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兄はペットからの評価をゴリラに伝えていない(挿絵)

 この世の楽園は此処に存在したんだと、僕はゆっくりと湯に浸かって目の前の光景を眺めていた。


「この石鹸、何時も使っているのと香りが違うな」


「潜入任務も有るんだから使う前に予定をちゃんと確認する事ですよ?」


「ひゃっ!? 何処を触ってるのよ!」


「基本的に自分なんだから良いじゃないの。……自分のを揉むのとは別の感覚」


 僕の目の前には泡だらけになって体を洗う夜の面々。僕の目の前で堂々としているのも居れば物陰に隠れて洗い、出て来る時にはタオルを巻いているのも。あの分体、行為の時の記憶を共有したらどうなるのかと悪戯心が湧き上がった。


「……向こうの分体ばかり眺めていますね。いえ、私には違いありませんが……嫉妬だってしますよ」


 背後からの拗ねた声に振り向けば膨れ面の夜鶴がタオルを巻いた状態で僕の方を見ている。湯船にタオルを浸けるのはマナー違反だって言って剥ぎ取って……いや、混浴の場合は話が別か。そもそも行為の後だからってそっちの方に思考が寄ってしまっているのは気を付けないと。……パンドラにも程々にって忠告されたばかりだし。


「ごめんごめん。じゃあ、君をじっと見ていようかな」


「……主のスケベ」


 冗談めかして口にしながらタオルで隠れていない部分に視線を送る。首筋や腕、至る所に虫さされみたいな跡が有るし、似たような状態な分体も数人。その内の何人かは同じように湯船に浸かった状態なんだけれど、タオルを巻いていたり巻いていなかったり。ベッドの上で散々見たんだけれど、それでも目の保養になる光景だ。


「スケベって、君が先に誘って来たんじゃないか。しっかし、本当に変わったよね、良い意味でさ。出会ったばかりの頃はこんな関係になるとは思わなかったよ」


「そりゃ主は当初子供でしたし、別段ませていた訳でもなかったですからね。私達も道具として誕生したのに人として扱われて感情や個性が生まれましたし、主への好意だって凄い勢いで増えているんですよ? それこそ主のお好きな本みたいに凄い勢いで」


 本体がすっかり照れて顔も合わせてくれない状態だけれど、こうやって返事をしてくれた分体はタオルも巻かずに僕の背中に密着して来る。うーん、一番ノリノリだった個体だな。


「僕の好きな本の話はしないで貰える? ったく、お仕置きだ」


「エッチなのですか!」


「そんな訳ないでしょう? いや、勘違いしても仕方無いんだけれどさ」


 何でそんな期待した声が出るのかと思ったけれど、直前まで”お仕置き”って名目で朝っぱらから昼前まで何をやっていたのかを考えれば否定は出来ない。でも、お仕置きはするよ?


 口の両端を摘まんで両側に引っ張れば予想以上に伸びる伸びる。


「はーい。後10秒。10、9、8、7、6……5秒追加ね」


「ふぁ、ふぁい」



 ふぁいだってさ、ふぁい! 顔も面白いし、ちょっと楽しくなったから上下にも引っ張ってみたんだけど、何処まで引っ張れるかは……試さないでおこう。


 何せ夜鶴と夜達は体験の共有が可能。下手に恨まれた場合、全員がその感情を共有する事だって有り得る。


「主、お風呂場で続きと行きませんか? 朝のに参加しなかったのも加えれば皆揃って……」


 つまりは肉体関係を持った場合、その体験を全員が自身の者と同様にするって事で、例えばさっきみたいに複数人で行った場合、その人数がそのまま回数になる訳で……自分の痴態を客観的に眺めていた記憶があるってどんな気分なんだろう? 味わいたくは無いんだけれどね。


「僕、君達とはずっと仲良くしたいと思っているよ。忠実で優秀な臣下としても、異性としても……」


「主……」


 感極まった感じの夜鶴と夜達。この時の感情も後で全員分共有するんだろう。うん、今の言葉は本心さ。でも、同時に夜鶴達には本当にこうした気遣いが必要だ。必要でない相手の方が珍しいけれど、特にこの子達はね。


 だってさ、ゲームで例えるなら個別のイベントでの好感度の増減が同じだけ他のキャラ全員にまで及ぶって感じだ。人間関係、マジで大切……。




 ゲームでは出てこなかった優秀なポンコツくノ一な彼女達だけれど、何かやらかしたんじゃ……。








「ポチー! ポチー! ご飯ですよー」


 ……うーん、むにゃむにゃ。ご飯? ……ご飯! 夢の中でロノスお兄ちゃんを乗せてお空の上から谷底までの垂直急降下を繰り返してたんだけれど、お馬鹿のリアスがゲハゲハ笑いながら追い掛けて来たのは怖かったなあ。まあ、良いや。お仕事に連れて行って貰えなかったし、後で何時もオヤツくれたり遊んでくれるメイドさん(お姉さん)達の誰かを乗せて飛ぶとして、今はご飯! ごっ飯、ご飯~!


