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同類

短編 案は浮かんだが


魔王や勇者を派遣する会社の話 ゲームあるあるをからめたい

 問題です。露天風呂に入浴中にタオルで体を隠した女友達が羞恥心でギリギリの状態で姿を見せました。この場合どうするべきでしょう?


 ①・一緒に入る


 ②・出て行って貰う


 ③・自分が出て行く


 ④・この状態で対応


 僕が魔法で自分を加速させる時、無意識の内に肉体と頭に力を振り分けている。じゃないと身体に思考が追い付かず、自分の速度に振り回されて自爆のバーゲンセールの開催だ。でも、この時の僕は瞬時に頭にだけ力を注いで加速させた。立ち上る湯気も僕の肌から滴る水滴も酷くスローに見える中、この状況の判断を慌てて進める。


 考えろ。そもそもアンリは何をしに僕が入っている所にやって来た? 湯加減を聞いたって事は自分も入る気だとして、タオルを巻いているんだから僕が入っているのを前提に来たんだよね? 彼女が普段からタオル巻いて浴室に入るのなら別だけれど。 



 じゃあ、何故来たのかって考えた時、頭に浮かんだのは三人だ。


 メイド長の目を盗んで僕の入浴中に侵入、身体を隠す事を一切せずに背中を流そうと提案し、最後はメイド長に連行される乳母兄弟のレナ。


 ”能力を知っている者が能力について忘れている時に初めて触れて血を垂らす”って無茶苦茶難易度が高い条件を満たせば契約してくれる妖刀の夜鶴。最近肉体関係を持った。


 そして僕のトラウマのシロノ。自分を倒した僕を本能から性的に狙い、入浴中に襲おうとした結果、マオ・ニュによって瀕死の重傷を負った。



 ……違うな。うん、アンリと三人は別物だ。



 だってアンリに僕を誘惑する理由なんて存在しない。彼女の家は軍門の名家で、何かあれば情報が入って来るから実は窮してる筈もないし。なら何故かと考えた場合、一つだけ思い当たった。


「温泉で泳ぐのはどうかと思うよ? まあ、アカー先生が居るから海で練習は難しいけれどさ」


「むっ。流石は親友にしてライバル、この程度の事はお見通しか。ああ、君の予想通りだよ」


 アンリは一瞬だけ驚いた後で納得し、バスタオルを外す。その下には僕が見抜いた通りの女の子用の水着。ピンクでフリルが付いた上下に分かれているタイプなんだけれど、アンリは身長は小さいんだけれど胸の大きさは並以上だからか上が少しキツそうだ。


 そっか、予想的中か。いや、少~しだけ期待しただけだからか。親睦を深める為って言いながらバスタオル巻いた状態で混浴とかさ。


「おや、僕の裸でも期待したのか? 嫁入り前の娘だぞ、僕は」


「嫁入り前の娘が男が入ってる風呂場に来るのが共和国の普通かい?」


「いや、そんな事は無い。誤解するな。からかったのは謝るから」



 まあ、それは忘れるとして、僕が気が付いた理由は彼女が本来したいと望む服装が男装じゃなく女の子らしい物だからだ。愚痴を聞いたり相談に乗ったりする僕だけれど他国の親戚でもない家の掟について口は出せないし、こっそり女物を着せて街を散策なんて真似も互いの家の間で起きる問題を考えて二人とも却下。

 

 そういう勝手な過干渉って”伝統を軽視された”って怒らせるから本当に厄介な事になるんだよね。面子、大切。


 だから僕以外の誰の目にも入らない場所でこっそり着たかったんじゃないかなって思い、泳ぎの練習ついでに着てみたんじゃないのかな? 



「似合ってるよ、可愛い可愛い。アンリは自分の体を女の子らしくないって思っているみたいだけれど、僕はそうは思わないよ。君にとって重要な事だから”言いたい奴には言わせておけ”なんて安易には言えないけれど、僕にとって君は親友でライバルな可愛い女の子だよ」


「ふっ。その言葉で僕は救われるよ。……あ~、でも親友かつライバルとして忠告しよう。ロノス、誉め言葉にも注意しないと何時か刺されるぞ。痴情のもつれとかで」


「……それ、フリートにも言われた事がある」


 うーん、二人揃って呆れ顔なんて酷い。僕ってそんなに暗殺されそうに見えるの?


