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ゴリラの兄が非力だとでも?

応援待ってます

「此奴は一体……。話で聞いたのと似ているが知っているか?」


 突然現れたモンスターにルクスからは戸惑いの声が漏れた。

 どうやら彼が今言った一件、リアスに因縁を付けて決闘になり、秒殺で気絶させられた後に襲って来た神獣”リザードマン・ホーリーナイト”と特徴が酷似しているし、色々と気になったのかモンスターについて調べているって聞きはしているから、だからこそ図鑑に載っていない相手に動揺しているとは分かるんだけれど……。


「ボサッとしない! 此奴等、毒を持っているだろうからね!」


 リアスやアリアさんから聞いた神獣の特徴は武装したリザードマンだけれど、目の前の連中は武装の代わりに前足の爪が細長く先端が尖っている。

 それだけじゃなく全体的に流線型の体格であり、尻尾は胴体と同じ程の長さの上に先端が鋭利な上に爪共々先が色が違っていた。


 体色もも夜闇に紛れるし、まるで暗殺者だな……」


 ゲーム画面にこの連中が登場したかどうかは不明、覚えていない。 

 あー、こんな事なら画面をしっかり見ていれば……いや、ゲーム世界に生まれ変わることを想定する八歳児とか普通は居ないか。

 居たとしても姉がやってる乙女ゲームじゃなくって自分がやってるゲームだ。


 取り敢えず暫定的に命名すると”リザード・アサシン”だな、何となく。


「シャァアッ!!」


 知能が足りないのか喉の構造の問題なのか、体の作り自体は人間に似ているけれどリザード・アサシンの口から漏れたのは獣の鳴き声。 

 三匹同時に前から飛びかかるけれど邪魔にはなっていないから意志疎通は取れて居るのかな?

 激しく振るわれる爪を避けながら観察すれば先端から僅かに刺激臭が漂い、枝葉の間を通り抜ける時に摩擦を避ける為にか粘液みたいな物が体を覆っている。


「おっと」


 地面スレスレからすくい上げる様に迫った尻尾が僕の背後に回り込んで首を狙って来たのを片手で掴めば僅かに感じるヒリヒリ感。

 あー、これは粘液自体に毒があるな。


「ルクスー。其奴に触ったら毒を受けるから注意して。毒の訓練受けていないと動けなくなるよ、多分」


「言われるまでもない。俺に指図するな」


「はいはい、そうですか」


 リザード・アサシンの振るう爪を両手に持った剣で防ぐルクスだけれど、放置していても大丈夫かな?

 ……叔母上様関連で僕も嫌われて居るし、将来的に彼が王になった後を考えれば……正直此処で何かあっても構わない。

 でもまあ、その場合はアリアさんが拒否を許さずに王族にされて望まない結婚をさせられる可能性が高いのか。

 貴族なら仕方無い話だけれど何か嫌だ。

 彼女の想いに応えるって決めた訳じゃ無いのに勝手な話だけれどさ。


「……もう良いや。そろそろ死になよ」


 ルクスを見れば拮抗状態だし、伏兵が居たらと思って三匹相手にグダグダ時間を掛けて戦ったけれど、僕に悟られずに潜んでいるにしても参戦してくる気配も無い。

 何も居ないのに背中をお留守にする必要は無いな。


「ギッ!」


「五月蝿いから黙れ。いや、もう黙らせる」


 粘液で滑りやすい尻尾を動かして僕の手を外そうとするリザード・アサシン。

 だが、僕は握った場所が変形する程の力を込めた。

 激痛からか悲鳴を上げた其奴を力任せに振り回して叩き付ける事で二匹と距離を取った。

 粘液で接触のダメージは多少減退したみたいだけれど、武器にし一匹は流石に動けない程のダメージなのか暴れない。


 じゃあ楽にしてやろう。

 大丈夫、直ぐに仲間もやって来るさ。



 虫の息のリザード・アサシンを地面に叩き付けるなり逃がさないように胸を踏みつける。

 肋骨が砕ける感触が伝わる中、尻尾と爪が僕に届くよりも前に頭を刃で貫いた。


 その瞬間、柄から強い抗議の念が送られる。


 え? 突くんじゃなくって斬れって?


