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兄妹と臣下達

新作の短編を昨日投稿しました

「大変お見苦しい姿をお見せしました。私は平気なのでお気になさらずに」


「いや、プルートのアレは予知が発動した時に無意識にしちゃうんだし、寧ろ君の方が気にして……って、こっちの言葉を予知して先に返事するのは止めなって」


「癖なもので。それに若様はお気になさりませんし、ボーダーラインはしっかり理解していますので」


 ちょっと妹には知られたくない仕事の帰り、知られたくないセクハラ的なやりとりを夜鶴に行いながら向かった先で待っていたプルートとの会話がこれ。うーん、相手の反応を文字通りに先読みしての会話って、流石は本物の予知能力者。ゲームでの好感度を教えてくれるポジションなだけあるね。


「それで……今回は僕の言葉を聞いてからね? それで何用なんだい? 今回は極秘の仕事、君には秘密だなんて無意味なんだろうけれど、その後の宿泊先に来るだなんて。……何か変な事言った?」


 今度は言葉を遮らないと思ったらクスクスと笑っているし、まさか直ぐ後に僕に何か起きるの!? それか僕がポーカーで勝ったら今晩は全裸って夜鶴に命令した癖にセクハラに怒った賭け事の女神に罰を受けたのがバレてる?


 いや、まさか何度やっても僕は全部ブタで夜鶴は交換無しで役が完成しているとかどんな偶然? マジで賭け事の女神が怒ったんじゃ……。


「ふふふ、申し訳有りません。この通り黒髪に黒眼、そして闇属性の使い手の私に備わった予知能力。侮蔑を向けられながらの会話に辟易して相手の言葉を先に知って返事をする癖が付いてしまったのですが、相手も私との会話が嫌なのか不気味がっても”ちゃんと会話をしろ”とは文句は言いませんでした。でも、クヴァイル家ではそんな事が無くて、知っていても変な気分なのですよ」


「まあ、ウチはお祖父様が使える物は徹底的に使うって方針だし、使用人も家の者もそんな躾を受けているからね。……あれ? だったら文句言われるの分かっていて先に返事してた?」


「ええ、していました」


 うわぁ……。しれって言ったよ、この人。なんかコミュ力低いのか高いのか分からないなあ調子が狂うね。ちゃんと会話をしないようで、こっちが怒らないラインを攻めて来るんだからさ。


「まあ、冗談は此処からもにして……」


「未だ続けるんだったら流石に怒るよ? 具体的には減給だよ?」


 うん、レナ達母娘もそうだけれどクヴァイル家の家臣ってどうも個性が強くない? メイド長もそうだけれど、主である側の僕が圧倒されてるって感じでさ。


 別に低姿勢のイエスマンな部下が欲しい訳じゃないけれど、どうもなあ。


「ええ、だから此処からは真面目にしますが、一昔前のアース王国ならば鞭打ちなり陵辱なりしていますよ」


「僕は王国じゃなくて聖王国の貴族だし、叔母上様が王妃になってから貴族の横暴な行動には規制されているよ。それよりもさっきから全然話が進まないんだけれど、会話を楽しみたいなら仕事を終わらせてからお茶でも飲みつつしよう」


「……読まれていましたか。実は明日から暫くパンドラ様のお供で聖王国の方に向かう事になりまして、先に若様にお伝えすべき予知が。帝国からあった養女とのお見合い話ですが……単眼単腕単足の巨人の姿が浮かびました」


「それって……」


 プルートが口にした怪物、確かゲームのボスとして終盤に登場した奴……だったとは思うんだけれど詳しくは覚えていない。どんなイベントで会うのか、どんな戦い方をするのとかも。その為にも帝国の例の秘宝を使いたいんだけれどさ。


 その怪物がゲームに出ていた奴だとも、そうだとしてもゲーム通りの強さとは限らないんだけれど、準備だけはしておこう。この世界じゃモンスターを倒す事で内部のエネルギー的なのを吸収する事でゲームみたいにレベルが上がって強くなるみたいな事は分かっているけれど、レベルが幾つなのかも確かめられないし、同じレベルでも元々強かったり普通に鍛えている方が強い。まあ、技術だけでも少しは磨いておかないと。


