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主従逆転

 うん、何と言うべきか、人には言いにくいと言うべきか、まさか腹心の部下に押し倒されて肉体関係を持っちゃうなんて思わなかったよ。


 時間は過ぎ、互いに服を全部脱ぎ捨てた(僕は脱がされ捨てられた)後、長い時間を掛けて色々やった後で夜鶴は僕の上で眠っている。指を絡めた状態で手を握り、普段は束ねている髪も下ろしているし、雰囲気が違って見えるよ。


 まあ、自分を押し倒して強引に関係を持った相手が普段通りに見えたらそれはそれでどうかって話だけれどさ。


「前から暴走してその手の事を言い出しては真っ赤になって自爆していたのに、まさか媚薬効果のあるお香の原材料で……うん? 夜鶴って肉体は魔力で構成しているよね? だから毒とかは効かないし……」


 もしかして手にしてしまった物が何か気が付いた瞬間に自己暗示にでも掛かった? それで興奮した挙げ句に暴走して?


「よし! この事に関する考察は終了!」


 じゃないとポンコツ忍者レベルが止まる所を知らないし、主である僕が忘れてあげないと可哀想だ。数度頷いて頭に浮かんだ疑念を忘れ去った僕は改めて夜鶴の姿を見る。……うん、凄かった。


 最近どうも色々と刺激が多い出来事に遭遇して蓄積した物が媚薬の力で暴走した結果だけれど、僕は夜鶴を抱いたのか。いや、最初は一方的にやられていたんだけれど、開き直って楽しむ事にしてさ。この子、凄い純情な癖に知識とかは凄いみたいだし、一度始めたらノリノリで明らかにキャラが変わってしまって……。


「笑いながら”このまま主を籠絡してみせましょう! 今この時より貴方は私に虜になるのです。ベッドの上では主従が交代ですね”とか舌なめずりしながら言うんだもんな。起きて冷静になった時に覚えていたらどうなるんだろ?」


 これは暫く目を合わせて貰えないかもなあ。それはちょっと困る。それなりの付き合いだし、流石に寂しい。さて、だったらどうする? 夜鶴は僕を襲ってノリノリだった事でパニックになりそうだし……。



「それなら主が本体を襲えば良いのでは?」


「次は私達も一緒に!」


「大勢でやれば恥ずかしさも分散です!」


「やけに姿を見せないと思ったら、まさか最後まで見てた?」


 普段はこんな状況になったら一緒に参加するとか口にする夜達が行為の最中には全く姿を見せなかったのは疑問だったんだ。出払っているか抑え込んでるかだろうと思ったけれど、こうもあっさり出て来るって事はそういう事なんだろうし、問い掛けにあっさり頷いたよ。


「もう夜鶴の切り離した欲望の部分が君達じゃないかって思えて来たよ」


「まあまあ、落ち着いて下さい。それともお乳突っつきますか?」


「……え? まさか本気で今から始める気じゃ……」


 冗談だよね? 今、余韻に浸ってる所で、それなのに複数相手とかはちょっと……。


「いえ、本気ですよ?」


「だよねぇ……」


 一斉に服を脱いでベッドに上がる夜達。顔は同じなのに個性の芽生えの影響か違って見えて、別々の魅力が……。



 ノリノリの表情でテキパキと脱いでるのも居れば真面目そうな顔で照れながら網タイツ姿から先に行けないのも居て、中には脱ぎかけの状態で真っ赤になって止まっているのも。……既に始めている二人に関しては知らない振りをしようと思う。あれかな? 自己愛とか同性愛とかの部分が強く出た個体なのかも。


 ……うーん、この分体の元になったのは夜鶴だけれど、その夜鶴を打った鍛冶屋がどんな人だったのか本格的に気になって来た。本人からすれば意図せぬ結果がこの性格だったんだろうけれど。


「ささっ! 主、続きを致しましょう。本体を直ぐに起こして……いえ、後で良いですね。記憶は後で追体験させて貰うとして先に楽しんだのですし、次は私達の番です」


「僕の自由意志は?」


「据え膳食わぬは何とやら。貴族としてはそれで正しいのでしょうが、我等は主の所有物ですし、子を宿して後継ぎ問題に発展する事も無いのですし、さあさあ

! これだけの数の美女を一度に抱くなんて男冥利に……あれ?」


 僕の意思は後回しって感じで迫る夜達。これは夜鶴から興奮やら何やらが流れ込んだなって覚悟を決めたんだけれど言葉の途中で消えてしまう。ああ、夜鶴が起きて無理矢理分体を消したんだ。


