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決定事項

 それは遂に学園に入学する為に王国の屋敷に向かう前日、二人だけの前祝いと称して人払いをした僕達はこれからの方針について話し合っていた。


「先ず、大前提として僕達の目標が何かは分かっているね、リアス?」


「ええ、当然よ。お兄ちゃんったら私を馬鹿か何かと思っていない? ”女神テュラの口車に乗らず、破滅の未来を避ける”でしょう? 簡単じゃない」


「そうだよ。流石僕の可愛い自慢の妹だ。洗脳されたらどうしようもないけれど、ゲームの描写や古文書の記述を見る限りじゃその手の力を持っている可能性は低いだろうね」


 正直言って神の力で洗脳されたら人間にはどうしようもないけれど、そんな心配を妹にさせる必要は無いから黙っていよう。少なくとも僕達はテュラがどんな存在か知っているし、従った場合に待つ破滅の未来を避けたいって強く思っている。そんなのがどうにかして洗脳を妨げてくれないかなあ? ほら、違和感によって自力で解除するとかさ。……一応僕が魔法解除の魔法を定期的に使う事にはなっているし、誰かに見られても良いように理由を隠しつつも日記にも書いているからって安心しておこう。


「でも、僕達がやるのは他にもだ。それは分かっているね?」


「……うん」


 ……あれぇ? 今、変な間があった気が。まさか忘れたりしていないよね? テュラの勧誘を回避した後でやらなくちゃいけない事だし、二番目に重要な事なんだけれど。

 僕の言葉に行程はしているけれど眼を泳がせるし、これは忘れてたな。こうも顔に出すだなんて、僕の妹は素直だね。変に表面だけ取り繕うのが上手なのよりもずっと好感が持てるよ。


 うちの妹、超可愛い。もう少し眺めていたいけれど、話を戻さないといけないのが辛い所だ。


「僕達が勧誘に乗らなかったとして、別の誰かを使ったりして封印の解除を狙うかもって話だよ。確かに確認されている光属性の使い手はリアスだけだけれど、別の大陸にいたり、時と光と闇以外の魔法を使えるようになる”明烏”みたいに光属性を使えるようになる秘宝が存在しないとも限らない。復活した時の戦力として人を集める方針だけれど、封印解除を防ぐのが前提だ」


 あくまでも戦うのは最終手段。人材を集めておいて損はないけれど、女神なんかと戦うのなんて正直言って冗談じゃない。リアスは少しだけお転婆だから強そうな相手と戦うのにワクワクしているらしいけれど、兄として妹を危険に晒してなるものかってんだ。



「分かったわ。そんなのを探してぶっ壊せば良いのね?」


「う、うん、まあ、そうなんだけれど、そんな重要そうな秘宝が存在するのかか分からないし、優先順位的には低いかな? 僕達がすべきなのは神獣が封印されている物の確保だ。テュラの復活に必要なのはラスボス前のボスである”リュキの悪心”の完全消滅だけれど、そのリュキの悪心の復活を阻止すれば良い。その為には神獣が封印された物を一個でも良いから確保し、復活をもくろむ連中から守る事だ」


「えっと、確か全部の神獣が復活しないとリュキの悪心も復活しないのよね? 何だ、簡単じゃないの。楽勝よ、楽勝! もう勝ったも同然だわ」


「……うん、そうだね」


 リアスはそんな風に喜んで居るけれど、実はそんなに簡単な話じゃない。確保した所で奪う為に襲撃される事も有り得るし、可能なら複数個確保して点在させてしまいたい。


 でも、それをするにはどんな物に封印されているか、どうやって守り抜くのかって話になるし、その”どんな物”についてゲームで描写されていない物も多い上に、されている物だって何処に存在するのか、そんな事は殆ど覚えちゃいない。



「……矢っ張り帝国の例のアイテムが必要だよね。皇帝の弟が攻略キャラだった気がするし、何とかならないかな……」


 そんな風に考えていたのに入学した翌日にリアスに求婚したせいで冷静に相手できなかったり、その後で行方不明になったりで計画は頓挫した。今思えばもう少し冷静になるべきだったのに、僕達は何をやっているんだろう。



 まあ、あの流れで仲良くすれば皇帝を敵に回す可能性が高かったからセーフと言えばセーフなんだけれどさ。










「さてと……回想という名の現実逃避完了。能力バグってる占い師が配下に居るし、探し物なら問題無いしね。そんな事よりも夜鶴に一体何が? 知りたいような知らない方が良いような……。全然理解不能なんだけれど。これ、一発で理解出来る人って世界に何人居るの? 僕はメイド長以外に思い当たらないよ」



 鬱屈としそうな仕事を終えて、癒しを与えてくれる妹もペットも居ない別荘でのお風呂上がり、さっさと寝ようと思って扉を開ければ待っていたのは手を拘束されたくノ一の姿。”くっころ”からのエロ尋問に発展しそうな展開って思うのはそれ系の小説の読み過ぎだろうか。


