バニーガールは分からない
「私、シロノ。ロノスの妻」
「妻になる予定の相手でしょ、忘れたのね、覚えられないのね、頭の中まで筋肉なんだから」
浜辺まで押して運んだ船をツクシに任せ、私はログハウスに来ている。
鉄製の人形と茨みたいな鉄の縄に囲まれた変な建物、王国の建物は変、よくこんな建物で過ごせるな。
小さいハーフエルフ……強い
五月蝿い男……そこそこ
胃の辺りを押さえている眼鏡……強い……のか?
オレンジ髪の女……そこそこ
グルグル頭……弱い
その他……赤髪がそれなりだが未熟で他は弱い
問題は……。
黒髪……黒髪はよく分からない、妙な感覚、戦わなければ分からないの、久し振り
面倒なので名乗りはしたがリアスが五月蠅い、相変わらず声が大きいが胸は小さい。
だから聞き流しながら室内の連中を観察、強さを計るが妙な女に戸惑う。
ザワザワって変な感覚、これは恐怖、いや、警戒。
「あの、私が何か?」
私の視線に黒髪が気付く、怯えた様子……多分嘘。
気弱で取るに足らない相手、それは演技、この女、私に何も感じていない。
何故演じる?
何故本当の顔、出さない?
妙だ、変だ、敵ならば倒す、そうでないのなら関わらない。
深い深い闇、それが日との姿を取っている、そんな女だ。
「シロノ?」
「……」
ハーフエルフが何か言って、赤髪が反発している。
”事態が変わった、帰るべき”、”ビビって帰れば名折れだ!”、声は届くが内容は頭に入って来ない、黒髪の存在だけが私の視線を奪い、警戒を独占する。
毛の一本程も意識を逸らすなと本能が警告する中、気が付けばロノスの腕に抱きつ付いていた。
私、不安になっている?
無意識にロノスに頼った?
私を守れる存在だと、守ってくれると頼っている?
そうか、成る程。
「ロノス、私は思っていた以上にお前が欲しいらしい。番、なりたい。子供、絶対に生むぞ」
「アンタねぇ、急に何を言ってるのよ。ちょっと殴って目を覚まさせてあげようかしら?」
ロノスの目を見つめ告げている途中でリアスに引き離される、鬱陶しい。
私との戦い望む? 良いだろう、私も戦ってみたかった。
「手加減しない。お前、強い。全力で行く」
「上等! 顔の形が変わるまで殴る」
「胸が腫れ上がるまで蹴る。大きくなるぞ、嬉しい?」
「……ぶっ殺す!」
殺気を全身に感じ、気分が高揚する。
ああ、矢張り私、戦闘民族、生粋の戦士。
私、ロノス求める。
私に勝った、私に相応しい男。
だから犯す、これは決定。
……只、思う。
ロノスならば良い、それが最近まで、再会後は変わった。
ロノスならば、ではなく、ロノスが良い、何故だ?
分からない、分からないが……心地良い。
キスした時、下半身が疼いた。
キスをされた時、心が疼いた。
どちらも良い、一方的に蹂躙し私の物にする、同時に私を奴の物にする、絶対に譲らない。
「嬉しい、楽しい。リアス、一度本気で戦いたかった」
だが、今は目の前の相手との戦いを楽しもう、心の奥底からの歓喜に身を任せよう。
邪魔は許さない、邪魔はさせない。
敵意濃い眼差しを向けられて、獰猛な笑みを抑えられなかった。
お前もそう、私には分かる。
ロノスとリアスの祖母、ナギ族の出身、鬼族ではないが戦闘民族で、二人を育てたのもナギ族最強の戦士レナ。
だから同じ、戦いを楽しむ者。
全身の血が沸騰しそうな程の熱を感じ、挑発の追加だと体を揺すると同時に胸筋を動かし胸を揺らす
「潰す。徹底的に潰す。形を絶対崩してやる」
ほら、挑発になった。
殺気は増すが、無駄な力みは無い。
そうだ、それでこそ戦闘民族だ、ギヌスの民の血を引く者だ。
……しかし。
胸、戦いの邪魔、大した防具にもならない障害。
何故、それを羨む? 何故、それを欲す?
不要なの分からない、だから脳筋。
「あと、見てるんじゃないわよ、野郎共!」
それと胸が揺れただけで男の視線集まった……何故?
