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知らない自分

「へえ。以外と広いんだね。それに結構お洒落で……」


 サーカスの第三演目の途中で抜け出した私達。事前に部屋を取っていたので難無く入れた宿……連れ込み宿の一室でロノスさんは珍しそうにキョロキョロしていた。私もチラッと見るけれど、今まで読んだ本通りの内装。多少豪華だが予想の範囲内。内容は同じでも、質は全然違うけれども。


 安宿かと思いきや結構な値段を取るだけあってベッドはフカフカでシャワー室まで広くて清潔。確か読んだ本によればお湯を自動で沸かす魔法の道具で結構な値段がするらしい。広いし、二人で余裕で入れる、いや、そもそも二人で浴びる物なのか。


「透けてる……」


 そして一面ガラス張り。この前、水浴びの所にロノスさんがやって来たけれど、脱ぐ所とかを見られるのを想像すると少し恥ずかしい。矢張り彼とそういう展開になった時は密着して脱がして貰うのが得策だろうか?


 ああ、それにしてもシャワー室を眺めていると体が汗ばんだ気がする。夏だから暑いし、人混みを歩いたし、デートで緊張もしていた。汗がベタベタで気持ち悪い。まるであの眼鏡に好意をアピールされている時みたいだ。


 私は大丈夫だろうか? 実は鬱陶しいとでも思われていたら死にたくなる。彼に嫌われたら私が生きる意味は無いのだし。


「にしても此処に来れば良いって言われはしたんだけれど、その先をどうすれば良いかは言われてないんだよね。行動制限は受けていないから部屋で居れば良いんだろうけれどさ」


「じゃあ少しゆっくりしましょう。戦いになる可能性が高いでしょうし、リラックスしませんか? 変に気を張って……って、ロノスさんは私より戦闘経験が豊富でした」


 言うまでもない、という奴だ。私も面倒で危ない仕事を任されはしたけれど、彼とは比べ物にならないだろう。何を生意気な事をって思われないか心配だが、私が惚れた彼はそんな事を気にする様子も見せない。


「ルームサービスもあるし何か飲み物も頼もうか。勿論僕が奢るよ。好きなのを頼んで」


「じゃあ……」


 ベッドに座り込んだロノスさんの隣に座ってメニューを開く。戦いになるのなら満腹は厳禁だけれど喉は渇いているし、でも、流石にお酒は駄目。酔った勢いで”ロノスさんが食べたいです”とでも言って押し倒すのも悪くないけれど、事態が事態だから空気を読もう。


 適当に選んだ飲み物を受け取り喉を潤す。ポチが居るし、家の仕事で出たなら関係する貴族の屋敷や別荘に泊まるだろうから宿屋が珍しいって様子のロノスさんも時間が経てば落ち着いたのかキョロキョロしていないけれど、不自然な位に視線を向けないのはシャワー室だ。


 ちょっと意識してる? 水浴びの姿は見られているし、シャワーを浴びる私の姿を想像でもしているのだろうか? ……うん、ちょっと悪戯をしよう。告白後も私の恋心を変に刺激する彼への意趣返しだ。


「あ、あの、少し汗が気持ち悪くて……シャワー浴びても良いですか?」


 襟に指を引っかけて前に引っ張り手で風を送る。嘘ではなく本当に汗で服がくっついて気持ち悪いし変な提案ではない。あっ、ロノスさんが背中を向けた。


「ど…どうぞ。僕はこうやって背中を向けているからさ」


「はい! じゃあ、お言葉に甘えてサッと済ませますね。……一緒に浴びます? ふふふ、冗談ですよ」


 実は半分ほど本気だったのだが、今は此処で終わりにしておこう。こういうのは多分積み重ねが必要だ。兎に角全力で押せ押せばかりでは相手が疲れそうだし。


 私の提案に一瞬ビクッとさせた彼だけれど、脅えて見えたのは気のせいだろうか? 入浴中に襲われそうになった事が有るなら分かるけれど、そんな機会が彼みたいな立場の人に起きるとは思えない。さて、実際何時起きるか分からない介入の切っ掛けを待っている身だ。急いで服を脱いでシャワーを浴びる。軽く振り向くもロノスさんは背中を向けたままで私のシャワーシーンを眺める様子は無かった。

 

「……少し残念だ…です」


 まただ。防具として幼い頃から被り続けた明るい少女の仮面が剥がれていた。こんな事、彼に出会うまでは無かったのに。シャワーが汗を洗い流すのを感じつつ思うのは、この瞬間にも後ろから襲われないかって事。私の本性は分かっているみたいだし、今更別に構わないが、ロノスさんが私に何かしてくるかどうかは重要だ。