「馬鹿共が。恥を知れ」


「……ちょっと惜しい気もするけれど助かったよ、夜鶴」


 夜達が居た場所に向けたのは鬼の形相。僕の方を向いた途端に女の子らしい物に一瞬で変わったけれど、器用だなあ。


「い、いえ、下僕として当然です。ですが主、それでもお褒めいただけるなら……お情けを再び頂ければ幸いです」


 僕と手を繋いだまま夜鶴は身を乗り出して唇を重ね、そのまま続きを始める。夜もすっかり更けちゃって眠りたいけれど寝かせてくれる雰囲気じゃないよね。困ったなあ……。


「ねえ、明日の夜に続きをする事にして、今日はもう……」


 体力的にはまだ可能だけれど、明日はテストだ。早起きして勉強する予定だし、こっちのお勉強は後日って方が良い。惜しいけれど。凄く惜しいけれど!


「明日になればヘタレの私が続きを行える精神状態になれるとでも?」


「全然思わないね」


 うん、絶対顔も見られない状態だ。散々大胆な言動しておいて朝になったら羞恥心にもだえる姿が浮かんだよ。うん、見てみたくはある。欲求が有るのに口に出せず、そんな事を考える自分に恥ずかしがる姿とか絶対可愛い。


「な、なので今晩は存分に主を感じさせて貰いますのでご容赦を!」


 まあ、良いか。少し意地悪して拒絶するのも悪いし、どうせだったら僕も存分に楽しませて貰おうっと。そうと決まればいっさい抵抗をせず夜鶴のなすがままに身を任せる。



 ……分体達も出して欲しいって言ったら怒るかな? 怒るだろうなあ……。せめて網タイツ姿とか希望しまーす。




 そして朝、目を覚ませば起きる予定だった時刻より少し早い位。でも暫く寝ていたい気分。いやー、ちょっと張り切り過ぎちゃって、途中で何度か攻守交代したんだよね。最終的に僕が負けたんだけれど。


「知識は向こうの方が上だったか。所詮簡単に手に入る官能小説程度の知識しかない僕とくノ一の夜鶴じゃ勝負にならなかったよ。向こうは人間じゃないってのも敗因だけれどさ……」


 そんな彼女は現在居ない。枕元には置き手紙。”少し頭を冷やして来ます”と震えた文字で書かれている。


「……取り敢えず部屋の中をどうにかしないと」


 部屋に充満した濃い臭いとか、この部屋で何かあったか分かる人には分かっちゃう感じだ。うん、流石にメイド達の間で情報が共有されるのはキッツイし、いざ隠蔽工作。窓を開け、時間を操作して空気を入れ換える。


「おっと、ポチの方に流れて行かないようにするとして、さっさと痕跡を隠そう。レナやパンドラ、リアスに知られるのはちょっと嫌だ。どんな反応をされるのやら……。おっと、ちょっと冷たい水で顔を洗ってサッパリしよう」


 僕が一定の時間まで寝ていたら水の入った容器を持ったメイドが入って来るけれど、起きて既に顔を洗っていたら持ってこない。つまりは部屋に入って来ないって事だ。よし。もう放置してたら臭いは消え去るだろうし、一旦放置して顔を洗いに……。




「おや、お早よう御座います、若様。本日もいい天気でなによりですね」


「う、うん、お早う」


 そして部屋を出て直ぐの所でパンドラと遭遇。そして今更気が付いた。部屋の中だけじゃなく、僕にも臭いが染み着いているって。


 気が付くな。お願いだから気が付かないで!


「……成る程。昨夜は色々とあったようですね」


 あっ、速攻で気付かれた。鼻を何度か動かして納得のご様子のパンドラ。これは何かお小言かと思いきや、急に抱き付かれた。


 髪から漂う香り。夜鶴とは別の体の感触に僕がドキドキする中、耳にふっと息が吐きかけられる。そして甘え声で囁かれた。




「時期を見てお知らせしますので、その時は私も可愛がって下さいね? 色々と準備をして時期を待っています」


 普段真面目で知的クールなパンドラが見せる誘惑の仕草。夜鶴とは別の色気が有った……。

ブクマとか応援待ってます

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