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一応仕事は出来るらしい

Twitterで漫画にしたの公開中


https://mobile.twitter.com/eI7UnTYEV36owgL



ブクマ待ってます

 そもそも妾がどうして臨海学校に赴いたかというと、朝まで時間が遡る。\



 クヴァイル家の屋敷の庭と妾の管理領域を繋いでから、妾は屋敷に入り浸っていた。


「レキア様、お茶の準備が出来ました」


「うむ。ご苦労。下がって良いぞ」


 恭しく差し出されたのは妖精サイズに作られたティーカップ、子供のままごと遊びに使われるような安い作りの玩具ではなく、サイズこそ小さいが貴族御用達の物とサイズ以外は寸分違わぬ……人間の技術は凄いな。

 妖精族と交流のある聖王国の職人ならば我々が使う事も想定して技術を高めているだろうが安くはないだろうに。


 紅茶と茶菓子を用意したメイドは妾の言葉に素直に下がり、妾は誰も見ていない事を確かめると体のサイズと比べると小さいベッド程もある皿に載せられたマシュマロを両手で持ち上げた。

 一口噛めば口の中に広がる甘み、質は妖精の国の物も負けてはいないが、このサイズは人間の国に行かねば容易には手に入らんからな。


「……むふふ~」


 妾は姫、そして長女、そう簡単に見られてはならぬ顔がある。

 特に大好物の菓子をほうばって満面の笑みを浮かべる所とかな。


「普通のと……チョコとイチゴか! 流石は人間、菓子の開発に関しては侮れぬ」


 妖精族の菓子作りは基本的には魔法によるもの、故にオリジナルの魔法を創り出すのと似ていてどの様な物なのか明確にイメージが出来なければ難しい。

 一部の天才が居なければ新しい物は生まれず、人間は多くの物が技術を共有し案を出し合って試行錯誤で日々新しい菓子を作り続けるのだ。



「ふふふ、マシュマロ最…高……」


 今度はチョコのとイチゴのを千切って同時に口に運べば新しい味わい、思わず両頬に手を当ててウットリしているいた時、視線を感じて木の方を見れば庭師をやっている老ゴブリンと目が合った。


 見ら…れた……。



 妖精族はゴブリンをモンスターの一部と見下していた歴史があるし、妾とて魔法で創り出した偽ゴブリンでロノス達を襲った事もあるが、徐々にその考えは消えつつある、消えつつはあるのだが……。


 く、屈辱だっ! まさか妾がお菓子に夢中になっている姿を見られてしまうなど……屈辱でしかない!


「……ピュー」


 顔に出ていたのか庭師は妾から視線を外し、下手な口笛を吹きつつ何処かに去って行く、何も見ていない、無言でそう言っているのだろう。


「よし、それで良い。妾も忘れよう」


 昔の妾ならばゴブリン如きに気を使われてしまったと屈辱に感じるのだろうが、ロノス達と関わって変わったのだろう、そう、妾は変わり続けている。

 友とすら認めなかったのに、今では友として認めて、更には将来の夫として妖精郷にまで連れて行っているのだからな。


「いい加減気持ちに素直になれば良い物を……」

 

 何を言っても文句すら言われず接し方が変わらない彼奴に甘えているのだなと思う。

 愚か者は妾だというのに何かある度に愚か者と連発し、後から考えれば面倒な女だと我が事ながら思ってしまうな。


「昔から好きだ、愛している……そんな風に伝えねばな。正妻候補は妾とナミ族の脳味噌筋肉娘、付き合いの長さから妾が選ばれるとは思うが……」


 このまま変な態度を続けた場合、デカい胸が好きなロノスがコロッと参ってしまうやも知れん、それは嫌だ。

 奴の立場からして複数の女を娶るのは納得せぬが理解を示そう、そもそも妖精族の妾は妖精郷の将来を背負う姫達を産むのだし、後継者は別の女の子だ。


 だが、一番奴に近い者は決して譲らん、絶対にな。

 ロノスの隣は妾の居場所、他の女には数歩後を歩いて貰うぞ。


「さて、その為に何をすべきだ? ロノスの心を妾で染め上げるには……」


「それならば素直になる事ですね。レキア様は若様の前では意地を張っていますからね。端から見れば好意が丸分かりだというのに……はあ」


「五月蝿いぞ、レ…ナ……。貴様、何時から妾の後ろに?」


 妾は恋愛には疎い、政治的な事ならば学べば良いが、恋愛はどうも本を読んでも分からぬのだ。

 だから思い悩んで呟けば急に背後からレナが現れた。

 此奴、本当に何時の間に現れたのだっ!?


