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黒山羊とフラフープ ②

またミスって完結扱いに タブレットの反応が良すぎる

 体がデカけりゃ強いのか?


 そんな風に問われたら俺様は”そりゃそうだ”と答えるだろうよ。

 先ず、デカいって事は重いって事だ。

 同じ体型でも二倍の大きさなら縦横高さで二倍二倍二倍の八倍って事になるだろう?



「死ね死ね死ね死ね死ね死ねっ!」


 唾液を撒き散らしながら腕を振り回すビリワックは、俺様に向かって頭を頭上に上げて倍になった身長から巨大化する前の倍以上に膨れ上がった腕を振り下ろす。

 糞みたいに重くなった腕を膨れ上がり強くなった筋肉で振るうんだったらそりゃ強いに決まってるわな。

 一撃一撃が地面を砕く位の強さで風圧が凄まじい、更にデカくなって重くなった体重を支えるってのに速度は段違いに上がってやがる。

 大振りの攻撃で単調な動きになってるが、冷静になったら話は変わるだろう。


「こりゃ変身ってよりは……こっちが元の姿か」


 急に体がデカくなったなら振り回されるもんだろうがビリワックは戸惑う様子も無ぇ。

 一時的な変身に慣れてるってよりは自然体になったと感じた俺様はビリワックの姿からそう判断し、ついでに疑問が生じる。


 なら、普段は小さくなってるのは何故だ? ってな……。




 そりゃ少し考えれば馬鹿でも思い付く。

 いや、あのゴリラ娘なら厳しい……いや、野生の直感で見抜きそうだな。


 わざわざ制限してるって事は何らかのデメリットが有るって事だ。

 プライドの問題だってんなら意味が無ぇんだが、試してみる価値は有るか。


「先ずは接近する所からだな……」


 砕いた地面の底から噴き上がる火柱に汗が滲むのを感じつつ岩の方に視線を向ける。

 俺様の魔法を邪魔した事からも分かるんだが彼奴は岩に埋もれた奴を殺さず回収したいって事で、実際に常に背を向けて火柱に巻き込まないようにしている。

 なら、あの辺りに陣取れば有利に戦えそうなんだが拳の風圧と火柱で近寄れねぇ。


「はははははっ! のんびりとしていても宜しいのですか? それにしても随分とお隠しになっていたらしい。逃げ隠れもお得意で?」


 さっきから広範囲をバカスカ攻撃されるもんだから隠しておいたフレイムアローが次々に見つかっちまう。

 苦々しい思いをする俺様にビリワックは愉快そうな声を向けた。


「うっせぇ。獣臭い口開けるな。鼻が曲がりそうだ。ったく、人が仕掛けた物を全部ぶっ飛ばしやがってよ」


 俺様が突っ込めずに攻め倦ねいているのを大笑いするビリワックに向けてわざとらしく鼻を摘まんで顔をしかめる。

 奴の眉間の辺りが歪み、どうやら挑発は効果的だったようだと笑みを浮かべた。


「ええい! 人形の回収さえ(メェ)じられてさえいなければっ!」


「そりゃ大変だったな。面倒を命じる無能な上司を見限ったらどうだ?」


 返事は歯を食いしばりながらの腕の振り下ろし。

 宙に居たら風圧で飛ばされるからとバックステップの連続で避け、火柱の熱気から腕で顔を守る。


「ったく、面倒だぜ……」


 さてと、次の予想は接近しなきゃ検証不可能なんだが、こうも近寄らせまいとしてたらな……。

 ん? そういやさっきから一撃一撃の間に間があるな。


「試してみるか……」


 どっちにしろ接近出来ないならにっちもさっちも行かないし、危険を冒さずに倒せる相手でもないし……いい加減倒さないと援軍が来そうだからな。


 ビリワックが勝負を急いでいるのも同じ理由、ロノスの馬鹿がやって来る前に俺を何とかしたいんだろうが、それにしては連打して火柱を上げ続けながら接近するって真似もしやがらねぇのは不自然だ。


「いい加減にくたばれっ!」


 振り下ろされる蹄の軌道を見極め、ギリギリで回避する。

 火柱の熱気に頭はクラクラ、肺は焼けそう、それでも俺様は前に進むだけだ。


 この火柱は燃え続けはせず、消えてから次の一撃と一緒に噴き上がっている。

 ならよ、消えてから次の一撃までの間に接近するに足りる時間が存在するって事だ。


 火柱が消える直前に足に力を込め、消えた瞬間に一気に体を前に押し出す。

 既に腕が振り上げれちゃいるが気にせず進み、股の間をスライディングで通り抜けた。


「一応確かめておくか」


 飛び跳ねて起き上がり、ビリワックが振り向く前に尻尾に向かって刃を振るえば少し潰れていたからか両断には至らず骨で止まってしまったが、最初の時みてぇに毛皮で防がれはしていない。


「はははっ! まさかの大当たり、俺様天才だな!」


 俺様が接近前に浮かべた今の姿の問題点の候補は消耗の激しさと仮面の野郎を巻き込まない為で最後の一つ、攻撃面の上昇の代わりに防御面に問題が出るってのを期待せずに浮かべていたんだがまさかの正解だ。


「神に感謝って所かっ! らぁ!」


「ぐおっ!?」


 尻尾から無理矢理刃を引き抜き、左足の膝裏辺り、関節によって肉が薄い場所を切り裂けばビリワックは膝を付いて悲鳴を上げる。


 だが……。


「ちっ! 本命の武器を持って来るんだったな」


 無理が過ぎたのか俺様が持ち込んだ剣の刃はボロボロ、切るのはこれ以上無理そうで、突くのを一回すれば完全に折れてしまいそうだ。


 一撃か……。


 首や心臓辺りも筋肉の膨張が凄まじいし、少しキツいな。

 なら、このままロノスでも来るのを待つか?



 いやいやいやいや、有り得ないだろ。

 ”友達なら助けて当然”とか言い出すタイプの彼奴だが、危ない時に助けられるの前提で戦うかよ。


「しっかりしろ! 俺様と彼奴は対等だろうがっ!」


 頼るのは良いが、頼る事を前提に動くのは気に入らない。

 彼奴と対等でいる為にゃそれじゃ駄目なんだ。


「ふん。何を叫んでいるかは知らないが、いい加減これで終わりにして差し上げましょう」


 ビリワックは一抱えもある巨大な岩を持ち上げ、頭の上に投げると同時に真上に向かって殴り飛ばす。

 砕け散る岩が広範囲に散らばり、落下を始める直前に真っ赤に染まった。


 まさか……。


 嫌な予感を覚え、それは目の前で的中する。


「げっ! おいおい、マジかよ……」


「これで死ね。人間如きが神獣に挑むからこうなるのだ」


 降り注ぐ石礫、その一つ一つから灼熱の火柱が四方八方に放たれた。


「防御魔法……無駄か」


 消される以前にもう俺様の魔力は残っちゃいねぇんだ。

 ”ヒノトリ”の発動に絞れるだけ絞り出し、さっきから使ってるのは全力で絞った雑巾に残った湿り気程度の残量の魔力。

 動いてどうにかなると必死にやってたが……もう終わりだな。




「情けない……」


 諦めて深く溜め息を吐き出した俺様の視界が赤に染まり、そして闇に閉ざされた……。


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