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恐喝じゃないです、脅迫です

「何か態度が妙っすねぇ。今朝何かあったんだろうけれど」


 普段はメイド長やら数人のメイドに起こされて、そのままお風呂で全身を洗われるんだけれど、ツクシに体を洗って貰った私が見てみればレキアが随分と不機嫌だったわ。

 お兄ちゃんが何を言っても顔を合わせようとはしないし、顔を背けてしまう。


 ……まあ、肩に乗ったままなんだけれど、あれって本当に怒っているのよね?



「レキア、好い加減機嫌を直してくれないかい? 僕に出来る事なら何でもするよ。君に怒られっぱなしは悲しいんだ」


「……ふんっ」


 今は全員揃って浜辺や森の仲を走り込み中、背後からはアカー先生のゴーレムが追い掛けて来て、捕まったら罰のプリントが用意されているから絶対に捕まる訳にはいかないのよね。

 いや、マジで。


 他の連中の助っ人も参加する中、私達は三つのグループに別れていたわ。


 先ずは先頭集団、お兄ちゃんが楽勝で入っているのは当然で、ルート先輩やトアラス、そしてアンリも含まれるわ。

 まあ、曲がりなりにもクヴァイル家の側近の家の跡取りだし、他が筋肉信仰と軍門の一族なんだから当然よね。


「ぐっ……」


 ……ああ、そうそう、フリートの奴も何とか先頭集団に食らいついてはいるわ。

 必死に走っているのが端から見て丸分かりだけれど、お兄ちゃんのずっと後ろを走るのは嫌って感じなのかしら?


「おっ先~!」


 だから後続集団に居た私は涼しそうな顔で真横をすり抜け、そのままUターンして元の位置に戻るってのをこれで五回繰り返した。



「リアス様、意地が悪いですよ? 他の家の方も居るんですから。もぅ」


 そんな私に注意するのは中間集団の中で走っているチェルシー、他はフリートやチェルシーの所の助っ人が何があっても対応可能な様に警戒して走っていたわ。


「リアス様ったらお茶目ですわね」


 ネーシャも中間集団の一人なんだけれど、足が不自由だから氷の馬車に乗って走っていたけれど、どうして先頭集団に加わらないのか気になるわね。


 うん、訊いてみましょう。


「お恥ずかしながらロノス様の横を走りたくても、あの速度に合わせると長時間の使用は難しくなりまして……」


「ふーん、まあ砂浜や森の中に合わせて車輪を変えているし魔力の消費も激しそうね、確かに」


 ネーシャの馬車が遅いんじゃなく、お兄ちゃん達が速いのよ(俺様フラフープは除くけれど)。


 気になっていた事が分かったから私は元の位置である後続集団、アリアとツクシの所にまで戻って来た。

 後ろから迫るゴーレムは一番遅い人が全速力で走れば追い付かれない速度を維持するってアカー先生が言っていたけれど、空を見れば太陽は東から西に傾き始めた所、開始時刻が八時半位で今は二時程度かしら?


「ひぃ、ひぃ」


 確かに此処最近一気に強くなったアリアだけれど、長い間食生活が悪かったせいで不健康な痩せ型だったし、……何故か胸は大きいけれど。


 何故か! 胸は! 大きいけれど!!


 アリアは確かに強くなった、短期間での大幅な肉体の質の向上……要するにレベルアップを繰り返したし、元々闇属性は高威力で才能自体も有るんだけれど、体の動かし方がイマイチ何だよね。

 少しはマシになったけれど、正直言ってまだまだ未熟、こればっかりは時間を掛けなくちゃ駄目な物だわ。


 私とお兄ちゃんは前世では運動神経普通だったのに、今じゃ運動神経バツグン……欲を言えばもうちょっと胸が欲しいのよね。

 戦いの時は邪魔になるから絶対って訳じゃ無いのよね……本当だからね?


 それを証明しているのが無駄に体を上下させているから大きく揺れる胸、ちゃんとブラジャー着けてるのって疑問に感じる位に揺れている、一歩踏み出す度にブルンって揺れて羨まし、動くのに凄く邪魔になっている。

 レナスやレナが激しく動いてもああはなってないし、今後の課題かしらね。


 おい、男子、チラチラ見るな。


「フリート、後でログハウス裏ね。絶対来なさい、来ないと潰す」


 ほらさりげない気だろうと丸分かりだっての。


「お、おう……」


 そして俺様フラフープ、ざまぁ!

