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VSユニコーン

絵 発注予定 二キャラ

 ゼース・クヴァイル、僕とリアス達兄妹や陛下の祖父であり、リュボス聖王国宰相であり、昔は政治だけでなく戦場でもって炎魔法で大暴れして”魔王”だなんて異名まで持っている。まあ、正直言って化け物みたいな能力を持っているし、身内だろうと国の為なら容赦無く手に掛ける。貴族としては優秀なんだろうけれど人間らしさは薄いってのが僕の評価だ。


 

 そんな怖いお祖父様に僕はとある理由で密会を申し出ていた。その内容は国にとって必要であるお祖父様の現役期間を伸ばす為の物であり、ゲームでの僕も行っていた事だ。


「……不老か。成る程、有用であり、同時に厄介な魔法を創造した訳だ。して、それを私に告げる理由は分かるが……何が目的だ? 予想は可能だが一応聞いてやろう」


 僕だけが使える”時属性”は基本的に生物相手には効果が薄い。意識がある相手には抵抗されてしまうんだけれど、それには例外も存在する。それこそが僕がお祖父様に使い続けている”肉体の時間の停止”、要するに不老を与えるって権力者なら欲しがるだろうから知られたら面倒な物だ。


「……僕が今やっている裏の仕事ですけれど、リアスには伏せておいて下さい。あの子は何も知らなくて良い。全部僕が引き受ける」


「そうか。良い。ならばさっさと使って帰れ。私は忙しい」


「……それだけですか?」


「それ以外に何がある。くだらない事を聞く暇が有れば腕を磨け。ああ、それと分かっているだろうが不老化の事は私が許した相手以外には内密だ」


 僕としては結構な覚悟を決めた交渉だったのに、お祖父様はこの塩対応。まあ、僕が適当な事を言っているって疑う事はしなかったのは信用はされているんだろうし、リアスには汚い仕事は一切させなくって良くなったんだけれどさ。



 さて、この魔法は凄い魔法だと自分の事ながら思うんだけれど、当然ながらデメリットが存在する。僕は何かあれば”今の僕には~”って考えたりする事が有るんだけれど、コレはこの魔法の負担が多いから。一定期間毎にお祖父様の所に通って使っているから負担で弱体化したままだし、それでもゲームではこの弱体化をした上でリアスには汚い仕事をさせていたし、何の問題も無いとは思うんだけれどさ。


 だってお祖父様って本当に有能な人で華麗による衰えが無くなるなら回り回って僕の利益になるし。……凄く厄介な人の支配が続くって事だけれど、本人は後進の育成が終わったら引退する気なのが救いか。


 何よりも可愛い妹に酷い仕事をさせなくて良いのは本当に嬉しい。裏の仕事の最中は心が麻痺を起こしているんだけれど、あの子の笑顔の為ならば喜んで引き受ける。




 さて、それらを踏まえて考えたら考える迄もなかった。事情を知る女王様の叱責の通り、それらを放棄して、助けた事で今後の似たケース発生時にも頼られる事等々のデメリットの対価がちゃんと顔合わせらしい顔合わせをしたばかりのヴァールを救える事で、僕が得するのは友達の妹が悲しまなくって良い事だけ。話にならないや。


 これでヴァールが友人だったら悩むんだろうし、後悔するにしても助けるって選択肢を選んだだろう。結局、人ってのは合理的な考えから他人に厳しくしても自分や身内には感情的で非合理的に優しさを向けてしまうものだ。でも、ヴァールは顔と名前を知ってるだけの他国の貴族であって身内じゃなく、リアスやお祖父様やクヴァイル家の領民は身内だ。


「迷いは晴れたか? ニーアのオベロン候補ではあるが所詮恋に恋する箱入り娘の恋愛ごっこの対象、新たな恋を見付ければ忘れてしまう程度の想いの相手だ。失えば泣くだろうが、貴様が憂う程の事ではない」