「後ろから乱暴に胸を揉まれて、強引にキスをされ、壁に手を付いて腰を後ろに突き出すポーズを取らされて……」


 いや、私が一方的にされる

のではなく、私がグイグイ攻めるのも良い。妄想が捗るが長居は無用だ。その時が来た時に裸だから待たせるとかになったら彼を困らせる。嫌な汗を全て流したからとシャワーを止め、体を拭いて出る。ロノスさんは私がシャワー室から出ても背中を向けたままだし、意識しないようにって思った結果だろう。




 ……あれ? 何か忘れている気がする。まあ、良いか。


「ロノスさん、お待たせしました」


「あっ、うん。もう少しゆっくりしたかっただろうに……」


 背後に座って肩を軽く突っつく。少し申し訳なさそうに振り返った彼が固まり、私は何を忘れていたかを思い出した。


「……慌てるにも程がありましたね」


 服と下着だ。今の私、バスタオルを巻いただけの状態でロノスさんと同じベッドの上に座っているのだ、それは彼だって固まりもする。


「は、早く着替えて来たら? 僕、ちゃんと背中向けているから……」


「は、はい!」


 確かにシャワーシーンを見られても良いはずだったし、寧ろ望んでいた私だが、こうして意図しない形でこんな状況になると話が違って恥ずかしい。慌てて立ち上がろうとしてしまい、ボケッとしながら巻いたタオルは簡単に落ちる。その上、ベッドはフカフカ。まあ、そんな上で立った上に慌てたらどうなるかは直ぐに分かった。うん、我ながら実に間抜けだな。



「きゃっ!?」


 実は冷静だけれど悲鳴は上げておこう。このままロノスさんに抱き付いて……あれ? ちょっと距離と角度が……。


「え?」


 思わず前のめりに転けて、悲鳴に振り返ったロノスさんの方に倒れ込む。押し倒すには彼の方がしっかりしていたから起きなかったが、座った状態の彼に裸で抱きつき、顔に胸を押しつける形になっていた。しかもお尻に感じる何かが食い込んだ感覚は多分指。


 私を抱き止めようとして失敗した結果だろう。まあ、作戦通りに抱きついたし、寧ろ顔に胸を押し当ててお尻を掴ませているって状況は……状況は……。


 あ、あれ? 頭が冷静に働かない。顔が熱い? な、何でだ?


「じ、事故です! 確かに何時かはこんな事をしたかったですけれど、今は本当に事故ですからね!」


 駄目だ、恥ずかしい。途中までは、途中までは妄想と同じで抵抗無く行えたのに、こうして一定の線を越えた途端に私は年頃の少女へと戻る。慌ててロノスさんの頭を解放し、シャワー室に駆け込んだ。



 拝啓、天国の(いや、存在するかも迎え入れられているかも知らないけれど)母様。貴女の残した本でエッチな知識を手に入れた娘は肝心な段階で急にヘタレになるらしいです。



「ロノスさんが瀬戸際で踏みとどまる姿に欲情する性癖なら良いのに……」


 今はそれを切に願う。しかし自分の事でも分からないものだ。本では私同様に未経験だった少女達は羞恥心を見せながらも行為が始まれば獣みたいに大胆になり、肉欲に突き動かされていた。私も同様……いや、色々妄想して行動にも移せるのだから余裕がある筈だったのに……。全裸で抱きついてキスから告白は出来たのに、何故先には進めないのかと情けなくなる……。



 彼はこんな私を変に思っていないだろうか? 嫌われていないだろうか……?









「……凄く柔らかかったな。それに大きさだって間近で見たら……って、僕は何を考えているんだ」






ヒロイン一応一覧


アリア 依存系ヒロイン 地の文と会話文が別物 これでもゲームの主人公


レナ 乳母兄弟なエロ鬼メイド 本能で主人公を狙っている


夜鶴 ポンコツくノ一 刀に宿る人格 忠義+恋慕 何気に初めての相手


パンドラ 才女で将来的に家を取り仕切る 文通を続けて好意を募らせた+家への忠誠


レキア ツンデレ妖精姫 普通に好意 勢いで主人公を婚約者だと国民に発表した


シロノ 肉食系ウサギ娘 本能で主人公を狙っている


ネーシャ 縦ロールお嬢様  打算で近付くが…… ゲーム内ではロノスとは悲恋の間 




尚、妹なのでヒロインじゃないリアス ブラコン系ゴリラ聖女



ポチ 主人公に溺愛されるペットのグリフォン 雄 実は口が悪い ヒロインではないがヒロインよりも主人公の扱いが良さそう

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