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痛手

そろそろ絵を順に乗せていくのやりたい


番号コピってたメモ消しちゃったんだ

「……はぁ。はぁああああああああああああ……良しっ!」


 久々にマトモな戦い、そして大技、僕にとって戦いは”やらなければならない事”でしかなく”やりたい事”じゃなかったんだけれど、強い相手との戦いでの高揚感や達成感と無縁な訳では無いし、強くなっていて行く自分に誇りを覚える。


 ……あれだ、人間は争うのが本能だと女神テュラ(お姉ちゃん成分皆無)が絶滅させようとするのを自己分析で理解するだなんてね。



 それはそうとして、吹っ飛んで行った二人の様子を伺う振りをしながらリアスに見られない様に溜め息を吐いた後で何時もの笑顔、可愛い可愛い愛しの妹に向ける兄の顔に戻した。


「リアスも手伝いに来てくれたんだね。助かったよ。……まさか一度殺した筈の神獣が生きていたなんてね」


 僕の背後に着地したリアスの方に振り返る、大丈夫だな、兄の顔になっているな。


「えっと、凄そうな技を放とうとしていなかった?」


「大丈夫だよ、あの程度ならさ。広範囲攻撃を複数発動しながら相手を狭い範囲に閉じこめて威力を集中させる、直ぐ放てるからさ」


 作った顔? いやいや、どちらも僕だし、割合的にも重要度的にも兄としての顔が上だ。

 ハティは久し振りに本気で戦える敵、ちょっと惜しい気もしたんだけれど……妹が申し訳無さそうな顔をする事に比べればね。

 ぶっちゃけレナスとかマオ・ニュとかの方が強いし、殺気を向けて本気で戦っても大丈夫な相手が居るし。



「本当? 怒ってない?」


「僕がリアスに対してこの程度の事で怒るはずが無いじゃないか。僕はお兄ちゃん、何時でも妹の味方さ」


 本当の自分とは正反対な聖女として振る舞うだなんて面倒な仕事をしているし、僕は裏の仕事を全部引き受けている程度だ、戦いの邪魔な程度で怒るはずが無いのに気にしすぎだよ、ゴリラだなぁ……じゃなくて馬鹿だなぁ。


「ほら、良い子良い子」


 大丈夫だって言っているのにシュンとしたリアスを手招きして頭を撫でてやる。

 十六歳だし他人相手だったら女の子の頭を撫でたりなんかしないけれど、この子って何だかんだ言いつつも寂しがりやで甘えん坊の女の子なんだ、誰も他に居ないのなら構わないだろう。




「キュイキュイ!」


 おや、ポチが風で運びながら船員を全員甲板まで連れて来た。

 気絶しているし撫で撫では続行、ポチも撫でて欲しいの?

 もう片方の手ですり寄って来たポチの顎のモフモフした羽毛を撫で回す。



「戦いなんかよりもこれだよね……」


 大切な家族とペットとの触れ合いの時間に比べれば戦いの楽しさなんて糞だよ、糞。



「ちょっ!? 避難が済んだならさっさと手助けに来るっすよ、ポチ!」


「キュイーイ?」


「あー! 言葉が基本的に通じないの忘れてたっす! 避難させろって動作で通じたんっすね、姫様若様さっさと助けて!」


 絹を裂くような声……にしては少々慌ただしい声で名前を呼ばれてもポチには通じないので首を傾げてる。

 ”僕に何か用?”って声の主のピンチを分かっちゃいなかった。


 そりゃ僕の言葉は妖精の女王様によって通じるのであって、その他の人の言葉は犬が教えられた命令を何となく理解している程度、海に投げ出された人達を甲板にまで連れて来たのだって言葉と同時にジェスチャーでもしたのが通じたってだけだろう。


 普段からメイド達にお菓子を貰って芸を仕込まれて居るからね。

 取って来いとか持って行けとか、そんな遊びの延長線だろうし、だから今現在海に置き去りで悲鳴を上げる結果になっている。


「ツクシ!」


 慌てて海面を眺めるけれど、ポチだってツクシを見捨てた訳じゃない、此処を任せても大丈夫だって判断したからだ。


「本当にっ! 助けて! 欲しいっす!」


 人魚だろうと海中じゃ言葉を発せず、だから海面に顔を出して魔法を使おうと詠唱を始めた相手の顔に両足で着地し、周囲から飛び出して来た相手には跳躍で包囲をすり抜ける瞬間に爪で目の辺りを爪で切り裂く。