「妖精ってそんな所有りますよね。一度情を抱けば深く受け入れるけれど基本的に排他的で、恋に情熱的なようで冷めてしまえば一切どうでも良くなって次の恋を探す」


「種族特性だ。何か不満か?」


「いえ、まさか。そんな妖精全員に喧嘩売る気は無いので……さっさとヴァールを止めてレキアとお話でもします。レキア、一応婚約者って事になっちゃったし、今晩家の者にも説明するけれど良いよね? 勿論足を挫いたとかは省いてさ」


「……好きにせよ」


 おっと、足を挫いた事を持ち出したのが気に入らないのか背中を向けられたけれど、まあ後でご機嫌取りに尽力しよう。だから今すべきなのは……。



「ヒヒヒヒヒヒヒィィンッ!!」


「もう完全に怪物になっちゃってるな。さっさと終わらせるか。……うん、都合で見捨てるんだから白々しいけれど謝っておこう。ごめんね」


 ヴァールは既に顔以外の部分以外は殆どユニコーンになっていて、人面犬ならぬ人面馬状態。その顔も徐々に馬になりつつあって、このまま放置していたら完全に力を取り戻しそうで厄介だ。


 だからさっさと終わらせよう。武器を持って来ていないから空気を刀の形に変えてすれ違いざまに切り裂く。深く切り裂いたから内臓まで届いた感触があったんだけれど振り向けば既に傷は塞がっている。


「厄介……」


 角を突き出しての突進を空気の盾で防ぎ、そのまま空気を停めて鎖に変えてヴァールを拘束して首を切り落とす。


「これで終わり……じゃない!」


 頭を切り落とされて転がったヴァールの肉体は頭と一緒に流れ出す血が床の絨毯を汚すけれど、角が光ると同時に血が糸状に変わって首と肉体を結ぶ。ああ、面倒っ!


「なんとまあ、面妖な。おい、今度は間に何か挟んで……いや、氷の槍同様に押し出されるか」


「多分ね。ほら、再生時に結構な魔力が生じているし間で魔法を発動するのはちょっと難しいよ。いや、確かに厄介だけれどもしかしたら……試してみるか」


 まさか首を落としても復活するだなんて不死身といっても過言ではない上に傷を塞いで再生を阻害するってありふれた戦略も難しい相手だけれど、ちょっと思い付いた事がある。僕一人でもやろうと思えばやれるんだろうけれど、夕食があるからって用意された料理を控えめに食べていたし、そろそろお腹が減って来た所だ。


「レキア、ちょっと良いかな?」


 ヴァールの突進は切り返しも含めて普通の馬よりも速い。あんな速度で走っておきながら急角度で反転してくるんだから神獣の無茶苦茶具合が伝わって来るよ。まあ、それを言い出したら鍛え方次第で鉄を砕いたりトン単位の物を持ち上げられるようになるこの世界の人間も前世の世界からすれば有り得ないんだろうけれど。多分構造とか成分とか全くの別物だろうね。


 僕が左右に逸らして避けていると頭を左右に振って攻撃範囲を広げ、壁を作れば飛び越える。だったら拘束をすれば良いんだろうけれど……。


「げげっ!?」


 拘束された状態で無理矢理動くヴァールだけれど時間を停止させて作り出した拘束具は魔力による妨害以外に脱出する術は無い。だと思ってたんだけれど、無理に動く事によって自らの肉を抉りながら脱出した。肉片や血が床を汚し折れた骨が見える程の重傷なのに平気で動き、直ぐに回復する。此処まで来ると痛みで動きを止めるのも無理か。


 既にその大きさは人とは比べ物にならず、普通の馬よりも一回り二回り大きい。重量もかなりの物で、突進の威力も高いだろう。常人だったら一瞬で挽き肉だ。そんな体で馬よりも速いって本当に化け物だよ。


