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ギヌスの民 ①

短編書いてます


別サイトでブクマ1000突破 こっちも伸びてます

「先ずは俺の先祖の出身についてだが……お前には言うまでも無いか。何せお前の祖母も同じギヌスの民だからな」


「あの人にはお祖父様以上に会う機会が少ないんだけれどね。今頃何をやっているのやら……」


 リュウさんの所には夜鶴の新しい武器の依頼に来たのに変な地雷を踏んじゃって困るよ。この人、尊敬する先祖について語り始めると酔っ払いの武勇伝位にしつこいんだからさ。

 僕は聞いている振りをしながらも頭の中で他の事を考えてやり過ごす。工房は凄く暑いけれど我慢出来る範疇だし、正座だって鍛えている僕には平気だ。


 ただ、夜鶴はなあ……。


「リ、リュウ殿。足を崩しても良いでしょうか? 私、正座には不慣れでして……」


 忍者の”忍”って耐え忍ぶの”忍”だった気がするんだけれど、普段はお仕事大好きで一切の私事を忘れ去るのに、こうやってプライベートだと彼女は真逆だ。刀の整備をする時だって敏感に反応してエッロい声を抑えきれないし、今もすっかり足が痺れたらしい。

 本当に残念なくノ一なんだから、この子はさ……。


「お前、その体は魔力で構成しているだけだろう……」


「……無様」


 リュウさん、ごもっともです。でも、あくまで本体が刀だから人の体の感覚に不慣れなだけなんだ。許して上げて。

 そしてミリアムも指先で足を突っつくのは止めて欲しい。可哀想だからね。声に出さずに悶えているんだからさ。



 ……それにしてもギヌスの民か。僕にトラウマを植え付けた彼女を含めて深く付き合って行かなくちゃ駄目なんだよね。何というかリアスの単純さは恐らくお祖母様の遺伝だと思う。

 だってギヌスの民は基本的にレナスみたいな戦闘狂が多くって、性欲に奔放だからね。僕が逆レイプさせられたのもそんな所がが関係している訳だしさ。



「……ああ、これから長くなるから先に言っておこう。ギヌスの民から大量の発注が有ったが、その際に支払いは貴重な素材で払うと言って来た。どうやら大規模な狩りをする予定らしい。ナギ族の族長の娘が持ってくるらしいが、確かお前の許嫁だったな。……どうした?」


「パパ、駄目よ。彼、あの女がトラウマ。襲われ掛けたってマオ・ニュさんが話したじゃない」


「……すまん」


「ここぞって時に言わないと面白くないわ」


「……本当にすまん」

 ギヌスの民は元を正せば東の大陸全土を支配する”桃幻郷(とうげんきょう)”から追放された人達が集まった傭兵集団だ。

 レナスみたいな鬼族が中心になった”ナミ”と獣人が中心になった”ナギ族”の代表が全体を纏め、元々好戦的な種族だから長い間色々やらかした結果、安住の地を子孫が求めても何処も受け入れなかったんだ。

 そう、クヴァイル家を継いだばかりのお祖父様が受け入れる迄は……。


 色々と問題はあったらしいけれど今じゃ防衛の要になっているし、長い間ずっと敵対関係にある桃幻郷の牽制だってギヌスの民が中心だ。……所で源じゃなくって幻なんだね。




「顔合わせ? 急だなぁ……」


「ご馳走! ご馳走は食べられるの? 屋敷で出る丁寧な奴じゃなくって豪快な奴!」


「まあ、歓迎の宴で結構な物が出るんじゃないのかい? レナも別の職場での研修がなけりゃ連れて行ってやったんだけどね」


「でも四人は乗れないんじゃないの?」


「ロープで縛って吊せば良いだけさ」


 それは数年前の事、僕とリアスは朝早く起こされたかと思うと戻って来ていたレナスの相棒でポチの父親であるタローに乗って屋敷からずっと離れた場所に向かっていたんだけれど、訳も言わずに連れ出したかと思ったら”ギヌスの民との顔合わせだ”って言うんだから驚いたよ。