 寝転がって居た状態から飛び起きて目の前のお馬さんに飛びかかる。えっとね、ロノスお兄ちゃんとお馬鹿のリアスの……お母さん? のレナスさんと一緒に居る僕のお母さんから教わったんだけれど、獲物をしとめる時は一撃なのが良いらしい。頭を掴んで骨を握り潰して首を引きちぎる。血がドバーッて出て、周囲が真っ赤になって面白いの。


「あ、あわわわわ……」


「おや? どうかしましたか? ……あぁ」


 あれれ~? 最近顔を見るようになったお姉さん……お姉さんだよね? この人、お馬鹿のリアスみたいにお胸が平らなの! もしかしてご病気?


「キューイ?」


「おや、どうかしましたか? 彼女はこの光景を始めて見るので……」


 僕が首を捻れば新しいお姉さんと一緒に来たお姉さんは不思議がるけれど、僕の言葉が分からないので通じない。僕は女王様のおかげで分かるんだけれどね。



「キュイ!」


 こっちのお胸がまっ平らな方のお姉さん、僕に慣れてないみたいだし、どうやって仲良くなれば良いのかな? うーん、矢っ張りあれだね! 僕の背中に乗せてあげるの! 僕も楽しいし、乗った人はキャーキャー騒いで楽しそうだし絶対仲良くなれるよ。


「えっと、伏せたと思ったら私の方をジッと見て見ていますけれど、これは?」


「背中に乗れと言いたいのでしょう。若様が言うにはこの子にとって友好の証だそうですよ。大丈夫、すっかりはまった挙げ句、オヤツをあげて乗せて貰っているメイドも居ますし、今まで怪我人は出ていません。ええ、怪我人は……」


「その含みを持たせる言い方からして怪我はしなくても……」


「漏らした者は居ませんよ? 白目を剥いて気絶したのは居ますけれど。ほら、お乗りなさい。ポチが待っています」


「ちょっ!? 何で押して……」


 背中をグイグイ押されたお姉さんが僕の背中に乗ったのを確認したし、じゃあ飛び立とう! えっと、一応屋敷の敷地内だけを飛び回るけれど、高さは何処までって言われてないし、向かい風はちゃんと操った風で防ぐんだから凄く速く飛んでも良いよね? 


「ポチ、その子は慣れていませんので今回は速度は控えめで」


 えー? ちぇ! まあ、良いや。じゃあ、次に乗せる時は全力で飛ぶとして、今回はゆっくり飛んだら良いんだね? 



 お馬さんの倍位にしておこうっと。僕、ちゃんと言いつけを守る賢くて良い子! お兄ちゃんが帰って来たら誉めて貰って遊んで貰うんだ。



「キュイ!」


「え? ちょっと、ほぼ垂直に上昇して……」


「キューイ!」


「あれ? 空中で一回転したと思ったら落ちて……ぎゃぁあああああああああっ!?」


 もー! このお姉さん、少し騒がしいなあ。何時もよりゆっくりと飛んだから回転中に落としちゃったけれど、ちゃんと背中で受け止めたのに。でも息が荒いし、興奮する位楽しんでくれているんだ。だったら僕も嬉しいな。



「キュキュキュキューイ!」


「あれ? まさか……」


 よーし! お馬さんの二倍から三倍に急加速だー! 行っくよー!





「加減しろと言ったでしょう!」


「キュイ……」


 地面に降りたら怒られちゃった。えっと、どうして? 全然分からないや。まっ平らなお姉さん、最後の方は静かになって今もお昼寝しちゃってるのに。




 僕はまだまだ子供だから知らない事が多い。お兄ちゃんが色々教えてくれるんだけれど、そのお兄ちゃんにも分からない事が有るし。でも、そんな時は僕が知っている中で一番賢い人に教えて貰うんだ。



「おや、どうかしましたか?」


「キュキュイ!」


 匂いがしたから窓から部屋をのぞき込めばメイド長が僕の方を向く。この人も僕の言葉が分かるし、知りたい事は何でも教えてくれる人なの。


 えっとね、ちょっと気になっていた事があるの。この前、凄くお馬鹿なサマエルって奴に会ったんだけれど、リアスと同じ金髪だったんだ。金髪だと頭が変になるの?


挿絵(By みてみん)



「いえ、違いますよ。その理論だと私も頭が変になるのですが」


「キュイ?」


 理屈? それって美味しいの?


「……もう少しお勉強も必要かも知れませんが、グリフォンに勉強させるのも妙な話ですね。おや? 未だ質問が?」


「キュイ!」


 えっとね! お馬鹿のサマエルって呼び方だったらリアスと同じだし、別の呼び方教えて!



「いや、姫様の方をその呼び方にしなければ……”アホのサマエル”とでもしておきなさい。悪いですからこのような事は言いたくないのですが、あの子は些か……いえ、想定以上に頭が足らない子でしたからね。……この会話については若様にも秘密ですよ? 守れるのなら若様には内緒でデザートに神級に美味しいケーキをこっそり食べさせてあげましょう」


挿絵(By みてみん)



 うん、分かった! ケーキだケーキだ、嬉しいな! メイド長のくれるお菓子はお兄ちゃんがくれる物より美味しいんだもん。それでお馬鹿のリアスに悪いから黙っておくんだね。了解だよ!



「……ええ、まあ、そんな所です。くれぐれもお内密に。じゃないと神様の罰を当て……じゃなくて、罰が当たりますからね?」




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