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想いは届く(但し相手は受け取り拒否可能)

マンガ以外に絵も発注 短編も偶に書いてます

 俺はアンダイン、アンダイン・フルブラントだ。

 アース王国の貴族の一人であり、アザエル学園新入生の中では上位の実力者だと自負している。


 む? 上位は上位でも越えられない壁の先に何人も居るギリギリ上位だろう? 眼鏡が本体の男だというのを忘れている?

 妙な事を言うな。

 確かに眼鏡は掛けているが、戦闘で割れた時のために幾つもの眼鏡を持っている俺は本体が幾つも存在する事になるじゃないか。


 まあ、呪いなのかって頻度で眼鏡が割れるのは困った物だが。

 どうして腹に食らった時も眼鏡が割れるんだ?




「くっ! こんな事ならあの時に……」


 さて、突然だが俺には後悔している事が幾つか存在するんだ

 勿論貴族である以上は領民や家臣に関わる判断を迫られるし、常に正解を引きたいと思っていても、不正解を選んでしまったり、そもそも迫られた選択肢に正解が存在しない時もあるだろう。


 だが、今抱いている後悔は貴族としてよりもアンダイン個人としての物だった。



「ねぇん、アンダイン様ぁん。メター怖いぃん」


「そ、そうか。それはそうとして動きにくいから離れてくれるかい? ボリックさん」


「メターって呼んで欲しいですわぁ」


 今最も切実な後悔はパートナー決めのクジで今隣にいる彼女を引き当ててしまった事だ。

 女性に対して失礼だとは思うが、まるでボールに頭と手足を付けたみたいな体型の些か……いや、かなり太っている彼女の名はメター・ボリック。

 畜産品を主に貿易品にしているボリック家の令嬢で、俺の家とボリック家は懇意にしている事もあって知り合いではあるのだが、どうも彼女からは強烈なアピールを受けている。


「俺には婚約者も居る事だし、あまりベタベタされるのも……」


「あら、魔女と仲良くしようとしているのにメターとは駄目なんて泣いちゃうぅぅ」


 ……これだ、これが苦手なんだ。

 別段太っている女性がとっては駄目な態度だとは言わないが、彼女は昔から妙に自分に自信がある上にぶりっ子って呼ばれるタイプ。

 今だって粘着質な声を出しながらくっついて来ているし、夜に食べたらしい肉の脂やニンニクの臭いと香水のドギツイ臭いが混ざって鼻がもげそうだ。


「メターは世界一の美少女でモッテモテだけれどぉ、アンダイン様が相手なら側室になって良いなぁ」


 人差し指で俺の胸の辺りをグリグリしながら出す猫撫で声に背筋がゾッとした。

 彼女の父親には世話になっているし、兄は友人だから邪険に扱えないのだが、俺はどうすれば良いんだ。


 だって俺はアリアさんが好きなのに……。



 彼女に関わる事が抱える後悔の一つであり、今現在の悩みは現在進行形で影響を受けているクジについてだが、大きさを比べればこっちに傾く。


 あの日、俺は混乱を招く存在であると何も知らないのに彼女に他者との関わりを控えさせようとし、その結果決闘に発展、惨敗した。


 一度負けた(まあ、クヴァイル家の令嬢一人にだが)後、見方を変えて彼女の事を考えると胸が高鳴るのを感じ、恋であると察した。


 ……何度か馬車で送り、その道中に話をしているから今の印象はそれ程悪くはないと思うのだが、クヴァイル家の令嬢が俺から彼女を庇った事で関わるようになったロノス・クヴァイルとアリアさんの仲を見ていると、俺の出方次第では彼女の隣に居るのは俺だった可能性を感じてしまう。


