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忠ペンギ……ドラゴン

ブクマ九百 総合二千五百突破したしブクマ1000突破で何か依頼しようか?

「終わったな。じゃあ、僕も最後に一仕事させて貰うとするか」


 散々犬達に攻撃を叩き込んだからか、痛みを受ける程に痒さが増す状態のスキュラは錯乱した様子で血塗れになりながら全身を掻き毟り、もう戦える状態では無いらしい。

 厄介な敵だと思ったが、案外何とかなったな。



 それでも仕留めた訳では無い、今は毒が効いているが……。


 本体が錯乱状態だからか巨犬達も指示が来ずに固まってキョロキョロと戸惑うばかり、頭はそれ程良くないらしいな。

 此処までルルネード先輩とタマに働いて貰ったんだ、僕も少しは動かないとヒージャ家の者として情けない。

 獲物である鎖付きハンマー”ミョルニル”を取り出し回転させ、勢いを付けての投擲、スキュラの頭に命中しザクロの様に打ち砕いた。



「しかし、再生能力は凄まじかったが、正直言って拍子抜けな気がするな。……本当に死んでいるのか?」

 

 頭を叩き割られたスキュラは脳漿を周囲に撒き散らし仰向けに倒れ込み、本体が死んだ影響か巨犬達も絶命したのか力無く倒れ込んだかと思うと鼻の先から徐々に光の粒子になって消えて行く。


 どうやら本当に死んでいるらしいな。


 仰向けに倒れた事でワンピースのスカート部分で隠れていた足が露わになるが、膝から下が犬達の胴体と同様に青い毛に覆われている上に足首から先が普通の足ではなく徐々に太くなりながら海中に伸びていて、恐らく途中で枝分かれして犬達に繋がっているのだろうな。