 まあ、一見すれば無理ゲーな相手だけれど、それでもユニコーンは神獣であって神獣将ではない。指揮する程の知能が無いのもあるだろうけれど、回復能力だって完全無欠では無いだろう。


 先ず、流石に挽き肉になれば回復は不可能だろうから回復能力速度以上の速さで攻撃を続ける。


 もしくは……。



「さっきの氷の槍なんだけれど一本に力を集中させて貰えるかな? 出来るだけ貫通力をあげて欲しいんだけれど」


「承知した。ふんっ! 貴様は妾が居なければ駄目みたいだな」


「ああ、そうだね。レキアが側に居てくれたら嬉しいし助かるよ」


 突進してくるヴァールを正面から見据え、その場でどっしりと構える。ギリギリで避ける気と思ったのか激しく角を振るヴァールだけれど、それじゃあどうしても重心が乱れてしまうよ? だから、こうして角を掴み取るのだって簡単だ。


「ブルルッ!?」


 両手でヴァールの角を掴み、突進を無理矢理止める。押し込もうと足に力を込めるヴァールだけれど微動だにしない。


「確かに僕って魔法よりの訓練受けたからゴリラなリアスより腕力は劣るんだけれど、それでも接近戦が出来ない訳じゃないんだ。じゃないとあの子を守れない。……もう完全に変わっちゃったね」


 既にヴァールは完全なユニコーンへと変わり、理性が感じられなかった瞳には憤怒と憎悪が宿っている。……もうヴァールとは呼べないか。せめて人扱いして殺す気だったけれど、コレで彼は完全に殺された。もう此奴はヴァールじゃなくてユニコーンだ。


「もう良いよ。……終わらせようか」


 そして角を掴んだままユニコーンの巨体を振り上げて叩き付ける。腕が軋んだし、床が割れちゃったけれど女王様は怒っていないみたいだからセーフ。


「後で直せ」


 ……ですよね。まあ、直すけれど。


「もう貴様もゴリラの範疇だな。では、そのまま押さえ込んでいろ。角の付け根で構わんのだろう?」


「ああ、そうさ。流石レキア、以心伝心って奴だ。僕もゴリラ……」


「不満か?」


「うん、良いね。兄妹お揃いで素敵じゃないか」


「だと思ったぞ、シスコンめ」


 レキアの背後には大きさだけなら同じ氷の槍。でも、感じる魔力は比べ物にならない上に風と雷まで纏う豪華仕様。随分と気合いが入っているけれど、僕が驚いたのは何処を狙うか言う前に分かっていた事だ。



「当然だ! 妾と貴様はパートナーだからな!」


 風と雷は槍の先端に集まり、僕が角を掴んで押さえ込んでいるユニコーンの角の付け根に突き刺さり、そのまま分厚い頭蓋骨の一部ごと角をえぐり取った。


「さて、狙いは……成功だ」


 首を落とした時、角は頭に残ったままだった。でも今は完全に切り離されていて、残った身体は塵になって消えていく。角が本体みたいなもんだったみたいだね。正解で良かったよ。


「それにしてもレキアも短期間で強くなったよね。僕が入学した頃はモンスター退治に助っ人が必要だって女王様に判断されたのに」


「置いて行かれるのが嫌だった、それだけだ。……それよりもそれも狙い通りか?」


 短期間での成長速度に驚かされた僕だけれど、レキアの言葉と共に角の重量が増して行く。光を放つ角の根元が少しずつ盛り上がって肉体を再生させようとしていた。




「うん、狙い通りさ。この程度は予想していたし、対処方法も考えているよ」


「だろうな。では、さっさとやれ」


 おや、これもお見通しか。レキアは凄いなあ……。




「レキアと結婚したら尻に敷かれるね」


「い、以外と尽くすタイプ……と思うぞ?」


「君は君のままで良いよ」

もうすぐ千二百 次は総合千三百目指します

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