あちちち札幌味噌ラーメン!
ぼくたちが行きついたのは、一軒の古ぼけたお店。ラーメン屋さんですって看板もない。不親切なお店だ!
慣れたように、ガラガラとガラスの扉をあけるおじいさん。その場のみんなが「よっ!」なんて言うものだから、つい釣られて同じように返しちゃった。
「味噌五杯」
「あいよ」
これまたしわくちゃのおじいさんの店主が、ラーメンの汁を切りながら白い歯を見せて笑った。おかしいな、辞典には、何かを注文するとき、
「〇〇ください」
ってお願いするんじゃなかったかな?
ちょっと高い位置に椅子があるカウンターってところに座って、札幌味噌ラーメンを待とっか。
ぐつぐつぐつぐつ。
トントントン。
シャカシャカ。
いろんな音があって楽しいね。
ラーメン屋さんサイコー!
「はいよ! 味噌お待ち!」
……え?
なにこれ。
「土星が溶けてる!」
ヴィヴァーチェが目をまんまるにして驚いているよ。レントは……、一足先に器ごと溶けた土星を飲んでみたみたい。
「あっつうううい!?」
レントが器を置いて舌をベーッと出した。
どうやら札幌味噌ラーメンを食べるのには何か特殊な力が必要なんだ!
そうでしょ、君。
……どうして笑うのさ。こうなることがわかってたみたいに。
あ。白いそれ何? レンゲ?
ふうふうして――食べる。
「おいしいや」
もー、どうして最初に教えてくれなかったのー。
じゃあ、いろいろ聞いていい?
このくるくるしてる白と赤のギザギザなぁに。
レンゲで飲んだ土星はどうやってできてるの。
薄くて切り株みたいなホロホロはなぁに。
ふにゃふにゃしててシャキシャキしてるこれはいったいなに。
くたびれた木が浮いてるけど、食べられるの、コレ。
へー!
知らなかったなぁ。
全部答えられるなんて。君って物知りだね!
え。食べ終わった後の言葉?
うん、わかったよ!
「ごちそうさまでした!」
「ありがとう。ガキの分はオマケだよ!」
店主さんが言うオマケって、お金を払わなくても良いことなんだぁ!
こどもはお金を払わなくていいんだね。良いこと知った!
「じゃあな。季節外れのおちびちゃんたち」
おじいさんがニコニコしながら、ぼくたちをもとの場所へと返してくれた。去っていくおじいさんの後姿を両手いっぱいに見送りながら、ちらりとスールズの方を見ると……
「ぎゃふん(退屈な旅だ)」
不機嫌そうなスールズが居た。
ごめんって。次はどこに行こうか。日本といえば首都が気になるなぁ。確か、えーと……。
そう。東京!
ねぇねぇ、今度はぼくのお願いを聞いてよ!
ヴィヴァーチェとレント二人だけのお願い事が叶うなんてずるいや!
いいでしょー。
え。いいって!? わーい!
ありがとう。そうとなったらさっそくスールズの出番だ!
東京までひとっとびだぞー‼