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ギャグ担当の秘密

 思えばこの妖精の国ターニアに来てから驚きの連続だったよ。まさかレキアが僕を婚約者として国民に紹介したり、物凄く引っ込み思案で人見知りだったニーアが婚約者を連れて来てたり、それがよりにもよって妖精からの感情が最悪のアース王国の貴族だったり、女王様が暫くは嘘だった婚約者の件を事実としておけって言って来たりだね。女王様、本気で僕とレキアの結婚を考えている?


 前から冗談めかしては言っていたけれど、お祖父様と話し合いを進めていたりして。レキアが意地っ張りで誇り高いし、下手に押し進めるんじゃなくって良好な関係で当人達に望ませるようにして……とか?


 あ、有り得る。……何度か考えたけれど貴族としてのロノスとしては断る理由は無くっても受け入れる理由なら多い。なら、個人としては? 王侯貴族の結婚に当人の意志は介入する余地は殆ど無い。まあ、家によって違うし、親子や夫婦の考えを考慮すれば仲の良い相手に越した事はないんだろうけれど、位が上になれば家の意志の方が強くなりがちだ。


 それを抜きにして考えてみよう。レキアとの結婚を個人的にどう考えるのか。……正直言って直ぐに答えが出せる事じゃないんだよな。ちょっと嫌われてるって最近まで思っていたし、今は友達だって認識だ。


 まあ、未だ決定した話じゃないんだけれど、考えて置かなくちゃならない話でもある。可能性があるって認識はしておかないとね。



 さて、色々と考えたんだけれど、後は……人間を滅ぼそうとする連中の幹部がメソメソ泣き出したりしてる事だね。


「う、うう……。私様はブスじゃないのじゃ。それに馬鹿でもないのじゃ。それなのに何奴も此奴も馬鹿だのブスだのと……」


 馬鹿は兎も角としてブスとは言っていないんだけれど、無粋って言葉を聞き間違えたのか、それともサマエルの事だから無粋って言葉が難しくって知らなかったのか、僕は後者だと思うんだけれど、まあ、本人は散々言われたショックからかボロボロと涙を流して泣き声を出している。うん、幼い少女の見た目通りに中身まで泣き虫の子供だね。


 サマエルが創造されてから封印されるまでの期間を古文書から読み解く限りじゃ結構な期間活動してるっぽいけれど、種族が違うから時間感覚も違うんだろうし、理由が分からないけれどそんな風に創造されたのだから中身は子供のままなんだろうね。今は堪えているけれど何時大声で泣き出すか分からないって姿を見ていたら気になるものだ。




「まあ、領地を襲った敵なんだけれどね」


「ひっく! え?」


 泣く事に意識を持って行っていたサマエルの周囲の空気を停めて即席の檻を作り出し、何が起きたのか理解する前に先端を鋭く尖らせた巨大な杭の形で空気を停止させた物を落とす。相手の見た目も中身も子供だろうと明確に人間を殺そうって意志を持って行動している奴相手に遠慮する理由は無いって事だ。


 周囲を覆う黒い檻に驚き、足下に出現した影に反応して天井を見上げたサマエルに向かって落下する巨大な杭。それは勢い良く落ちていったんだけれどサマエルの体を押し潰せてはいなかった。あの日傘、一体何で出来ているんだ?


「ぐぎぎぎぎっ!」


 落ちてきた杭を咄嗟に日傘で受け止めたサマエルだけれど無事ではない。膝が半分曲がり、歯を食いしばりながら腕をプルプルと震えさせている。こっちを涙目で睨んではいるけれど結構限界が近いみたいだ。


「レキア、僕はあの檻と杭の時間停止を魔力で妨害されないように維持するから攻撃はお願い出来るかい?」


「もうしている。侮るな」


 あっ、本当だ。既に檻の周りには放電を続ける電気の塊が幾つも浮かんでパチパチって音を出している。僕が檻を出した時点で直ぐに用意してたな、これは。


 正直言って助かった。時間を完全停止させているから硬度は高いし、落下速度を早送りで上げたから衝突時の威力は高くても結局は空気だから軽い。今は衝突の勢いで押し込んだ状態で檻と結合させる事でサマエルの動きを封じたけれど、前みたいに無理矢理解除されない為の維持で追撃は不可能だったんだ。