「そうか。なら今後は注意しろ。……ほら、悪いが練習に付き合ってくれ。この水着で泳ぎたいがそうはいかないし今日だけはマナー違反を許して欲しい」


 僕の言葉にアンリは嬉しそうに笑うけれど照れた様子は無いし、僕が何を言うのか予想していたらしい。その上で言って貰えたのが嬉しかったみたいだけれどさ。そして何人目かからの似た忠告と共に男用の水着を投げ寄越した彼女は後ろを向く。あっ、そういえば僕って真っ裸のままだ。……アンリの角度から見えてないよね?


 少し心配しながらも水着を穿く。僕の荷物から出すのは気が引けたからアンリが持って来たんだろうけれど大きさはこれで良いや。



「さてと、何処まで上達出来るかな?」


「僕だって一日で完璧に泳げるとは思っていないさ。浅い所で適当に泳いで直ぐに飽きた事にすれば良い。今後は……まあ、泳げない事を口五月蠅い叔父上に知られないようにこっそり練習するさ」


「家のお風呂場で?」


 僕の所じゃ絶対に無理だな。リアスなんて小さい頃に入浴の世話をするメイドの注意を聞かずに泳いだせいでメイド長にこっぴどく叱られてたっけ。


 ”私は二度とお風呂で泳ぎません”って反省文まで書かされてさ。メイド長ってあの頃から変わってないんだよね、恐さも見た目も。・・・・・・”エイジングケアの賜物です”って言っていたけれど、凄くお金が稼げそうだ。本当に何者なんだろう、彼女。


「……前にそれをやって怒られた」


 ああ、成る程。アンリの所にも怖い使用人が居るって事か。僕の所のメイド長も恐ろしいし、彼女とは何かと共通点が多いね。


「ばあやが口煩くてな。僕どころか父上のオムツを替えてた人だから逆らえなくて困る」


 ああ、そんな事を聞いた覚えが有るな。メイド長もそうだけれど、長く仕えてると役職以上に力を持ったりするからね。頼れるなら良いけれどさ。


 他にも聞いた話じゃ……。



「ねぇ、君の所って弟が生まれたんだって?」


「ああ、凄く可愛い子がな。叶うなら一日中一緒に居たい位さ」


 弟の話をする時のアンリは凄く嬉しそうで、将来的にブラコンになりそうな気がしないでもない。本当は女の子として生きたい彼女からすればもう少し早く生まれてくれたらって思いそうだけれど、そんな様子すら無かった。もうヒージャ家の一員として軍での未来が約束されている今じゃ長男が生まれたからって今までの全てを無かった事には出来ないだろうし、複雑な気持ちになりそうなのにさ。



「……君を見ていれば言いたい事は大体分かるけれど、僕は平気だから安心してくれ。生まれる前には少し複雑な部分も有ったのは認めるが、弟の顔を実際に見た瞬間に全部吹っ飛んだ。あの子は僕の宝物だ。君だって妹が居るんだから分かるだろう?」


「うん、納得。そりゃ一切の悩みとか複雑な気持ちが消え失せて当然だ。だって可愛いし。リアスは未来永劫世界一……っと、こんな話題は揉め事の元だから心に仕舞っておこう」


「そうだな。僕も弟に対して同じ気持ちだし、ブラコンとシスコンの対決になってしまう。では、そろそろ本当に頼む」


 猫と犬のどっちが好きかって争いみたいに互いの意見を曲げられない対決をアンリと行う気は無い。まあ、僕は鳥派だし、ポチは下半身が猫科なので猫派といえば猫派なんだけれど、今はアンリの泳ぎを優先しよう。



「それにしても今の状況って……」


 時刻はお昼過ぎ、夕刻にまで少しだけ時間がある時刻。アカー先生は離れた場所で仕事中だから周囲に誰も居ないログハウスの露天風呂に水着の若い男女が二人きり。この状況って……。



「泳ぎの練習には最適だね」


「だろう? ……うん。流石に入って行く時は頼み事の内容が内容なだけに風呂で泳ぐ不作法とかに照れたのだが、君と一緒なら安心して練習が出来るな。この水着も無駄にならなくて助かった」


 え? こんな状況で安心されている事に少し男として傷付かないのかって? 襲われる心配をされる事で満たされるプライドなんて捨てちゃえば良いと思うよ、僕はさ。



「じゃあ、先ずはバタ足の練習からね」


「あ、ああ……」


 僕は彼女が泳げないのは知っているけれど、どんなレベルなのかは知らないから少し不安だけれど、彼女って運動神経良いから直ぐに泳げるだろう。さて、いったいどの程度までなら大丈夫なのかな?

応援宜しくお願いします  絵が欲しい 株が上がったらだな

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