表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

231/393

恐らく彼には誉め言葉

総合千七百突破です 感謝

 ……ふう。

 今まで色々な方と関わって来た私ですが、此処まで無茶苦茶な人とは関わって来ていませんわ。


 周囲を見渡せばつい先程まで森だったとは思えない更地っぷり、多少の破片は残っていても木は根本からひっくり返されていますし、これだけの広範囲殲滅魔法を直前まで察知されずに放った事で伝説の存在であった光属性の規格外さが理解出来る。

 伝説で光属性を扱っていた聖女の末裔であるクヴァイル家の令嬢として厳しい訓練を受けた結果でしょうが、先程力が抜けた振りをして文句を言えない程度の雑さで私を取り落とした闇属性の彼女も魔法を極めればこの段階まで……いえ、個人の才覚の差があるので一概には言えないのでしょうが、先程の戦いを見る限りでは……ふむ。



 利用価値は充分、但しハイリスク、ですね。

 個人として関わりがある相手ならば話は変わるのでしょうが、正直言って闇属性への悪感情は並大抵の事では払拭されませんわ。




「それしても本当に助かりましたわ、リアス様。アリアさんも一緒に戦って思いましたが、私達は仲良くなれそうですわね」


 さて、そんなハイリスクな彼女ですが、ロノス様達が幾ら個人的に仲良くなるのを望んだとして、クヴァイル家が不利益でしかないと判断したならば今のような関係にはなって居ないはず。


 つまりは多少のリスクを無視しても引き入れる気でしょうし、その辺のリスクを勝手にどうにかして下さるならば私の選択肢は一つだけ。


「この機会ですし、本当にお友達になりませんこと? 互いに支え合えるそんな友人になりたいと思いますの」


 リスクが下がるならば迷う理由は無いでしょう?

 あの日、別に利益にならない事を無駄なリスク取ってまで行った結果が何もせずとも手に入った物を失いました。


 今回の事も多少ならばリスクは存在しますし、余計な事をしてしまったと後悔するやも知れないとは理解しながらも私は彼女に握手を求める。


 だって時にはリスクを犯さない事がリスクなりえるのですから。


「は、はい! お願いします……」


 私が差し出した手を慌てた様子で握り返す彼女ですが、嬉しそうなのは表面だけで目は笑っていませんでした。

 まあ、それは私も同じ事であり、別に上辺だけの友達関係こそを望んでいるのは伝わった方が都合が宜しくてよ。


 互いの利益の為に仲良くしましょうか、癪ですけれども。

 最後に笑えるのならば多少の不愉快は我慢して差し上げますわ。



「あっ、そうだ! 聞いてよ。私の腕輪が故障しているらしいのよ」


「……故障ですか?」


「大変じゃないですか!?」


 ゴリラ……ではなくリアス様が困り顔で見せて来た腕輪には何らかのトラブルが発生している様子は見られず赤く光って結構なポイントを稼いでいるのが見て取れますが、もし故障が本当ならば初日で彼女が脱落となりますが、クヴァイル家に入る予定の私からすれば彼女の経歴に傷が付くのは避けたいのですが……。



「いや、何か絡んで来た馬鹿をぶっ飛ばしたら其奴からポイント得ちゃったのよ。ほら、変でしょう?」


「えっと、それは……」


 故障じゃなくて仕様なのですが、その事には気が付いて無い事にしていますし、指摘しようにも出来ませんわね。


「あっ! さっき事故で戦いに巻き込んでしまった二人ですが……うわぁ」


「何とも……」


 どうやって話を逸らそうかと思っていた時にアリアさんが今思い出したって風に眼鏡とおデブのお二方について話を持って行きましたので一安心です。

 この機を逃さない為にと居た方向を見れば二人にも矢を当てないようにしたのか目立った怪我は御座いません。

 

 御座いませんのですが……。


「いや~、木の枝が無くなってから倒れている二人に気が付いてさ。ギリッギリで怪我はさせてないから大丈夫よね」


 穴だらけの地面に倒れる二人には確かに怪我は無いのだけれど、リアス様の目が泳いでいるのが事態を物語る。


「凄く愉快で痛快……ではなく色々と厄介な事になりましたわね」


 正直言って太った方の言動は同性の私でもイラッとする物でしたし、眼鏡の方は確かフルブラント家の跡継ぎな上に仕入れた情報ではアリアさんにお熱との事で、正直言って邪魔ですわ。


 ええ、明らかに無関心と僅かな不愉快を混ぜ合わせた感情を向けられていましたが、それでも貴族同士の婚姻って家が決める物ですもの。


 そんな二人は光の矢の回避が僅かに遅れたからか制服が殆ど吹っ飛んで見苦しい姿を晒しています。

 下着が残っているだけマシなのでしょうが、出来れば放置したいものですわね。


 この面倒事をどうすべきなのか悩む中、私は少し冷静になったからかリアス様が誰かを脇に抱えているのに気が付きました。



「あれ? まさかアカー先生ですの!?」


「まさか先生を攻撃しちゃったんですか!? ……じゃなくて、何かあったんですね?」


 今、本音が出ましたわね。

 って事は短い付き合いでそんな事をしでかす問題児だという認識になったのでしょうが、リアス様に特に気にした様子は無し、と……。


 本人の気性なのか仲が良いからなのか、私としては前者を望みますが、今は先生ですわね。

 一年生の学年主任であるマナフ・アカー、彼については事前調査の対象になる程の実力者だったと認識していますが……。



 長命なエルフの血が流れている事で見た目は十歳そこそこの子供であり、子供先生と弄るエルフ差別発言をする生徒も居ますけれど基本的には慕われている四十代妻子持ち、悩みは加齢臭を娘が嫌がる事……と、此処までは対して重要な物ではありませんでしたわね。