 ああ、アリアさん、好きだ。

 周囲から虐げられて来ただろうに明るい笑顔を絶やさず太陽のような心を持つ貴女に俺は心惹かれています。

 貴女の為なら、俺は全てを投げ出してでも……。


 今は家柄を気にしてか俺を家名でしか呼んでくれないし、ロノス・クヴァイルと接する時間が多くて言葉を交わす時間も少ないが、何時の日か名前で呼び合える日が来ると俺は信じているんだ。



「あっ、虫! メター、虫怖~い!」


「がふっ!?」


 その鈍重そうな見た目からは予想不可能な動きで抱き付かれた瞬間、衝撃で俺の眼鏡は砕け散った。

 ……新しいのを出さなくては……。


「てへっ! 壊しちゃったあ、ごめんなさ~い。お詫びにぃ、メターが掛けて……あ・げ・る」


「ちょっ!? レンズに触っているっ! 何か凄く油が付いてるのだがっ!? そして何故眼鏡を掛けるだけなのに唇を突き出しながら顔を寄せているんだ、君は!?」


「えへ! 少しはしたないけれどお、メターのファーストキスをプレゼントォ」


「いや、俺もキスは未だ誰とも……」


「なら、交換交換。アンダイン様のぉ……初めて貰いまーす!」


 ああ、本当に俺はあのクジを選んでしまったんだっ!?

 最後まで悩んだ片方はアリアさんとパートナーになれる奴だったかも知れないのに。




 油まみれの指でレンズに触れながら眼鏡を掛けるまでは我慢したが、肩を掴んでテカテカ光る顔を近寄らされるのには心の底から恐怖した。



 だ、誰か! 誰か助けて下さい!





「……うわあ」


「うわあ……」


 今回の夜間ハンティングだけれど私と隣の女は隠されたルールに気が付いていた。

 先生が言ったのは”ポイントを持ってる相手を倒せばポイントが手に入る”、つまりはモンスターやゴーレムだけでなく、それらを倒して手に入れたポイントを同じ生徒から奪えるのだ。


 ……正直言って私だけならば夏休み明けに恨みを残したままになる事態は避けたいが、今は私だけではない。

 要するに下級貴族の私では皇女の提案に異を唱えられない、そんな所だ。


 そして、既に時間がそれなりに経過しているし、ポイントを貯めた所を横から奪おうとなりはした。

 これがその時の会話だ。


 尚、互いに遠回しに相手がルールを理解しているのは確かめている。


「流れ弾で他の生徒を巻き込んでしまったら大変ですよね。特にゴーレムなんて倒したら土に戻りますし、近くで戦っていた証明は難しいですし」


 要約・ゴーレムと戦っていた事にすればわざと狙った訳ではないと言い訳になるよね。


「まあ、それで相手が気絶した場合、後で誰が誰を攻撃したかなどは学園側が公表しないでしょうから禍根は残りにくいでしょうが、広範囲の魔法は巻き込んでしまう可能性が高そうですわね」


 要約・こっちの姿を見られる前に気絶させれば万事解決だから広範囲の魔法で狩ろう。


「夜の森ですから視界も危ういですしね」


「ええ、事故が起きやすいでしょう」


 薄々感じていた事だが、ネーシャは私と似ている所がある。

 表面は明るく愛想が良い人物を演じているが、内面は全くの別物という所だ。



 取り敢えず今この時だけの同盟を結んだ私達が最初に発見した獲物……もとい生徒は妙に猫撫で声を煩わしいレベルで使っている首が顔の肉に埋まって見えない女子生徒と、それに抱きつかれている眼鏡。

 片方は体が丸く、もう片方は眼鏡が丸いからお似合いのカップルだろう。


 ……ちょっと見ていて鬱陶しい感じがしたので変な声は出たけれど。



「彼は……」


 付きまとって来る鬱陶しいストーカーで、フルブラント家という大きい家柄だから面倒な相手で、名前は……ア、ア、アイライン? 


 確かそんな名前だったと記憶している。

 出来れば一切したくないのだが……。

総合千六百五十突破 このまま千七百行けそう  二千行きたい

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