「本人が迂闊故に情報を漏らしてくれたが、それにしても弱い部類だったのか? 少なくともレイム大公家の息子が戦った奴の方が話を聞く限りはずっと上だがな」


 巨犬達は首を切り落とそうが凍らせて砕こうが電撃で焼こうが即座に復活したが、人の姿をした部分は頭を砕かれたまま浮かんでいる。

 この本体がペラペラと情報を漏らし、それで追い詰めて行っている間は罠を警戒したが、結局はこれだ。

 神獣……伝説の存在であり、虚偽で無かったのならば強く創られるも経験を積む前に封印された未熟な相手だったのだろう。

 これで虚偽の情報を織り交ぜてくる相手ならばどれだけ恐ろしかった事か。


「一応念には念だ」


 爆弾ナイフを心臓の辺りに投げて突き刺し、爆発すれば骨も四散する、これならば大丈夫だろうと一旦は判断した。



 犬達の単調な動きも込みで相手の未熟さに感謝だな。

 これで無意識に相手全体を侮ってしまわなければ良いが……。


「じゃあ、一旦戻りましょうか? 結構騒いだし、尾行は失敗だと思った方が良いでしょうねぇ。まっ、隠れ里が分かったんだもの、問題は無いわよん」


「そうだな。思わぬ邪魔が入ったが。……しかし、此処に来た理由について妙な事を口にしていなかったか? 交わった男以上の栄養がどうとか……」


「それなら知っているから帰ってから教えるわ。皆と情報共有が必要だもの、此処で言っても二度手間よ。あー、潮風でベタベタするし、お風呂に入りたいわぁ」


「ではタマ、戻るとしよう」


「ピッピッ!」


 顎に手を当てて考えても知らない事ばかりでは今は詮無き事か。

 僕も髪に潮風が張り付いて気持ちが悪い、尾行は失敗だが見張りを置ける状況でも無いのなら二人で帰るしかないと悔しさを覚えながらも帰還を選ぶ。

 タマは浮かぶ死体をジッと眺め涎を垂らしていたが人型の存在は食わせないからな。


「ほら、帰るぞ。食べる物は僕が決める。人でなくても人の姿をしている存在は食べるな」


「ピピッ……」



 一言命じれば直ぐに意識を切り替え島に背を向けてログハウスに最高速度で戻ろうと空中で力を貯め始めた時、背後のスキュラの死体の辺りから破裂音が響いた。



「……拍子抜けと判断するのは早計だったか」


「倒したと思って去ったら実は生きていたってよりは良いんじゃ無いかしらん?      ……妙に口が軽いのは自信からだったのね。絶対に殺されないってね」


 犬ならば胴体が異常なのだから弾け飛んでもそれ程気持ち悪く無かったが、人型の存在が膨れ上がり砕けた骨に付着した肉が盛り上がって再生して行く姿は随分と気持ちが悪い。

 僕は軍属だ、吐き気を催す死体だって何度も目にして来たがこれは随分と……。


 盛り上がった肉は徐々に元の形に変わって行き、内部の空洞だった部分が周囲の肉が入り込んで再生し、皮膚が戻ればスキュラの姿は元のままだ。

 但し、服までは元に戻っていない、僕も男装のままだからかスキュラは胸と股間を手で隠しながら顔を赤らめ此方を睨んでいるが……経験が浅かったのは本当か。


 戦場で服が脱げるのは仕方が無く、羞恥で動けなくなるのは経験が浅い証拠、僕は男装がバレたら問題だからアレだが……。


「遊びは此処まで。今から貴方達は獲物じゃなくって明確な敵と見なすから覚悟して。もう勝機は無いんだから」


「成る程、どうやら負け惜しみでは無いらしい」


 ピリピリと空気を震わせているかの様に濃厚な殺気が肌を打ち、光の粒子になって消えていた筈の巨犬達が根元から再生していく。

 但し八匹から六匹へ、胴体部分は筋肉で盛り上がり牙もより鋭く長くなっていて、威圧感も二匹分の力を分配したにしては増量分が多過ぎる風に感じた僕は言葉の終わりと共に爆弾ナイフをスキュラの顔面に投げ付けると同時に口笛でタマに退避を命じた。


 見かけ倒しだと判断するのは愚か。

 途中までは傷が塞がらず巨犬に守らせていた本体も頭を潰すと同時にの復活だ、流石に準備不足で挑む相手ではないな。

 ……それに巨犬達の時は体積が大きい故に気付け無かったが、今戻るに値する情報は得た。

 スキュラが復活した直後、足下で……。


 無茶をすれば勝てる可能性はある相手だが、無茶をしてまで倒すべき相手ではなく、それよりも情報を元に対策を練って叩き潰す方が賢い相手、此処で退く事のデメリットよりも負けた際のデメリットの方が勝っているのはルルネード先輩も分かっているらしく、爆発での目眩ましと同時に鉄の網を同時に六個犬達に放った。


「無駄。逃がしもしない」


「……はっ?」


 口元に迫った網に対し、巨犬達は大口を開いて食い付こうとするも網の大きさからして口に収まりはしなかっただろう。

 口元に切れ目が走り、胴体と頭の境まで裂けた事で遥かに大きく開く事が無かったらの話だが。

 例えるならば両手の手の平を合わせ、指先だけ開いていたのを指の根本まで開いたような物、大きさが段違いだ。


 犬の見た目をしているからと体の作りも犬からそれ程離れまいと心の奥で油断していたか。

 だが、良いのか?



「口の中が無防備だ、愚か者」


「ピピピィッ!」


 巨犬の口が網を食い破ろうと閉じられる寸前、タマの口から電撃の矢が六発同時に放たれ口の中から体内へと入り込む。

 そして圧縮された膨大なエネルギーが解放され、巨犬達を体内から焼き尽くし……瞬時に再生した巨犬の一体が先程までとは比べ物にならない速度で迫り、一瞬呆然としていたタマの胴体に食い付いた。


「ピッ!?」


 ドラゴンの強靭な毛皮と骨肉は簡単には食い破られず、噛み付いたといっても口の先、それでも牙が突き刺さり暴れても脱出出来ない。

 更に周囲から他の犬も迫り来た。


「ピッ!」


 ”小生を置いて逃げろ。凍らせた海面を駆ける程度なら、全力の放電で時間を稼ぐ”?


「馬鹿を言うな! お前を見捨てられる筈が……っ!」


 一瞬だけタマの全身に走った電流は僕達を体の上から弾き飛ばし、クチバシから血を吐きながらもタマの目は笑いながら僕を見詰める。


 そんなっ!?


「駄目だっ! お前も逃げるんだ、タマァアアアアアアアッ!」


 巨犬達はタマの全力の放電によって体を痺れさせつつも目前の相手から仕留める気なのだろう、電撃によってボロボロになる体を即座に再生させながら食らい付こうと迫り……。




 僕の目の前で大量の鮮血が散った……。

 


ブクマや☆☆☆☆☆からの評価待ってます 目指すは1000ブクマ


挿絵(By みてみん) シロノ

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