 潜ろうとした相手には尻尾の先が海面に出た瞬間に懐に隠したダーツの矢を投げて、次から次、源義経や因幡の白兎もかくやって具合に人魚から人魚へと飛び交って翻弄しながら戦い続ける。


「流石は猫の獣人、曲芸紛いはお手の物か。このまま見学をしたい気分だけれど……」


 空からの奇襲と目当てだった船乗り達の奪還、ホームグラウンドである海で人魚達が陸の住人であるツクシにあしらわれて居るのは動揺とかがあってこそ、冷静さを取り戻されたら危ないからね。



 顔面を踏み抜かれたりダーツを急所に食らったりと意識を奪われた人魚がプカプカと浮かぶ中、僕はポチに見える様に人魚を指差しながら口笛を吹いた。



「キュイキュイ!」


 了解とばかりに激しく動かされる翼、ツクシを中心に海面が渦を巻き、それはは海水を巻き込む竜巻になって人魚達を舞い上げた。

 そのまま人魚達は甲板上に積み重ねるように落ちて来るけれど、ツクシだけはびしょ濡れの状態で残された人魚の上に乗って恨みがましい目で見ているし、これは怒ってるな。

 普段は憧れているレナスの口調を混ぜているのが無くなって話し方を素に戻しているし、余裕が無い。



 えっと、何をされたか確認しようか。


 ……リアスに空高くから投げられて、ポチに置き去りにされて人魚と戦い、最後は水竜巻の飛沫で全身がビッショリだ。


「わ~か~さ~ま~!」


「ごめん。特別ボーナスを僕の財布から出すよ」


 指で給金の二割を示し、渋顔なので三に変えたら、気絶した人魚に乗った状態で真顔になって跪く。


「任務完了しました、マイロード! 何一つ問題は無いっすよ!」


 うんうん、現金で良かった良かった。

 

「じゃあ、濡れた服をどうにかしてあげるから船に上がって来てよ」



 しかし月給の三割かぁ……流石に痛いな。


 入る金も出る金も多い僕の懐事情、クヴァイル家のメイドの月収は普通の家よりも多いし、ダメージは決して軽くない。

 ……はぁ。





「疲れたねぇ。姫様、ちょっとメイドの扱いが雑じゃないかい? メイド長に報告させて貰うっすからね!」


 人魚を踏み台に甲板まで飛び上がって来たツクシはその場で座り込み、大きく溜息を

 耳も尻尾も垂れてしまっているし随分とお疲れらしいね。


「疲れたのは分かるよ。でも、臨時ボーナスで手を打っただろう?


 高速で飛ぶリアスにしがみついて来たんだから、うちのメイドだろうと仕方が無いんだろうけれど……。


 でもレナスの口調を真似る余裕が有るじゃないか、普段も時々外れるのにさ。



「ツクシ、気を抜かないで。お代わりが来るからさ。……此処で確実に仕留めようか」


 響いた口笛らしき音にツクシは立ち上がり、僕に向かって小太刀を投げて寄越した。


「夜鶴は無理でも明烏は持って行って欲しいねぇ、若様」


「肝に銘じておくよ。……帰ったら五月蠅そうだ」


 僕でさえ少し楽しいと思った相手、そんな貴重な敵との戦いの機会を逃したと明烏が知ったら普段の数倍の怒りを受ける事になりそうだ。

 だから今回は戦果がそれなりに欲しい、出来るなら情報を吐かせた上でハティと僕が倒した筈の奴の二体の討伐、せめて一体、最低でも更に詳しい情報を得て次に遭遇した時に確実に葬れる様にする。



「やってくれたな。光の神殺しの介入が無ければ危なかった。ふむ、我の能力にも穴があったと知れただけでも良しとするか」


「……先ずは情報を入手か」


 海の上に立ったハティは白目を剥いた栗毛の神獣を肩に担いで僕達を睨むけれど、気絶した女は鼻血をダラダラ流している状態だ。

 胸に穴を開けられても生きている奴があの程度も治せない……つまり条件が有るという事、リアスからの情報と会わせればそれなりの推論が……リアスからの情報かぁ。



 ちょっと不安になった時、ハティ達に向かって空の上から急降下して来る物があった……いや、者が居た。




「妙な奴、発見。我の敵……恐らく!」

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最近別サイトのみでラブコメ始めてます  こっちで需要あるかな、私のだしなあ……

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