 待ち受けて居るであろう強敵の情報に頭が痛くなりそうになる僕だけれど、それは小さい頃から分かっていて、その準備は進めて来た。うん、どうにかなるさ。


「……それともう一つ。つい先程発動した予知ですが、第三演目が終わり次第抜け出して、連れの方と共にピンクの屋根の宿にお向かい下さい。その三階の部屋の窓から下を見れば良い事が有るでしょう」


「具体的な割には最後は抽象的だね」


「私の予言はそんな物ですよ? 使える時と使えない時の差が激しいので。どう致しまして」


「まあ、助かったよ。ありが……だから先に返事しない」


 ……本当にペースを握られるなあ。


「ああ、言い忘れる所でしたが……」


 未だ何かあるんだ。ちょっと疲れたから風呂に入って休みたいんだけれどさ。




「……生き返る」


 プルートから伝言を受けた後、既に用意がされているって言われたお風呂へと向かう。広いお風呂に一人きり、慣れてはいるんだけれど寂しいとも思う。所で夜鶴と夜が警備をしているらしいけれど、もしかしてお風呂場にも潜んでる?


 ちょっと見渡して探してみるんだけれど、どうやら隠れている様子はない。本職相手に完全に見抜けるとは思えないけれど、僕だって少しは訓練受けているしさ。


「この間は凄かったよね。……居ないのか」


 少し前に起きた夜鶴達によるお風呂場突入事件、アレは凄かった。正直一度体験してるし、次起きたら僕の方から関係を結びたいって言い出すかも。でも、どうやら今回はゆっくり休んで欲しいらしい。気遣いまで出来る良い子でうれしいんだけれどさ……。


「いや、厚意はちゃんと受け取ろう。そっち方面の働きばかり期待しちゃ駄目だ」


 湯の中に潜って煩悩を追い出し、そのままのぼせそうになるギリギリまでお風呂を堪能した僕はそのまま寝室へと向かう。



「……間違えました」


 そして開いた扉を閉めた。今、腕をベッドに縛り付けられた夜鶴の姿が見えた気が……。








「では行きますよ、姫様?」


 お兄ちゃんがお仕事で出掛けている間、私は私で修行を頑張っていた。レナスから受けた修行は兎に角ハードな基礎訓練と実戦形式の組み手の繰り返し、後は自分で要不要を判断して頑張れっていう物。


「バッチ来ーい! 今日こそ完全完璧にしてみせるわ!」


 時間は夕食後、私の足下には肩幅より少し直径が広い程度の円で、目の前には使いやすい大きさに割る前の薪の山とその隣のレナ。そして私の手にはハルバート。それを何時も通りに構えた時、常人の放つ弓矢以上の速度でレナが薪を投げる。私の顔面に向かって迫ったそれにハルバートを振るえば四つ(・・)に分かれて私の背後に置かれた荷車に落ちる。


「はい、一発目から駄目ですね。爪先が出ていました」


「え~!? マジでっ!?」


「ええ、マジです」


 レナったら何時もはおふざけ全開だったり、生殖本能のままにお兄ちゃんを誘惑してはメイド長に叱られてる癖に修行に関しては厳しいんだから。

 言われてみて確かめれば数ミリだけ足が円から出ていたし、私もまだまだね。


 この修行のルールは二つ。薪を綺麗に四分割する事と円から出ない事。つまり薪が刃が届く距離に来たら真っ二つにして、通り過ぎる前にもう一度斬れば良い。一見すれば簡単みたいだけれど、踏み込みの加減とかが難しいのよね。


「次っ! どんどん投げて!」


「ええ、勿論一切容赦無しで行かせていただきます」


 投げられる薪の速度は毎回微妙に変わり、私に向かって来る軌道も複雑。レナスが言うには速くて正確な攻撃の修行なんだけれど、苦戦する自分が未熟だって思わされるわね。





 ……でも、私は今よりもずっと強くならなくちゃ。お姉ちゃんを封印から解放する為にも今よりも遙かに、それこそ神様さえ倒せる程に……。


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