私だけではない、同盟者である彼女も同じ、彼女の場合は知り合いの子供の立場なんて物よりも別の事に意識が向いているようですが、


 私の”どんな”はその子の立場や地位、アリアの場合は相手とロノス様の関係性や容姿……もしやよっぽどの美少女で他の側室候補の可能性を危惧しているのでしょうね。


「では、ロノス様のお知り合いの子供とも顔合わせもしてみたい事ですしね」


 わざわざ自らが連れて行く程の相手、立場が関係しているなら繋がりは早い内に、側室候補だから世話をする仲ですのならば牽制や協力関係の問題も有りますし。


 ふふふ、利用価値がある相手なら嬉しいのですが……。






「……まさか」


 そうして向かった詰所、何やら戦闘の痕跡が有るのは気になりましたが、ロノス様がいらっしゃるので大丈夫でしょうと詰所に向かったのですが、其処で見掛けた子供を見た時、私は呟く、誰にも聞こえない様にとの配慮はしたのですが……。





 太陽の光を感じさせる金色の髪、それだけならば偶然似た色になったのでしょう、髪の色が属性に関係する場合が多く、金髪は光属性とされています。

 それでも金髪に似た髪色だから光属性なのかと喜んだが、成長して属性を調べたら別の属性な上に別の色

合いが強くなっていった……という話を聞いた事が有りますし。


 ですが、目の前の少女から感じる魔力の質は光属性であるリアス様の物と同一。

 つまり目の前の少女は光属性?


 クヴァイル家の血が流れているのならば光属性を持って生まれたという可能性はあるのでしょうが……。


 ロノス様は彼女の事を知っているという事はその事を把握しているのでしょうが、私の所に情報が入って来ないのも妙な話。


 クヴァイル家の隠し子等を考えている間、私は色々と考えていたのですがロノス様がハンドサインを送って来たのはその時。


 貴族やそれに関わる者が周囲の者には聞かれぬ様に会話をする為の物、帝国式や聖王国式等国ごとに存在するのですが、ロノス様が少女に見られないように行ったのは恐らくは聖王国式。


 ……まあ、ぶっちゃけ猥談の類以外は殆ど共通なのですよね。

 全く同じではありませんが。


 だって勘違いで揉めたら不味い立場の者が使う物ですから、そりゃそうなりますよね。


 最初に伝えられたのは少女が敵であり、記憶を失っているという事。


 成る程……隠し子というのは間違いないのでしょう。

 リアス様と同じ光属性を持つ政敵……一族内の争いが起きているとは把握していませんでしたわね。


 問題は其れがどういう相手なのか、魔王ゼースはどの様に関わっているのか、今は情報が変わらない……ふぁっ!?


 え? ええ!? お礼に……ベッドの中で可愛がる!?


 まさか帝国式だとは、それも夜のお誘いのサインだとは……。




 この瞬間、私の脳内ではその光景が流れ始める。



『ロノス様、この様な姿なんて恥ずかしいですわ……』


『お礼はするって言っていたし、君も受け入れただろう? 期待していたんじゃないか』


 ソファーに座るロノス様の前で私は一枚一枚服を脱ぐ事を強要されて、窓から差し込む月明かりで私の白い肌が照らされる。

 顔が真っ赤になったのを感じ、手で体を隠そうとするのですがロノス様はおもむろに立ち上がると私の手を優しく掴んで手を開かせて、そのままベッドへと連れて行くと……。




 いや、有り得ないですわね。





 帝国式の”ベッドで可愛がる”と聖王国式の”食事に誘う”って似ていますし、慌てた様子でしたので間違えたのでしょう。


 あー、馬鹿馬鹿しい。



 途端に自分の妄想がくだらない物になってしまいましたし、これはロノス様をからかう為の話題にでもしましょうか。

 だって時偶に意地悪ですもの。


 無自覚に口説き文句を囁かれた時や他の女性と仲良くされている姿に不満を持たない訳ではないのですよね。

 繋がりを持っていて損ではない方も居ますし、妹よりも実質的に高い地位を手に入れるという野望を叶える為にも、貴族社会の通例でも他の結婚相手が居るのは仕方無いのですが……個人的には嫌ですわ。




 だって……だってロノス様の結婚相手は私だけだったのに、私だけが愛して貰って……あれ?



 また頭の中に流れる知らない記憶、私が知り合う前からロノス様には他の婚約者が存在しましたのに、何故か他に誰も居ないという情報まで……。

 この様な物、都合の良い妄想や白昼夢の類でしかないのでしょうが、余りにもハッキリとした鮮明さ、本当に体験している事の様に詳細が分かる内容。

 それがふとした瞬間に蘇り、頻繁に夢に見てしまう。



 どうせならば幸せな内容だったら良かったのに、夢の中での私とロノス様の関係は全く違う物。

 その中で私は気弱でロノス様はリアス様にハッキリと意見が言えなくて少し頼りない。

 リアス様だって私の知る彼女は脳筋で単純な性格ですが、知らない記憶の中では横暴で私とロノス様が一緒に居る事が気に入らない、だから私とロノス様の時間は凄く短くて、だからこそ二人の時間が本当に愛おしくて……。


 その時間だけロノス様は私だけの物で、私もロノス様だけの物。



 ……どうせなら幸せな結末が望ましいのですが。




 さて、それは兎も角として私にもロノス様にも腹が立ちましたし、少し意地悪する程度で済ませるのも癪ですわ。

 



 ああ、ロノス様のハンドサインのミスを指摘する前提でしたが……勘違いを続ける方が都合が良いかしら?




 



『ロノス様のお誘い嬉しかったですわ。勇気を奮って来ましたの。……可愛がって下さいませ』


 こんな事を口に恥じらいながら出向けばあの方だって……うふふ。


 背後のアリアはハンドサインの意味を理解していないみたいですし、此処は抜け駆けさせて貰いませんと。


 ”好機は逃すな”、其れを徹底すべきなのに甘いのですから……。




 尚、此処までの思考は僅か数秒、高速思考は商人の嗜みでしてよ?






「変態ですわ……」


 そんな事を考えていたら全裸が現れましたわ。

 

挿絵(By みてみん) 商人



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