表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

268/393

嵐の如き男(尚、草属性)

上からブクマお願いします!

 お楽しみ中に訪れた招かざる客人、敵か味方か判断出来ず、僕とタマは敵の侵入や外からログハウスを巻き込む大掛かりな攻撃など敵だった場合を前提に構えていた。


「来たか。ただの客人だった場合、武器を向けられドラゴンに威嚇され、随分と驚くだろうな」


 なあに、元々異常事態が発生したから帰宅者が出ている現状、謝れば普通の客でも問題無いだろう。

 ……実の所、僕もタマも敵である事を内心では期待している節があったのは否定出来ない。


 タマはサンダードラゴン、元々好戦的で気性の荒い種族であり、僕だって幼き頃より軍事訓練漬け、何かを、誰かを守るのが役目だとは分かっているが、力を付ける事と、それを強敵相手に試す事に快感を覚える人種だ。


「さあ、敵だったならば楽しませてくれ」


「ピィィィィ」


 だが、相手はドアの前で立ち止まるとノックを数度、敵でなかった事に安堵と落胆が入り混じるも、次の瞬間には雷鳴の如き轟音によってログハウス全体が振動する。





「失礼するぞ! 入っても構わないだろうか!」


 ドアを隔てているというのに耳を塞ぎたくなる程の声量を出してニョル・ルートが来訪を告げていた。


「有り得ないだろう、普通……」


 とても人間が出して良い声量じゃない、大型のドラゴンの咆哮を間近で聞いた気分だと、半分くらいドアの向こうの先輩が実は人間ではない説を抱く僕なのであった。


 って、窓ガラスにヒビが入っているじゃないか……。




「そうか、声が大き過ぎたのか。今後は気を付けよう」


 正直言って直ぐに帰って欲しい所だが、相手は先輩な上に監督補助の役目を背負っている、何か重要な用事があるのなら二言三言話して即帰って貰う訳にも行かず、今は通して先に言うべき事だけは伝えたのだが、どうやら話せば分かる相手らしい。

 ふむ、勝手にロノスの妹の同類だと思っていたが、僕が彼について知っているのは噂の内容が中心なのだ、判断するには材料が足りないだろうにな。



「本当に! 申し訳無い限りだ!」


 テーブルに指を食い込ませながら握り締め、ぶつかった分厚い板が陥没する勢いで頭を下げる。

 その時の声は鼓膜が破れるかと思った程で、頭がクラクラする。



「反省だけならゴリラでも可能だぞ」


「ぬっ!?」


 何故驚く……。


 噂には聞いていたが、此処までとはな。

 将来的に王国との付き合いを控えろと父や弟に提言すべきだろうか……。


「取り敢えず普通の大きさの声で用件を告げろ、そして即座に帰れ」


 訂正、此奴は間違い無く頭の中まで筋肉が詰まっている、完全にリアス(あの子)の同類だ。

 僕は耳がキーンとなる中、最早先輩だからと丁重に接する気が失せていた。


 うん、本当に何を伝えに来たのやら。

 くだらない内容なら殴って良いよな?


 まあ、声が五月蠅いのもあるが、僕の性別が発覚するのも不味いからな。

 ずっと隠し通して来たんだ、今更少し話した所でとは思うのだが、この手の馬鹿は妙に鋭い、ロノスもそんな所があるから用心だ。

 それでも余程の事が無ければ安心出来るか……。



「実は帰宅する生徒も多く、男子生徒は君達四人なの……だ」


 今、大きな声を出す所だったな。


「ふむ、もしかして帰宅者が多いから結局中止か?」


 そうならば僕の水練は実家で行うのか、少し困ったな。

 浅い所なら何とかなるが、足が着かない所や流れや波によっては未だ駄目な場合もあるし、どうせなら友人と仲良く練習をしたかったのに残念だ。






「いや! 我々が屈しないのは変わりなし! 人数が減ったのを幸いとし、全員で固まって生活する事になったから安心すると良い! 共同生活だが、全員全く無関係でもないのだから安心だな! おっと、声が大きくなっていた!」



 前言撤回、安心不可能っ! 

 ちょっと待て、固まって暮らすって、ロノス以外の奴と共同生活って……不安だ。








 尚、ガラスは今の大声で完全に割れた。



「それでは俺は残りのログハウスを回るから失礼させて貰おう! ロノス・クヴァイルには修繕の手間を掛けさせたと伝えてくれ! 俺も改めて謝罪に伺うがな!」


「来るな。もしくは外で謝れ。ガラスがまた割れる」


 まさに嵐の如き男だったルートは騒ぐだけ騒いで帰って行った、本当にまた来るんだろうな。

 真っ直ぐな男ではあるし、善人なのは間違い無いのだろうが……暴走が激しい所があるのは本当に厄介だ。



「……本当に来ないでくれ」


 心の底から思う、王国貴族に生まれなくて良かった、と。




「ロノス、君はどうするべきだと思う? 本来ならば帰るべきなのだろう、一族の掟は絶対だ。いや、君にバレている時点で問題だし、学校側にも協力要請をする時点で……うん」


「もうグダグダな気もするけれど……それでも掟は掟だ、無視は出来ないってのは分かるよ。君は帰りたくないんだよね?」


「ああ、のんびり過ごせるのは今だけ、軍に正式に配属されれば国外の友人は勿論、国内の知人とも中々会えなくなるだろうし、嫁ぐ家によってはアッキレウス(レース)に出場することすら無理だ。君は僕にとって大切な相手だからな。まあ、普通に逃げ帰るみたいな真似は誇りが許さない。軍人ってのは舐められたら終わりだよ、貴族以上だと僕は考えている」


「……僕もアンリとは一緒に臨海学校を楽しみたいな。さて、どうやって隠し通すかだけれども、アカー先生にも手を貸して貰わなくっちゃね」


 ネーシャに用があると出掛けたロノスだが、向こうで僕と同じ話を聞いたらしくて用事をすませるなり飯も食べず妹に会う事すらせずに急いで帰って来てくれた。

 あの妹とペット相手には馬鹿になるロノスが……あの妹とペットが関わると頭のネジが半分以上吹っ飛ぶロノスがだ。

 ……僕の事を心配してくれたんだな、僕は本当に素晴らしい友人を持ったよ。


「……君を使った事に今更ながら罪悪感が物凄い」


「うん? 僕を使う?」


「……何でも無い。と言うか……聞くなっ!」


 君をっ! 性欲発散の為にイメージの対象として使っただなんて! 言えるかぁああああっ!!


「そっか。聞かれたくない事なら僕は何も聞かなかった事にするよ」


 ぷいっと顔を逸らせばロノスは何時もみたいにヘラヘラ笑っているんだろうって声で告げて来て、罪悪感は消えたんだけれど恥ずかしいな、これは。

 顔見るの、余計に辛くなったぞ……。





「だからこれは一人事だけれど……僕で良ければ何にでも使って良いよ、家に迷惑が掛からない範囲ならね。ああ、僕も君を……」


「つ、使うなっ! 良いか? 絶対にだぞ!」


「あっ、うん……」


 

面白いと思ったら下の☆☆☆☆☆から評価お願いします!


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