 

 問題は彼が複数の属性を使えるが、一つ一つの力は同じ才能で一つしか使えない時に比べて劣る複合属性の中でも異例である四属性を使え、更に言うならば一つ一つが一流以上。

 もし複合属性でなければどれだけの使い手になっていたのかと敵対勢力から恐れられる存在。


 ああ、熱心なリュキ信者であり、新米教師時代に女神の声を聞いたと騒いで変人扱いされた、そんなエピソードも有りましたわね。


「取り敢えず内臓とかに結構ダメージ負ってたみたいだから回復魔法は使ったけれど休ませた方が良いわよね」


「ええ、あの二人も一緒に連れて行きましょうか……」


 そんな先生が大怪我を負わされた、そんな事態にも関わらずリアス様は平然とした様子ですが、私は恐ろしいと思いつつもそれを何とか隠す。

 貴族たる者ならば……いえ、貴族でなくとも競合相手が居る立場に就いたのならば他者に弱みを見せるべからず、ですわ。


「人数が人数ですし先生も一緒に私の魔法でお運びしましょう。気を失っている時に襲われれば危険ですし、リアス様には周囲の警戒をお任せして……」


 先程の未知のモンスターもそうですし、一旦森から抜け出す必要があると思った私は流れでリアス様を護衛に出来るように働きかける。

 あくまでも自分が怖いからではなく、他者の為だと取り繕って。


 ……はあ。

 我ながら姑息な気がしますし、ロノス様には知られたくありませんわね。




「森を出る必要は無いぞ! 他者の為に己のポイントを省みないその仁義の筋肉見事なり! だが、戦えぬ者の保護は監督補助の役目。俺に任せて戦い続けて肉体の筋肉を鍛えるんだ!」


 そんな算段は真横から耳が痛い程の声量で叫ぶ男の善意によって打ち砕かれる。

 昼間も思いましたが暑苦しい印象を与える男ですわね、ニョル・ルート。


 彼の後ろには巨大な花が浮遊していて、彼が口にした義務とやらの結果なのか気を失った生徒達が花一つに一人乗せられていました。

 あのデブ二つ必要ですわね、絶対。


 いえ、三つかも……。


「という訳だ! 全部俺に任せて君達は戦うんだ! 心身と魔法の筋肉を鍛え強くなれ!」

 

もう! 邪魔しないで欲しいと思いますけれど、今は他にも言いたい事が。


「仁義の筋肉って一体……」


「伝わりにくいならば謝ろう! 俺が悪かった! 仁義の筋肉とは……仁義を大切にして貫いた結果、多くの者が自分を優先すべき時だろうが仁義を通せるようになった状態の事だ!」


 分かり難いにも程がありましてよ!?

 いや、分かる気もしますが、分かったらお終いだという気もしますわね。

 ……分からないままでいましょう


 彼は腕組みをし、空気が震える程の大声で叫びますが、これだけ騒いだらモンスターを呼び寄せるのではなくって?


「……何か頭の中まで筋肉っぽい奴ね」。


 そんな時、リアス様の口から漏れた共通認識に私とアリアさんは固まります。

 私は何とか言葉を飲み込みましたのですが……。


「え……」


 おっと、アリアさんの失言二つ目。

 ブーメラン発言だと気が付いたのは当然ですが、口に出すべきではありませんのに。


……彼女は私と同類ですが、どうも所々甘い所が見受けられ、私はそれを親しみを持った相手だからこそと判断した。


 情は大切な原動力ですが、時に命取りとなる物。

 ふふふ、これは利用する為の材料になりますわね。



 表情に出さずにほくそ笑んだ時、一人の生徒に気が付く。



「その彼、ほっぺに手形がついていません?」


「うむ! パートナーで婚約者が居る女性とをしつこく口説いてビンタを喰らってな! 技も肉体も良い筋肉だからか一撃で気絶したぞ! 彼女は一人で戦うそうだ!」


 あら、こんなタイミングでなんて運が悪いですわね、その方。


 アクセサリーをジャラジャラと身に着け、気絶している状態でも軽薄さが透けて見える男には見覚えがあった。

 昼間は女生徒を侍らせて酒を飲んで大騒ぎしていた男であり、羽振りが良い風に装ってはいるが実際はヴァティ商会への支払いが滞っている家の三男だった筈。


 主要産業だった銀山が枯渇しても贅沢が忘れられずに浪費を続ける愚かな一族でしたが、商会の一員として接した時にしつこく口説かれたのを覚えていますわ。

 

 そんなのと組まされるなんて一体誰なのでしょうね。





「あれ? 其奴ってチェルシーの……」

漫画来るまでにどれだけのばせるかなあ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