 明烏からの抗議を痛みとして感じつつ引き抜けば、仲間の死を構う事無く二匹が左右から迫っていた。

 片方に背中を晒す事を気にせず右のリザード・アサシンへと迫り、そのまま首を跳ねると同時に振り向き、三匹目の脳天から股まで大上段の一撃で両断する。

 左右に分かれて崩れる死体から溢れ出る血を避ける為に飛べば足元の草がしおれて行くのが見えた。


「血にも毒が含まれているのか……」


 此処まで毒だらけならリザード・アサシンじゃなくって”ポイズンリザードマン”の方がピッタリかな?

 そんな風に無駄な事を考えながら視線を向ければルクスが絶賛ピンチ真っ最中。


「くっ!」


「シャシャアアアっ!」


 爪は二本の剣で防いでいるけれど片膝を折り、真上から押し込まれそうになっている状態だ。

 そして勿論彼が相手をしているリザード・アサシンにも尻尾がある。

 僕が相手をしていたのと違って使っていなかったのかルクスが意識している様子は見られず、背中でタイミングを今か今かと伺うように動いていた。


 ……仕方無いから助けるか。

 助けたらお礼じゃなく手を出した事への文句が返って来そうだけれど手出しの為に彼の方に足を踏み出し、背中に向けて飛ばされた無数の毒牙をバク宙で避ける。

 首を切られ地面に転がったリザード・アサシンの目に驚愕の色が浮かんで見えた。


「首を跳ねられた怒りかな? 殺気が漏れていたよ。まあ、飛ばしてからでも気が付いて避けられただろうけれど」


 まさか首だけになっても牙を飛ばす位は出来るだなんて驚きだけれど、人間だってギロチン後に少しだけ生きているって聞いた事があるから神獣なら当然なのかな?

 ゴキブリだって頭潰されても餓死するまで生きているって何処かで……うん、あれについて考えるのは止そう。


「へい、パース!」


 声を掛ける事で此方に意識を向けさせ、ルクスに迫った尻尾を弾く……その筈だったんだけれど、木々の隙間を縫って飛んで来た鎖付きのハンマーがリザード・アサシンの頭部に命中し、横倒しにさせる。


「がっ!?」


「あっ」


 その結果……うん。


 蹴り飛ばした頭はぶつける筈だった尻尾が進路から消えた事でそのまま直進、リザード・アサシンに集中していたルクスの脇腹に命中してしまったんだ。

 仮にも神獣であろうリザード・アサシンの攻撃を弾く威力の一撃だ、そりゃ結構重いし、そんなのを脇腹に食らったルクスは衝撃で気を失ってしまった。




「……あー、もしかして余計な真似をしてしまったか? もしそうなら悪かった、謝罪しよう」


「れ、連帯責任って所かな? まあ、事故みたいな物だけれど、どうしようか? アンリ」


 木の枝をかき分けてこっちに近付いて来るアンリは凄く気まずそう。

 これは全部察してるな。


 しかし、本当にどうしようか……?


 気を失っているルクスに目立った外傷は見当たらない事を確認しながら悩む。

 これ、安全な場所まで連れて行くべきかな?

 ……べきだよね。


「……仕方無い、背負うか」


「僕も一緒に行こう。……ちょっと僕のパートナーも張り切りすぎたらしくてな。ゴリラネコの群れに正面から挑んでこのざまだ。まったく呆れるな。勇敢と無謀は別物だというのに……」


 見ればアンリは氷の台車に気絶した男子生徒を乗せている。

 こっちも命に別状は見られないけれど、防具や顔がボッコボコにされているし、安全な場所で休ませた方が良いだろう。



 ……いや、そもそもハンティングを続けるべきなのか?


「アンリ、ちょっと見慣れないモンスターに襲われたんだ。ルクスが一対一で手間取る強さなんだけれど、君から見て一匹相手に……いや、複数相手にして無事で済みそうな生徒は何人居ると思う?」


「彼が苦戦する程度なら……僕と君以外じゃリアスとアリア、チェルシーにギリギリでフリートじゃないか?」


「……だよね。どう意見だ。此処は先生に言って今すぐに……」


 マナフ先生が森全体を見張っていそうな場所は森の端にある崖だろう。

 早速向かおうと思った時、崖の一部が音を立てて崩れ、死角になっていて見えにくいが誰かが落ちていくのを僕は目にする。



 その直ぐ後、高速で接近するリアスによって崖は完全に崩壊した。


「うわぁ……」

 


 

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