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ショタっぽい教師の授業

 この世界に酷似した乙女ゲーム”魔女の楽園”には存在はするけれどゲームではそれ程影響が無かったり、そもそも語られない物だって存在する……らしい。


 僕は実際にプレイしていないから全部知っている訳じゃないけれど、幾つかは覚えているし利用している物も有る。


 ……そもそもの話、どうして彼処までこの世界と酷似させる事が出来たのかが不思議だ。

 データの世界に人間の魂が入り込める筈が無いんだから。




「やあ、皆。今日は絶好の授業日和で嬉しいね。じゃあ、改めて挨拶をしよう。先生の名はマナフ・アカー。見ての通りのエルフです。所属はアース王国ですが、生徒は平等に扱うので安心して下さい」


 僕達が校庭に着いた時、既に何人か他の生徒が集まっていて、アカー先生は授業の準備を終えていた。

 金属製の柵に囲まれた半径三メートル程の円の前で待っていた先生は全員が集まるなり笑顔で挨拶をしたけれど生徒の中には懐疑的な視線を送る人達も居た。


 それは王国と不仲な帝国出身のグループだったり、先生の見た目が子供だから腕を信用していなかったりと様々だ。


「……背伸びする美少年か。良いわね!」


「色々教えてあげたい気分」


 ……中には聞きたくない会話をしているグループも居るけれど、聞きたくないから忘れる事にしようか。


「さて、これで一年生全員の様子を見られるけれど……」


 注意すべきは他にも居るだろうけれど、ゲームでの攻略対象はそれなりに影響力が大きい連中だから特に注目が必要だ。


「お、おい。だ、大丈夫なんだよな!? 無様な姿を晒して陛下の怒りを買ったりは……」


 例えば一緒に留学して来た家臣らしい相手にヘタレな所をさらけ出している帝国から来た皇帝の弟。

 既に皇帝には後継ぎとなる子が居るし、敵国だった所に送られている時点で重要度は低いけれど何かあれば面子の為に帝国が動きかねない。

 寧ろ何かあるのを望まれている気さえするね。


 ……暗殺者が送り込まれるイベントが有った様な無かった様な。


 その他にも数人居るけれど一番は……僕達に向ける視線が少々敵意を滲ませている”マザコン王子”だ。


 アース王国第一王子ルトス・アース、”マザコン王子”はネット上の愛称だったけれど、この世界でも似た感じの陰口を叩かれている。


 ブロンドヘアーを伸ばした目元が涼しげな美形で立ち振る舞いも優雅に見える。

 その長髪は亡くなった母親を偲んで似せているんだけどね。


「……気分悪いわね。王子があんな態度取ってたら同じ国の地位の低い家の連中は目の前だけでも友好的になれないじゃない。……いや、すり寄って来るのが減って良かったのかしら? でも不愉快よ、不愉快」


 まあ、気持ちは分からなくもないけれど、母親が継母と比べられた上に謗りを受けるのは自業自得だろうにさ。


「リアスも結構同じ所有るよ? フリートが気に入らないのだって友達であるチェルシーの嫁ぎ先だからでしょ? 友達が他国に行くからってさ」


「……むぅ」


 僕の指摘に図星を指されたせいか頬を膨らませるリアスは可愛らしい。

 でも彼奴と一緒にするのは少し悪かったね。


 だって彼奴ってルートによっては実の妹に愛の告白をしての禁断愛の逃避行をする奴だし・・・・・・ゲームとは同一視しちゃ駄目なんだろうけどさ。



「じゃあ、早速だけれど今日は皆の力を見せて貰います。”ゴーレムクリエィション”!」


 マナフ先生は険悪なムードに気が付かないのか、気が付いて流しているのか平然と授業を進めている。

 鈍感なのか剛胆なのか分からないな、あの人。


 マナフ先生が魔法を発動させると地面が盛り上がって人の形を取る。

 土属性の魔法使いの基本的な魔法の一つで自在に動く人形を創り出して操る……僕も使いたい魔法だ。

 今目の前には二メートル程度の土人形が立っているけれど、材料さえ用意すれば金属製のゴーレムを創り出せるし、僕も使えれば前世のアニメで観たロボットとかを再現したい!


 ロケットパンチとか目からビーム出せる巨大ロボットとか男の子の夢だよね!