あっ、赤髪がオレンジ髪に連れて行かれた。
さて、我慢、限界。
私とリアス、互いに睨み合って同時に踏み込み拳を叩き込んで、同時に後ろに吹き飛んだ。
足で床を削りながらの後退、踏みとどまるの、無理な剛撃。
互いに体勢は崩さず、
一撃の威力、私の勝ち。
後退の距離、リアスの方が僅かに長い。
でも、一撃入れる間に三発食らった。
ダメージの大きさ、私の方が大きい。
私の方がタフ。
だが、同じ殴り合いだけなら不利。
「遊びは此処まで。次から本気出すわよ」
「同じく。魔法は無し。力と技、それで決着」
そう、殴り合いだけなら。
この戦い、魔法は野暮。
己の肉体だけで戦うの、戦士の美学。
持てる技を全部ぶつけ、私が勝つ。
「待った待った! 二人共、争いは一度止めて!」
「お兄ちゃ……様、邪魔しないで!」
「そうだ。後で寝技の相手してやる。今は下がれ」
間に入り込むロノス、野暮な奴だ。
だが……。
「……気が変わった。良い、今は止める」
「はぁ!? アンタ、逃げる気!?」
「リアスもお願い。僕からの頼みだからさ」
「……はーい」
ロノスに手を合わせて頼まれ、リアスはむくれながらも承諾。
この兄妹、相も変わらず仲が良い。
一見、兄が妹を甘やかして言われるがまま、実際は兄も妹を上手く動かしている。
家族の絆、兄妹の信頼、それがリアスが制御されている理由、でなくば私との戦いは続いている。
惜しい、と思う。
何故か、羨ましい、とも思う。
リアスが止まった理由はこれ、ならば私は?
私にとって強敵との戦い、飢えた獣の前に差し出された肉と同義。
何故、ロノスに素直に従って止めた?
……ロノスの言葉だから?
多分、そう。
困らせる、嫌だった。
何故? 私とロノス、盟約で結婚する。
私、納得、奴ならば文句無し。
困らせるの、子供作るの無関係、それで盟約破棄されない。
分からない、何故だか理解出来ない……理解したいと思う。
こんな想い、初めて。
どうすれば分かる?
知りたい、何故ロノスを困らせるの嫌なのか。
「ほら、良い子だね」
「もー! こんな所で撫でないでよ」
考え事、二人の声で中断。
ロノス、リアスを撫でて、文句言ってるリアス、表情は嬉しそう。
気が付けばロノスの空いた手、掴んで頭に乗せていた。
「私、先に止めた。撫でろ、誉めろ」
「え? あっ、うん。……そういえば戦闘民族の君が止めるなんて意外だったよ。有り難う、今は戦っている場合じゃないから助かった」
私、親に甘える幼子違う。
何故こうしたか、分からない。
でも、戸惑いながらも頭を撫でるロノスの手、心地良い。
耳の付け根が特に気持ち良い。
触れられると、下半身が疼く。
心の暖かさ、それ以上に夢見心地。
「んっ……」
目を閉じ、頭に触れる手の存在に集中。
この気持ち、本当に分からない。
不可解、不明、それらは本来は警戒対象。
でも、この気持ちを知りたい理由、多分別。
根拠無い、けれでも分かる。
ロノスと触れ合って、ロノスの事知れば、分からない理由、分かりたい理由、全部分かる気がした。
「取り敢えず休憩にしましょう。今後の動きを決めるにしてもトアラス君達がリカルドさんの尾行を終えて戻ってからですし。ですが、積極的に打って出る事は無いと覚えていて下さいね。先生からのお願いですから」
ロノスの手が止まり、少し惜しんでいる時にハーフエルフが提案する。
此奴、この場の責任者、そして実力者。
「ちょっと僕は寝転がって来るよ。色々と疲れたからね」
だから皆、従っている。
ロノスも手を当てた首を鳴らしながら部屋を出るけれど、私はどうする?
追い掛けて押し倒すか、休みたいなら添い寝で我慢するか……。
良い、疲れているのなら無理はさせない
だから添い寝、互いに服を脱ぐ程度で許す。
「……その前にトイレ」
事の最中に漏らすのは避けたい、情けない。
「……居ない?」
トイレから出て、ロノスの気配探る。
建物内、気配しない、ならば外か。
窓の外、見ればグリフォンの腹を枕に眠るロノスの姿。
「丁度良い、犯すか」
寝ているのならば抵抗も無い、そう思った窓から飛び出すが、近寄った途端に邪魔者が現れた。
眼中に無かったから気が付かなかったが妖精……見覚えはある。
挙動不審、ロノスに何用だ?
警戒する私に気が付かず、其奴はロノスに顔を近付けて……察した。
キスする気だ、何故か途中で止まったが。
この後、キスしそうでしないので頭軽く蹴ってさせた。
それで何故怒る?
全く分からない……。