死神と呼ばれる合法ロリ
上からブクマお願いします!
赤銅色の髪に紫の瞳、シロノと同じ小麦色の肌を持つ小柄な体型、男と間違われぬ程度には女性らしさを持っていて、とても強者には見えぬ相手だが、その強さを知ってしまえば侮る阿呆は出ぬだろうさ。
「仕事先から持って帰ったお菓子が有りまして、調度馬車が見えたので渡そうと入り込んだのですが、あまり驚いて無いですね。目を閉じるタイミンが重なるのを見計らったのに残念です」
まるで悪戯が失敗に終わって拗ねる子供のような表情を浮かべながら土産の品を出すマオ・ニュであるが、己がやった事が尋常では無いと自覚は有るだろうに白々しい限りだ。
ニコニコと笑みを浮かべながら木の実の焼き菓子を切り分けているが、その気になれば妾達が反応する暇も与えずに首をかっ切れるのだ、
妾の手にロノスの指先がそっと触れる、僅かに震えているが馬鹿にはせぬ。
何せ目の前の女こそが此奴の両親を殺した相手であり、ゼース殿の命令次第では兄妹揃って命を奪う役割を持っているのだからな。
「ロノス君、お勉強は頑張っています? わざわざ王国なんかに行ったのですし、ちゃんと繋がりを作らないといけませんからね? はい、どうぞ」
「まあ、そこそこかな?」
「……女の子ばかりと仲良くしちゃったりとかだと駄目ですよ?」
おい、そこで何故ギクッとなる?
女とばかり仲良くなっている自覚でもあるのではないのか?
うん?
「ク、クヴァイル家と繋がりを持ちたいって連中はそれなりに多いし、友達とまでは行かないまでも将来的な繋がりは大丈夫じゃないのかな?」
「そうですか。それにしてもお二人共、随分と仲良くなりましたね。レキアちゃん、ロノス君が大好きなのに嫌っているって下っ手な嘘ばっかりでしたから」
「んにゃっ!?」
何言っているのだ、この三十路間近!
……普通に考えれば三十路前でレナスと同格扱いされている時点でとんでもない奴だな。
まあ、レナスも三十代後半でナギ族最強なので十分おかしいが。
それは別に良かったが、妾はとても聞き逃せない発言に思わず声を荒げた。
「大好きなどではないぞっ!? 好きなだけだからな!」
「あっ、僕も君が好きだよ、レキア。君に好きだと言って貰えるなんてマオ・ニュと再会して良かったって思えたよ」
大は付かぬのか……付けろ、この場合は大好きと……はっ!?
「もー! ロノス君、それだと私と再会したのが嬉しくないみたいじゃないですか。確かに私はロノス君の両親を御館様への反逆を理由に殺しましたし、ロノス君やリアスちゃんだって必要なら殺しますけれど、顔見知りは苦しませずに一瞬で殺すんですよ?」
「おい、何傷付きましたって態度を取っている?」
「えっと、マオ・ニュと会えたのは嬉しいよ? 僕の言い方が悪かったのは謝るからさ」
「あらあら、ロノス君ったらお上手。女の子にそんな態度ばかり取っていると何時か刺されますよ? まあ、そんな事をしでかした奴は一族郎党苦しんで死んで貰いますけれど。それとさっきのレキアちゃんへの言葉ですが、好きではなく大好きと言ってあげて下さいね?」
「そっか。じゃあ、大好きだよ、レキア」
「そうか……妾は暫し消える」
さっと魔法を発動させて姿を消す。
今の妾の姿を誰かに見られるなど耐えられぬ気がしたからだ。
そうか、大好き、大好きか……。
ふんっ。気紛れだが、断じてロノスに大好きだと言われた嬉しさからではなく、一流の戦士に敬意を表して心の中で誉めてやろう。
リアスより微っ妙に上な程度の胸な上にチビではあるが美しく、幼いと言って良い程に若々しく、今年で三十歳になるとは到底思えぬ見た目だ。
もう少し小さければ年齢一桁と言われても信じてしまったやも知れん。
マオ・ニュさんじゅっさい。なんて……な……殺気っ!?