「まあ、それは別に良いでしょう。ちゃんと”昔から好きだ、愛している、抱いてくれ”と伝えられるように協力しましょう。どうぞ此方に」


「おい、妾は”抱いてくれ”とまでは言っておらぬ! おい、聞いているのかっ!」


 くっ! まさかその発言まで聞いていたのか、と言うより端から見て丸分かりとは本当なのか、流石に嘘だな、うん。




「大丈夫私の教え通りにすれば若様に対して自分に素直になれますよ」


「……そうか」


 妾の好意がダダ漏れ等という大嘘を吐いたレナだが、此奴はロノス達の乳母兄弟、付き合いの長さも関わる頻度も段違い、悔しいがそれは認めてやろう。

 ……一番の敵の可能性すらあるが、クヴァイル家の不利益になる真似は絶対にしない味方だとも思っている。

 ならば此処は信じるとして、一言伝えるべき事がある。






「貴様はロノスに対して素直過ぎるぞ、己の欲望に」


「私の肉欲を刺激する若様が悪いのですよ」


「悪いのは貴様の頭だ。舌なめずりをしながら何を言っている」


 此奴を信じて良いのか少し不安になって来た。







「さて、ロノスの部屋まで来たが何をやっているのだ?」


 妾が案内されたのはロノスの部屋、今は臨海学校に行っているので主の姿はなく、気軽に会えるようになったからこそ会えぬ時間が寂しくなる。

 妾がロノスの姿を思い浮かべ胸を締め付けられる気分を味わう中、レナは躊躇無くベッドにダイブするとシーツを掴んで顔を埋めて吸い続け……これ以上は見るに耐えん。

 そもそもベッドメイクしてあるのを崩すな、同僚に悪いとは思わんのか!


「どうなさいました? レキア様も若様のベッドに顔を埋め、洗濯で感じない筈の残り香を妄想するのです」


「そうか、遂に頭が暑さでどうにかなったのか、哀れな」


「……確かにそうですね。レキア様に言われた通りです」


 急に真顔になって起き上がる姿に安堵を……全然覚えん。

 絶対に何か頭のおかしい事を考えていると思ったら、立ち上がっての深呼吸、本当に何を考えているのやら……。



「この部屋は常日頃から若様が居られる場所、つまり若様を包み込んだ空気が充満しているという事で、その空気は服の隙間から体を包む。つまり……この部屋に入るのは若者と裸で抱き合うのと同義!」


「そんな訳があるか、愚か者。この家では換気をせぬのか、阿呆め」


「おや、何やら不機嫌ですがどうかしたのですか?」


「どうかしているのは貴様の頭だ、淫乱メイド……いや、貴様はもうメイドを名乗るな。そして真面目に仕事をしているメイド全員に謝れ、今すぐに!」

 

 本当に此奴は母親が戦闘欲求と性欲の傾きが真逆だな、目も当てられぬ程に。


「おい、何をやっている? 何故全裸になっている?」


「メイドを名乗るなと言われ、思い付いたのです。メイド服を脱ぎ捨て、若者のベッドで眠る事で私の匂いで戻って来た若者を包み込めるのではないかと。感謝しますよ、レキア様」


「するな」


 全裸になったレナは先程クシャクシャにしたシーツの上にダイブして体を擦り付けるようにしている、もう関わりたくないので部屋から去ろう。

 それにしても……彼奴は相変わらずデカいな。


 妾も小さくはないのだが、どうもロノスの周囲にはデカい奴が多い、妹は平らだが。

 自分の胸を軽く触りながら大きく育てと念じ、母様に胸の大きさを変える魔法でも習おうかと悩んだ所で背後から叫び声が轟いた。




「あー!? 何やってるんっすか、先輩! 折角ウチがベッドメイクしたばかりだってのにグチャグチャじゃないっすか!」


「おや、ツクシがやったのですね。少し右に偏っていましたよ。練習しなさい。それで手に持っているのは緊急用の手紙のようですが?」


「……何か叱られるのは納得いかないっすね。って、それは後で良いとして、どうもトラブルがあったらしくって若様と姫様の所に誰か送るそうっすけれど、レナ先輩はどうします?」


 ……ほう、誰か行っても良いのか。






「まあ、未来の正妻として様子を見に行くか。では、早速母様に許可をいただいて……」


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挿絵(By みてみん)

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