フラフープは意外と鋭い
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敵の敵は味方、そんな言葉があるが俺様は肯定も否定もしねぇ、いや、しちゃいけねぇんだよな立場的によ。
強敵が現れて、其奴に恨みを持ってる奴が居るから力を合わせる、これは珍しい話でもねぇ、利害の一致で手を組むのは普通の話だな。
面倒な奴に他のをぶつけて消耗させる、あわよくば弱った両方ともぶっ倒して利益総取り丸儲け……ってのはこっちも向こうも考える事、自分と自分の大切な部下の消耗をどれだけ抑えられるか、敵の敵なんてそんなもんだし、三つ巴だって有り得れば共通の敵を倒した瞬間に味方が即座に敵になるってのも考えるのが俺様みてぇに部下を率いて前線に出るタイプの司令官の役目だと親父からは教わって来た。
そんな中であっても人は信じたいし、ずっと味方で居てくれる相手だって欲しい、内部分裂で勝手に弱まるのは敵だけにして欲しいぜ。
同じ国内でも権力争いが起きるし、それは血の繋がった兄弟、時に親子の間でも起きちまうのが悲しいが、俺様には血縁者じゃねぇものの味方で居続けて欲しい奴が居る。
個人的な意味でも、戦力的な意味でもな。
ロノス・クヴァイル、俺様のダチで愛する婚約者の幼なじみの一人、此奴は敵にはしたくはねぇな。
妹の方も厄介だし強いんだが、こっちが使った魔法の時間を操って魔力に戻すってなんだよ、反則だろっ!?
その癖、向こうは好き放題魔法を使う上に魔法無しでも強いんだから、どれだけ戦って肉体の質を上げ続けたんだよ。
「……妙な話なんだよな」
まあ、絶対に追い付いてやるよって感じのダチは別に今は良いんだよ、今は。
ベッドに寝転がり天井を見上げれば妙にラブリーな猫が描かれているし、普通に建てただけじゃなくて所々にこんな感じの物がチラホラ、窓なんてハートや角が丸い星形……とかも気にはなるが今は別の事だ。
敵の敵が味方とは限らねぇが、友達の友達は友達じゃねぇ、例えばモンスターに騎乗して挑むレース”アッキレウス”で知り合ったっていうアンリ・ヒージャ、エワーダ共和国の軍門一族の長男……どうも変だ。
「風呂を一人にして欲しいだぁ? 別に野郎と裸の付き合いをしたいとか思ってねぇが、わざわざ言って来るだなんてどうしたんだ?」
それは共同生活をする為の巨大ログハウス(絵本に出て来そうな丸っこいキノコ型で有刺鉄線が張り巡らされ、アイアンメイデンが塀の替わりに立ち並ぶ……怖いだろっ!?)でのルール決めの話し合いの途中、取り敢えず俺様は温ぃ風呂が好きでロノスとアンリは熱いのが良いから後から沸かすか冷やすかするって纏まった後、そんな事を言い出された。
……まあ、他人との風呂が嫌だって奴は居るんだろうが、どうもロノスまで加わって頼んで来るのはどうも怪しいんだよな、おい。
「傷……は見えている所にも有るし、そもそも軍人なら名誉の傷跡は勲章物……だったら逃げ傷か? それならまあ……いや、本当に俺様は何を気にしているのやら馬鹿馬鹿しい。チェルシーの所にでも行くか」
知り合ったばかりだし、共闘を一度だってした相手でもない、そんなのが他人に裸を見られたくない理由を考えてもどーでも良いや。
そうと決まれば早速出ようとベッドから起き上がった時、庭で安楽椅子に座ってボケーッとしているアリアの姿。
それを見た時、ある考えが頭を過ぎる。
「まさか傷以上に見られちゃ拙いもんでも体にあるとかか? 例えば……テュラ教徒の証の入れ墨とかよ」
ロノス達の先祖である先代の聖女……いや、あの馬鹿が今代の聖女だってのは意味不明だが、その先祖はきっとマトモだった筈、その聖女が倒して封印したとされる闇の女神テュラ、人間を滅ぼそうとした存在。
それを信仰する証として消えない印を肉体に刻み込んで……其処まで考えて吹き出す。
「有り得ねぇ有り得ねぇ。実は女だって位有り得ねぇ。……女じゃねぇよな?」
喉の辺りをチョーカーで隠しているし、ゴリラ娘みたいに平らだってんなら誤魔化せるよな、顔も中性的だしよ。
こんな考えが浮かぶのもビリワックの野郎に勝てなかったからだ、俺様は絶対に負けてはいないが、勝ちだって言える程に面の皮が厚くもない。
「うっし! さっさとチェルシーを誘って来るか。大切なモンを再確認するのが強くなる為の近道だ」
家、領地、領民、ダチ、好きな女、守りたいと思う存在は沢山あって、背負うモンのお陰で俺様は強くなろうって思い続けられる、対等なダチなのに強さじゃ到底敵わない奴が居ても心折れずに居られる。
「本当、彼奴には頭が上がらねぇぜ。……将来絶対尻に敷かれるな」
それはそれで悪くはねぇが、ちょっと複雑な気もするがよ……。
「ロノスさん、私と遊びに行きませんか? えっと、出来れば二人っきりで……」
僕が外の空気を吸おうと部屋から出た時、アリアさんにそんな風に誘われた。
水着の上からシャツを着ただけで下の部分は見えているし、何というか……うん、普通に水着なだけよりもこっちの方が僕の好みだ。
顔を赤らめモジモジしながら上目遣いで期待を込めた表情、何を期待しているのかは何とな~くだけれど予想出来るんだよね。
彼女に好意を伝えられていて、僕も拒否する所か個人としても家としても受け入れる可能性を出していて、今回の臨海学校では他の女の子と過ごす事が多かった。
ネーシャと一緒に居た時に急に乱入して来たし、彼女の予定では僕ともっと仲良くなる気だったんだろうな。
「うん、じゃあ二人で遊ぼうか。折角の海なんだし、君と楽しみたいからね」
アリアさんは僕にとって大切な存在だ、ないがしろになりがちだったのは間違い無いし、可愛い子と二人で遊ぶのは絶対に楽しいだろう。
じゃあ、思い立ったら吉日って事でアリアさんがしたみたいに邪魔されないように行こうか。
アリアさんの手を取り、気が付かれないように急ぎながらも静かにログハウスから抜け出していった。
「所でリアス達の姿が見えないけれど何をしているんだろうね? お陰で見つからずに抜け出せんだけれどさ」
「実はネーシャさんの発案で女子会で親交を深める事になったんですが……疲れが残っていて眠いと騙しちゃいました。えへへ」
悪戯が成功した事を誇る子供のようにアリアさんは舌の先を出して笑う。
普段から明るい振りをしているだけの彼女だったけれど、この時は心の底から楽しんでいるように見えて、今までの作り物の笑顔の何十倍も魅力的に見えた。