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俺様フラフープの戦い

新章!

 同じ王国の貴族っつって戦いの時のスタイルは家によって大きく違う

 まあ、全部部下に投げ出して屋敷でガタガタ震えていた癖に、勝ったなら自分の手柄だと誇る糞じゃなけりゃ別に良いんじゃねーの?

 戦えないなら内政だの外交だの物資をどうこうするとか働き方は色々あるんだしよ。


 後方で指揮をするのも軍師として策を考えるのも其奴の得意分野を活かすなら正解だろうし、何も先陣切って勇ましく突撃するだけが貴族の戦いじゃねぇんだ。

 だから貴族の中には接近戦か魔法での遠距離戦のどっちかしか得意じゃ無いって奴も居るし、俺様が両方得意だからってそんな連中を見下しもしねぇ。

 俺様の家じゃ大将の役目は前線指揮官だって事だけなんだからな。


 ……だからまあ、弱い奴が居ても仕方無い。

 でもよ……。



「いや、幾ら何でも弱過ぎだろ。戦闘の授業があるって事は貴族なら少しは戦えないといけねぇって事だろうによ」


 モンスターを倒してポイントを稼ぐ今回のハンティング、俺様のパートナーは正直言ってハズレだった。

 夜中に行事があるから休んでろって言われてたのに、大丈夫だろうと昼間っから遊び呆けていたのか眠そうにしている上に酒臭ぇ。


「大丈夫だいじょーぶ! 私がお守りしましゅよぉ、ひっく!」


 こんな風にろれつが回っていない状態でフラフラしながら半分寝た状態でモンスターに向かって行くし、仕方無ぇから俺様が守ってやりながら戦ってたんだが、流石に体力より精神に来るぜ、こりゃ……。


 まあ、その挙げ句に木の上から落ちてきたヤマタノイモムシの下敷きになってゲロ吐きながら気絶してやがるし、ポイント数を基準に達成するのが各自で良いなら嬉しいんだが、組む以上は二人揃ってだよな。


「……ど派手に魔法を使えたら良いのによ」


ヤマタノイモムシの頭の一つを切り飛ばすんだが、他の頭が残っている限りは動く上に、地面に落ちた頭ものたうち回って気持ち悪ぃ。


 気絶したゲロまみれの介抱を後でやって、起こした後はポイント稼ぎを手伝って、考えるだけで疲れてくるな、おい。

 しかも森の中じゃ俺様が得意な火属性の魔法は殆ど使えねぇ。

 自分は水属性だから大丈夫だの何だの言って来たパートナーは使い物にならねぇし、このままじゃ共倒れで俺様も家に帰る事になっちまう。


「ざっけんな! 未だチェルシーと遊んでねぇんだよ!」


 一日目は夜中に行事があるからって海でのデートが出来てねぇんだし、こんな所で終わって堪るか、ボケ!


「この程度なら大丈夫だろ! ”バーニングフィスト”!」


 何処かの馬鹿じゃあるめぇし、俺様はちゃんと周囲の被害を気にして戦う。

 俺様の右腕に炎が灯り、このまま殴り飛ばせば燃えた状態で飛んで行っちまうから、俺様が選ぶのは……。


「潰れやがれぇえええええっ!!」


 俺様に向かって残った頭が向けられる中、跳躍で避けた勢いそのまま大きく体を捻り、全力で振り下ろす!

 前後左右と上が駄目なら下に向かって殴るだけだよなぁ!


 陥没する地面、燃えながら崩れていくヤマタノイモムシ。

 さて、後は土でも掛けて消せば……ちぃっ!