 ……チェルシー、マジのトーンだったわね。



「ったく、これだから男は。んで、大丈夫なの? 大丈夫な訳無いか」


 折り返し地点を通過して、正面から捕まえに来るゴーレムを避け、時々襲って来るモンスターの相手をしながら走り続ける事、結構な時間。

 遠目にログハウスが見えて来たし、このペースならそんなに掛からずゴール出来そうだけれど体力的よりも精神的に限界って感じなのが今のアリアの表情。

 何て言うかお兄ちゃんにはあまり見せちゃ駄目って感じ、漫画だったら涙を噴き出す凄い必死な感じ、だから私が一緒に居るからとお兄ちゃんを先に行かせてツクシも付き合わせて後続組に居るんだけれど、その理由は追い掛けて来るゴーレム。


「いや、何でわざわざ芋虫なのよ・・・・・・」


 そう、追い掛けて来るのは背後にズラッと並んだ子犬サイズの芋虫の姿をしたゴーレム、しかも形だけじゃなく着色までリアル、それが縦横八体ずつ並んで時々飛び跳ねたりしながら追い掛けて来るんだし、芋虫系が苦手なアリアじゃ必死にもなるわ。

 私も勉強が苦手だから罰のテストは嫌だし全力で逃げたいんだけれどアリアを見捨てては行けないし。

 因みに今の彼女はガチで助けを求める必死で限界ギリギリって表情よ。



 写真とか撮れたら撮りたかった位には珍しいのよね、そんな風に思っていると左右の草むらから宙に浮くデザートカップに乗って小さな手でスプーンを持ったプリンみたいなのが飛び出して来た。

 いや、青い半透明だからプリンじゃなくてゼリーかしら?


 確かつぶらな瞳が可愛いコイツの名前は・・・・・・。



「”ブルーゼリー”ね。餌でもやれば直ぐに戻って行く大人しい・・・・・・」


「ナー?」


 あっ、可愛い。


 猫のデフォルメしたイラストみたいな顔に鳴き声、私と目があった途端に体をプルプルと震わせて体を横に傾けるけれど、多分首を傾げている感じなのね。


 流石は”女の子が選ぶ飼いたいモンスターランキング”上位独占の”ゼラチン種”(男の子はドラゴン)、うちはポチって捕食者が居るから飼えないけれど、ちょっと餌をあげる位は良いかなとポケットの中に入れていた飴玉を取り出した。


「ムー!」


 モンスターの癖に人懐っこくって犬程度の知識があって、甘い物が大好物、大人しい方だとは言っても野生の個体なら空腹時には人を襲う事もあるから、実際に躾とかの問題で飼える家は少ないし、こうやって野生のとしか触れあう機会が無い。

 私が飴玉を見せれば目をキラキラと輝かせて短い手を伸ばしながら私の方に寄って来たから飴玉を投げてやったんだけれど、何匹も居るから殺到した時に衝突しそうになる。


 でも、結果から言えばブルーゼリー達は衝突しなかったわ。




「”シャドーランス”」


「ム……ムゥ……」


 一カ所に集まったブルーゼリー達を貫いて体内で枝分かれした影の槍、乗っていたカップも割れ、スプーンが地面に落ちる。

 苦悶の表情を浮かべ、苦痛の断末魔を上げて息絶える姿からはさっきまでの可愛さは微塵も感じられなかった。



「リアスさん、流石ですね。あのモンスターに纏わり付かれたら芋虫に追い付かれる所でした。私、本当に芋虫が苦手で、こうやって芋虫って口にするだけでも背筋が凍って鳥肌が立ちそうになるんですよ。ああ、良かった。私が芋虫に捕まるようにする連中がアッサリと死んでくれて」


「ア……、アリア? ちょっと目が怖いわよ」


 急に魔法を放つもんだから思わず見たら、目から光が消えた状態で、一気にまくし立てている。

 これは見なかった事にするべきなのよね、ツクシだって視線を外して見えない振りをしているし。



「……あっ、でも後少しですね。私、お腹が減って来ました」


 ふぅ、目が元に戻ったわ。


「あの、所で私の目がどうとか……」


「私もお腹が減ったわね」


「それにしても……先生は背後のアレをどうしてアレの姿にしたのでしょう? もう、何でアレなんでしょう」


 もう”芋虫”って口にも出さない気なのは伝わって来て、私はこれ以上の言及をしない事にした。

 見ざる聞かざる言わざる、友達だろうとそれが必要な時はあるものよね、うん!






「……もうこれ(・・)を使っちゃって良いでしょうか」


 一瞬だけハイライトの完全消滅した瞳になったアリアは私がお土産で渡した”ダークマター”をポケットから取り出す。

 鞘の目玉が私の方を睨んで見えたので睨み返してやるとサッと目を逸らす。





「勝ったっ!」

 

「いや、何の勝負をしているんっすか?」


「野生動物的な、目を逸らした方が負けな奴?」


 え? どうしてツクシったら深い溜め息吐いているの?

 全然理由が分からないわ。




 しかし、お兄ちゃんがダークマターについて知っていたからどんなのか聞いたけれど、まさかそんな物が手に入るだなんて驚きね。


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挿絵(By みてみん)

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