 総評・訳が分からない。


「本当に何をやってるの? 僕の持ってる本にはその手の内容のは……無いとは言わないけれど。偶にレナによってコレクションが入れ替えられているし、それを見て勘違いしたって可能性も……」


 一瞬で扉を閉めたから断言は出来ないんだけれど、腕を縛っていたのは多分その辺から持ってきたタオルかスカーフ、彼女の力なら引きちぎれるし、縄抜けなんて得意な筈だ。


 忍者だからね。良いよね、忍者。分身の術っぽいのは使えるし、魔法は苦手なのか火遁の術を魔法で再現するとかは無理だけれど、縄抜けを見せて貰った時は心が躍ったよ。


 そんな彼女が縛られて身動きが出来ない? 馬鹿馬鹿しい! そもそもあの肉体はあくまで本体である刀が魔力で作り出した人形みたいな物だ。消せるんだし、誰かに捕まる筈もない。


「一瞬何者かに能力を封じられたのかと思ったんだけれど……うん。本当に何をやっているんだろ。真面目な君は何処に行ったのさ」


 窓の外を見れば警備の最中なのに姿を現して僕の方を困り顔で見ている分体の姿。分体が出ている時点で能力は健在だし、言いにくい事は有っても今すぐ伝えなくちゃ駄目な事は無いって様子だ。


 どうしよう? このまま別室で寝る? 放置して良いと思うんだけれど、叱らなくちゃ駄目なら叱るのも主の務めだし。


 出来るなら全部見なかった事にして眠りたいんだけれど、流石にそれは駄目だろうし、仕方が無いので僕の前にわざわざ姿を現した分体に事情を聞く為に手招きした。 


 おいで。そして可能なら気苦労が大した事が無い内容でお願いね。




「えっと、ですね。我々夜は元は同一存在だったのに主と共に暮らし、様々な体験をした影響で個性が芽生えていますが、アホ組……いえ、ちょっと行動が変な個体の集まりが暴走しまして。本当に情けなくて涙が出そうです。転んで滑って肥溜めに落ちれば良いのに……」


 僕に話を聞かせてくれたのは少し気弱な印象の分体。でも、元は自分だってのに結構な事を言っている。うわぁ、辛辣。


「それでアホ組がどうしたの?」


「”主はお疲れですが、疲れてる時こそ漲るそうなのでご奉仕すべきです。前回は攻める事が多かったので、そのお仕置きを受けて下さい”だそうで……」


「それで夜鶴が捕まったと。……分体って自由に消せたよね? 出し入れは夜鶴の自由なんじゃ……」


「複数人に敏感な所を刺激されつつ、本人達が自分でした刺激まで五感共有で味合わされてダウンしました。それでどうしますか?」


「どうするって……」


 どうしよう。本当に知らない方が良い内容だったよ。何で僕は別室でさっさと眠らなかったんだ? 後悔の念が押し寄せる。


 ……そっか。お仕置きされるの待っているのか。据え膳食わぬは何とやらって言うし、向こうが求めるなら……うん。


 嫌な仕事の後の気分を発散させたい思いと年頃故の欲望、そしてプルートからの最後の伝言の内容。休みたい気持ちにそれらが少しだけ勝って、僕は部屋の中に入って行く。


「あ、主……」


 羞恥心と期待の入り交じった潤んだ瞳、うっすら汗ばんだ肌が乱れた衣服から覗いている。まな板の上の鯉、後は僕のなすがまま。



 だから……。




「じゃあ、お休み」


「……え? えっと、主……?」


「今日は疲れているんだ。だから……」


 横に寝転がった僕に期待を寄せる彼女を余所に瞼を閉じれば戸惑った声が聞こえる。うーん、ちょっと良心の呵責。でも本当に精神的に疲れてるんだ。


 そんな僕は不意打ちで夜鶴を抱き枕みたいに抱き寄せると耳元で囁いた。




「明日起きたら思う存分相手をして貰うよ、夜鶴。……あっ、パンドラから伝言。”手を出したのに放置して気に病む位なら愛人扱いにしておきます。程々に”だってさ。じゃあ、宜しくね?」


「ひゃ、ひゃい……。お、お慕いしていまひゅ、主……ひんっ! 其処は……」


「此処がどうかしたの? 生憎僕は眼を閉じてるから何処なのか分からないんだ。何処を触られているのか教えてくれるかい?」


「……主のスケベ」


 今の顔、見なくても丸分かりだ。長い付き合いだし、どんな表情なのかが頭に浮かび、ついつい抱き締める力を強めれば鼓動が強くなるのが伝わって来た。じゃあ、明日に備えてゆっくりと眠ろうっと……。









「はーい。お仕置きお仕置き。主の命令だし、容赦しないから」


「せ、せめて主からの卑猥なお仕置きが……」


「反省してないね。……水ぶっかけようかな。それとも服の中に虫入れる?」


 尚、アホ組はマトモな分体達によって捕縛、一晩中逆さ吊りの刑になった。


 


絵、何時来るでしょうね


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