完全に姿を消してロノスの頭から机で死角になる膝の上に移動し、更には音も消している。
にも関わらず豪奢な装飾のなされた机の分厚い板を貫いて妾に注がれる殺気と視線、恐る恐る顔を覗かせれば明らかに目で追っていた。
……良し。
余計な事は考えず、大好きと言って貰えた喜びを噛みしめていよう。
まあ、高貴な美姫である妾を大好きになるのは当然の事ではあるがな。
故に妾はそれ程嬉しい訳では無かった……。
「レキアちゃん、今はどうしています? 余計な事を考えていた気がしたからちょっとお仕置きしちゃったけれど、考えてみればロノス君の正妻になるんだから悪い事をしちゃいましたね」
レキアが姿を消して、マオ・ニュは僕の膝の上辺りに視線を動かした後、直ぐに僕の方に視線を戻したんだけれど、乗られている僕は分かるけれど、音も姿も無いのに凄いなあ……。
要するに彼女に狙われたら何処かに隠れても無駄なんだと教えられた気がした僕は背筋に冷たい物が走る。
この人、平気で殺す役目が有るとか言うし、未だどちらが正妻になるか決まっていないのにレキアで確定しているみたいに言うのはどうなのかと考えた僕は一応言ってみる事にしたけれど、何か意外そうな顔をされた。
「え? ロノス君、シロノちゃんにクヴァイル家の正妻が務まると思っているの? 面白くないよ、その冗談。えっと、冗談……だよね?」
「……うん」
確かに僕もシロノに正妻としての立ち振る舞いは無理だと感じてはいたよ?
でも本人は別としてもイナバさんとの関係だってあるし、お祖母様だってギヌスの民で……。
だから断言はしていなかったけれど、マオ・ニュから見てレキアの方が正妻に相応しいって認識だったんだね。
結局、最後に決めた上で起こるゴタゴタは僕が解決する事になるんだけれど……。
「所でレキアがさっきから膝の上で転がったり手足をバタバタ動かしたりしているんだけれど……」
「それはロノス君に大好きだと言われて嬉しかったのですよ。でも、幾ら姿を消していても落ち着きは保って貰わないと。……あっ、落ち着きが無いと言えばリアスちゃんと……レナちゃんですね」
レナの名前を出した途端に一変する車内の空気、マオ・ニュが不機嫌になっただけで一気に冷え込んだと錯覚を受ける。
「後続の馬車に乗っているんですよね? たぁ~っぷり聞いているんですよ、あの子の問題行動は。ちょ~っとメイド兼護衛としては問題かなって思いまして」
「レナは僕達の乳母兄妹だし、多少は大目に見てあげて欲しいな。ほら、従兄弟のジョセフ兄さんでさえ彼女を知的で冷静な淑女だと思い込む程度には外面が良いし、問題行動って言っても……」
ニコニコ笑顔は一瞬だけ目が笑っていない死神の物になったけれど直ぐに戻り、流石に殺す気は無いんだろうけれどマオ・ニュのお仕置きなんてどんな内容か分かったもんじゃないからフォローする。
問題行動か、直ぐに思いつくのは僕にノーブラノーパンだと伝えたり身体を密着したりベッドに潜り込んでいたり程度で特には……いや、十分問題行動だ。
うん、屋敷の人間にしか見せないからって擁護できる範疇を越えている気もするし、レナだから仕方が無いって気もして来る。
「安心して下さい。ちょっと釘を刺して小言を幾つか言う程度です。……レナスはあんな人ですからあてになりませんし、私がちゃんと叱ってあげなくちゃ。まあ、ロノス君がレナちゃんをお嫁にするのに反対はしませんから、ちゃんと鬼族の治癒能力なら傷跡が残らない程度の大きさの釘にしておきますね」
釘を刺す(物理)って発言をして実際に現物を見れば返しも付いていない細くて小さな釘。
それを見た僕が瞬きによって視線を外した一瞬でマオ・ニュは姿を消した、まるで最初から居なかったみたいにソファーに痕跡一つ残さずに。
「……後でレナは励ますとして、レキア、君とのデートはどうする? おーい?」
聖王国で遊びに連れて行けって言われてたし、デートで良いよね?
特に否定の声も聞こえないけれど返事もなく、まだ僕の膝の上でゴロゴロしている。
夢中になっているのかと指先で止めようとした時、振れたのは柔らかい物だった。
「……何か申し開きは有るか?」
姿を現したレキアは仰向けで、僕の指先は胸に触れていた……。
わざとじゃないんだよ?