「おいおい、不意打ちたぁ上等じゃねぇか、糞野郎」


 咄嗟に伏せた俺様の頭があった場所を通り過ぎる強靭な脚による回し蹴り。

 伏せた体制のまま軸足に水面蹴りを叩き込もうとするが軽快な動きで避けられる。

 それでも距離が開いたからと構える余裕が生まれた俺様だが、相手の姿を目にして舌打ちをしてしまった。


「おいおい、”無頼カン”じゃねーかよ。こんな所で棲んでるなよ、馬鹿野郎が」


 一見するとカンガルーだが、脚は前後揃って筋肉と骨が膨張していて金属製の防具でも着けているかのよう。

 その上、強く握った前脚には三つ横に並んだ突起。


 俺様が生まれるよりもずっと昔、当時から既に敵対していた桃幻郷の連中が兵器として持ち込んだモンスターであり、大規模な掃討作戦で片付けた筈だってのに各地に生き残りの子孫が居る。

 目の前の此奴もその内の一匹なんだろうが、こんな時に出て来るなよな。


 この無頼カン、大昔に先祖が教え込まれた武術を子供に教え込むって厄介な習性を持っているらしく、気絶している奴を守りながら戦うのは面倒な相手だ。


「まっ、しゃーねーな。来いよ、糞野郎。俺様が相手だ」


 守るのが面倒な奴が居ようが、厄介な敵だろうが、守りながら戦わなくちゃいけねぇのを投げ出せるかよ。

 そんな事をしちまったら俺様は俺様じゃなくなる。


「どんな相手だろうが臆さず立ち向かう。それが俺様、フリート様だ!」


「……キュ」


「あっ? その腹の袋がどーしたよ?」


 何処か不満そうな鳴き声を出しながら腹の袋を摘まむ無頼カンだが、それがどうしたってんだ?

 餓鬼は入ってねぇみたいだから、襲って来た癖に腹を攻撃するなって言ってる訳でも……成る程ね」


「”野郎”じゃないって事かよ。細かい奴だな、テメェ」


「キュ!」


 だったら糞女郎とか言ってりゃ良かったってか?

 つーかモンスターに言葉を正される俺様って……。


「……取り敢えず死ね!」


「キュ!」


 地面が爆ぜる程の勢いの踏み込みによるストレートを無頼カンの頭部に放てば、向こうは渾身の右フック……と見せかけたローキック。

 ぐっ! 足の骨に響く一撃に俺様の体勢が崩れ、すかさずラッシュが叩き込まれた。

 前足に生えた突起を食らえば体中穴だらけだ、当然剣の腹で受け止めるがラッシュは一向に止まず、俺様がジリジリ押し込まれる間も激しさを増すばかりだ。


 俺様は実は数度無頼カンとタイマン張って倒した事があるんだが、此奴はその中でも頭二つ三つ抜きん出ている。


「……はっ! 上等上等! 良いぜ、もっと来いよ!」


 つまりは此奴を乗り越えれば俺様も一気に強くなるってこったな!


「さあ! 来いや! ……へ?」





 次の瞬間、巨大な何かが木をへし折りながら飛んで来るのを察し、咄嗟に後ろに跳んだ俺様が居た場所の側を通常の四倍近い大きさの猪が通り過ぎた。

 無頼カンは間に合わずに跳ね飛ばされたらしく、そのまま飛んできた物体と大きな岩に挟まれて口から内臓を飛び出させてお陀仏だ。


 いや、今って俺様の見せ場だし、此処から熱い戦いが始まる筈じゃ……。


「一体何が飛んで来たんだ? 猪……だよな?」


 毛皮が金属っぽいしメタルボア、それも青銅や鉛より上の鋼鉄の毛皮を持つフルメタルボアじゃねぇか。


「俺様を狙った横入りって訳じゃねぇな」


 岩に弾かれた勢いで地面に突き刺さって漸く止まったメタルボアは突進じゃなく、尻尾の方向にぶっ飛んで来た。


「額が陥没してやがるし、考え無しの馬鹿が吹っ飛ばしたな、こりゃ」


 一体誰の仕業なのか、考えるまでもなく分かっていて、飛んで来た方向を見るまでもなかった。



「あの馬鹿、少しは兄貴を見習えっての……」

応援待ってます


発注した4p漫画完成まで幾らのばせるかな? 

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