「これから三分間ゴーレムを倒し続けて貰い、撃破数でランクを付けさせて貰います。じゃあ、アイウエオ順で……」


 マナフ先生の話を聞きながら僕とリアスはゲームの事を思い出していた。


 ゴーレムは一定数ごとに強くなって行き、特定ターン経過か負けた時点で終了、ランクによって好感度が変わって来る。

 何だかんだ言っても実力の高い魔法使いは評価されるし、闇属性の使い手が冷遇されるのって使い手が少ないから指導者不足で強くなれない人が多いからじゃないのかな?


 僕達はラ行だから最後の方になる。

 アリアさんは最初の方だけれど他にも先な人が居るから見学しているけれど……。


「ぎゃんっ!?」


 授業開始前からビビっていた、アマーラ帝国皇帝の弟である”アイザック・アマーラ”は一体目を破壊した所で体力を使い果たして二体目の拳を脳天に喰らって負けてしまった。


 一緒に居た同国の人達は冷めた目で何かメモをしているし、この結果を報告する気だろう。

 ゲームでは詳しく描かれて居なかったけれど、どうやら帝国での扱いが随分と悪いのは報告通りらしい。

 良くも悪くも実力主義、力が無いけど身分が高い者に居場所は無いって感じなんだね……。



「うーん、次は頑張ろうか。今は力が足りなくても放課後に特別授業を行うから希望者は集まって下さいね。じゃあ、次はアリア・ルメスさん」


「は、はい!」


 アリアさんの名が呼ばれた瞬間、周囲がざわめき出した。



「黒髪に黒い瞳……闇属性か」


「王国に魔女が居るというのは本当だったんだ」


「クヴァイル家の者と一緒に居たが……」


 アリアさんを不気味がっているのとか嫌って蔑んでいるだけの連中はどうでも良いんだけれど、問題は注目して観察している連中だ。


 さて、この連中の前で僕はどれだけ力を見せるべきか……。


「早く私の番が来ないかな~。どうせだったら最高評価を貰いたいわよね」


 リアスには力を隠す気なんて微塵も無いし、僕だけ隠すのもな。

 ……どうせ学園に通っている間に力を振るう機会は多いし、ずっと隠し通すのも疲れるか。


「お兄様、競争よ」


「……了解」


 手の内を隠すとか色々と有るけれど、僕はお兄ちゃんだからね。

 競争だなんて遊びに誘われたらお兄ちゃんとして応えないって選択肢は無いんだ。



「じゃあ、今はアリアさんのお手並み拝見だね」


「私が鍛えてあげたのよ。最高ランク……は無理でも中の上は大丈夫じゃない?」


 確かに随分とスパルタだったし、それなりの評価は貰えるだろうけれど……。


「リアス、無茶させた事を反省している? レナに言いつけて良い?」


「ごめんなさい!」


 リアスは腕組みをして胸を張るけれど少しも反省していないのならお仕置きが足りなかったのかな?


「シャドーボール!」


 おっと、目を離しちゃった間にアリアさんのテストが始まっちゃったか。

 体の中心に闇魔法の球体を受けたゴーレムは動きを止めて土になって崩れ落ちる。

 続いて同じ個体が現れては倒される事数度、一回り大きいのが現れた。

 今度は一発中心に喰らっただけじゃ半壊程度、二発目で漸くか。


「……強いな」


「素人かと思ったが毛程度は生えていたか」


 それでも相手が近付くよりも前に倒して行き、さっきの帝国の連中もアイザックの介抱も放置しての観戦だ。

 酷いなぁ……。


 そして時間終了が迫る頃、最高難易度から二番目に強い大型のが現れた。

 騎士鎧に似た造形で五メートル程のそれにはシャドーボールは

表面を削るだけで、ダークショットはそれなりに削るけれど大きさが大きさだから大して効果が無い。


「……こうなったら」


 あっ、何かやるのかな?

 リアスは”ホーリージェベリン”を見せたみたいだし、似た感じかもね。



「シャドーランス!」


 その呪文を唱えた時、アリアさんの影が地面に広がって行った。

 まるで墨汁でもぶちまけたみたいに柵の中を満たし、先端が鋭利に尖った触手の様な物が周囲からゴーレムを串刺しにして、内部で枝分かれしたのか入った物よりも大量の先端が突き出した。




「えっぐ! あんなの喰らったら人間なんて確実に死ぬわよ」


「数値さえ残っていればゲームでは無事だけれど、急所を貫かれれば現実では死ぬよね」


「流石は主人公。最高レベル時のステイタス値……潜在能力はゲーム中トップだったらしいしね。私達の方が凄いけれど」


 ……うーん、これは僕も全力を出してみようかな?

 ちょっと気合い入っちゃった。

 

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