「良く分かったね。僕のする事がさ。君と僕とはさしずめ良いパートナーって所かな?」


「伊達に貴様の友を長い間していない。では、追撃をさせて貰おうか、サマエル! 此処に来た理由は……必要有るまい。……其処はベストパートナーと言うべきではないのか? いや、良い。どうせ”最高に可愛くて最強に頼もしい妹こそがベストパートナーだよ”とか言いそうだからな、シスコンめ」


「ええっ!? 何で分かったのさ!? レキアって僕の事を理解してくれているんだね」


「……分からないでか」


 確か”分からないでたまるか”って意味だったっけ? 苛立ちの混じった声と一緒に迸る電流は四方八方からサマエルへと向かって行き、その全身を貫いた。


「あばばばばばばばばばばばばばばばっ!}


 凄い威力の電撃に全身を貫かれたサマエルは間抜けささえ感じさせる悲鳴を上げるんだけれど、それと同時に服が透けて中身が見えていた。変な意味は無いよ。服も肌も肉も透けて全身骨格が見えたんだよ、マンガみたいに。


「……はい? おい、妾の目が変なのか? どうして電撃を食らっただけで骨が見える?」


「さ、さあ。そんな風に創られたんじゃない? 僕もリアスも修行中に電撃を受けた事はあるけれど骨が透けて見えた事は一切無かったし……」


 そう、マンガやゲームじゃ有るまいし電気が流れたからって骨が見えるとか有り得ない。その有り得ない現象が目の前で起きたんだから仕方ないんだけれどさ……。


 あっ、そう言えばゲーム中でアンダインが”眼鏡が本体”って呼ばれる理由であるダメージを受けた時の演出だけれど、彼奴の眼鏡が割れるみたいにサマエルも”お笑い紅一点”だなんて呼ばれるだけあってダメージ時の演出が多彩だった。火を受ければお尻に火が付いて走り回ったり、やられた時は頭に大きなタンコブを作った状態で目を回して星を出してて、雷系の攻撃を食らった時は骨が見えてたっけ。


 ……いや、あくまでゲームの演出でしょ? 何で実際に見えてるの!? ……所でラドゥーンも居るのにサマエルがどうして紅一点なんだっけ?


 しかし口に出しちゃったけれど、まさか本当にそんな風に創られているなんて有り得ない話だよね……。


「ははっ! 奴を調べたら面白い事が分かったぞ。存在に関わる根本的な部分に雷系の攻撃を食らえばああなる風になっている。随分と変わった設計だ」


 有り得たっ! 女王様からのまさかの情報! リュキって一体……。そしてそんなのに滅ぼすべきだと一時的にでも思われていた当時の人間って……。


「……何が有ればそんな設計に?」


「余が知るか」


 うん、女王様もそう思うよね。実際、どうしてそんな設定に? まさかゲームとかマンガとかがある世界を認識していて、神獣将を創り出す時に遊び心を加えたとか? いやいや、ゲームとしてこの世界の事を描いた世界から転生した僕が何を言ってるんだって話だけれどさ。……案外リュキがお姉ちゃんだったりして。いや、無いな。


「ぐ、ぐぬぅ! 私様によくも雷を浴びせてくれたな! 怒ったのじゃ! お仕置きなのじゃ!」


 電撃が収まった時、サマエルは端から少しずつ崩れ始めた檻の中で叫ぶ。思ったよりも保たなかったな。速攻で作った檻じゃサマエルの魔力に耐えられないって事か。


 ……ゲームと同じダメージ演出を見ていたらゲームと同じく和解が可能なんじゃって思えてくるけれど、それは楽観的考えだ。外れた時、どれだけ犠牲が出るか考えろ。




 見事にアフロになったサマエルを見ながら考える中、今度は無数の氷の槍がサマエルに矛先を向けて出現した。レキア、この機を逃さずに倒す気か。






「去れ、道化。もはや宴もたけなわ。貴様の出番は終わった」


 冷たい声で言い放つと同時に未だ檻の中から脱出出来ないサマエル目掛けて氷の槍が殺到する。肉を貫く音が響き、鮮血が激しく飛び散る。間違い無く獲物を仕留めたであろう一撃だ。これを一瞬で出すんだから妖精は恐ろしい。しかし……。





「……ちっ。手下が……いや、待て。其奴は……」


 しかし、槍が貫いたのはサマエルじゃなく、異形へと変身したヴァールだったんだ。

もうすぐ総合千二百 いけるかな!?

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