 因みに僕とリアスをロープで引っ張って森の中の荒れ道を走らせたのはタローの奥さんだ。今は仕事先で待機らしい。ポチも母親に会いたかっただろうにさ。


 ……あの凄くキュートで素直で賢いポチとお喋りがしたい。アンリみたいにどうにかならないかな? ……妖精の魔法なら出来そうだけれどレキアには嫌われているし、女王様には簡単に会えないし無理だよね、残念。



「それにしても急だね。一時帰宅したと思ったら二日後に連れ出してから理由を言うだなんてさ」


「……あー、帰った日に言うつもりだったのを忘れてたよ。悪いね」


 お祖父様は三人と結婚しているけれど、僕とリアスの祖母がギヌスの民だって聞いているし、向こうから会いに来た事はあるんだけれど普段はギヌスの民の集落で暮らしているから縁が薄い。

 でも、ギヌスの民はクヴァイル家と縁が深いし、ナミ族のお祖母様がお祖父様に嫁いだから次はナギ族から嫁ぐ予定だとは聞いていたけれど、まさか事前予告無しに向かうだなんて。


 リアスは単純に普段食べていない料理を楽しみにしているけれど、僕は少し緊張していた。そんな時、穏やかな声が背後からしたんだ。


「あらあら、ちゃんと言っていなかっただなんて駄目じゃないですか、レナス。ちゃんと伝えるように言ったのに、後から伝えるって酒を飲んで、それで結局忘れているだなんて。リアスちゃんも楽しみなのは分かりますが御館様の顔を潰す真似は駄目ですよ?」


「は、はい!」


「良い返事ですね。良い子良い子」


 一切の敵意を感じさせない穏やかな笑みと声、そして僕たちより年下に見える外見。レナスの相棒であるマオ・ニュだ。彼女も飼い慣らしたドラゴンに乗って同行しているんだけれど、何故か彼女の乗っている黒いドラゴンだけ奇形で生まれたとかで前世のゲームやマンガに出るタイプの普通のドラゴンだ。いや、ペンギンがどう奇形になったらドラゴンになるんだろう? しかも凶暴そうな見た目だしさ……。


 マオ・ニュに窘められて素直に返事をしたリアスだけれど、僅かに怯えている。うん、気持ちは分かるよ。僕だってマオ・ニュが怖い。だってゲームの設定では僕達を殺そうとしてレナスと相打ちになった人だし、お祖父様への忠義が異常なレベルで、既に必要なら殺すって伝えられている。


 ”優しく殺すので安心して下さい”なんて殺気を向けながら言われても安心出来ないし、その後でお祖父様の身内を殺した罪を背負って自害するって告げられても余計に怖いだけだ。


 そんな理由で僕とリアスはマオ・ニュが苦手だ。ゲームの知識関係無く、人の良さそうな態度と口調のまま敵を殺す姿を見せられた事も有るんだからさ。あの時、僕達を狙って来た刺客だったとしても普段と全く態度を変えずに殺すマオ・ニュの姿は恐怖と共に刻み込まれている。


 ……普段は本当に感じの良いお姉さ……いや、レナスと同年代か。


「ロノス君、駄目ですからね? 女性の扱いは紳士の嗜みですよ?」


「はい! ごめんなさい!」


 笑顔が怖いし、普通に心読むのも怖いし、本当にこの人は……。



「あっ! 見えて来たわね」


 リアスが指差した先には何処までも広がる大海原と、海辺に築かれた木造の建築物。いや、よく見れば船だ。幾つもの船が繋がれて、その上に住宅が有るんだ。海の上に集落が有るって聞いていたけれど、まさかこんな感じだったなんて驚きだ。


 その船の一つ、広場代わりなのか建物が無い場所に人が集まっていて、僕達はその場所に向かって降りて行く。


「楽しみね、お兄様!」



 獣人自体は何度か会った事があるし、最近雇ったメイドのツクシだって猫の獣人だ。面倒なのか不得手なのか常に猫の耳と尻尾を出している。本来はレナが角を隠しているみたいな感じで消耗を抑える為に必要な時だけ変身みたいに出すとか。


 実際、僕達を待っている人達は一見すればヒューマンだ。でも一人だけウサギの耳が生えている女の子が居たんだけれど、特徴的なのはもう一つ……。



「……けっ!」


「リアスちゃん?」


 リアスがマオ・ニュの前で悪態をつく程に彼女の胸は大きかった……。


 


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