なんとか丸と……ニッポン?
じゃぷじゃぷ。
蒼い空を弧を描いて飛びまわる鳥さん。
や、やめろー! スールズをつっつくなー。
「ぎゃふん(散らしていいか)?」
スールズが不機嫌そうに羽を広げて海水を穿った。それは大きな大きな波しぶきとなって、鳥さんたちだけじゃなく、多くの魚さんたちを吹っ飛ばしちゃった。
なんとか海水を飲もうとするヴィヴァーチェ。
あ。目に入っちゃった。いたたたた。何だか不思議なにおいがする……。
改めて嗅いでみると、海って、運動した後の服の匂いみたい。
君はどう思った?
へへ。しょっぱいね。
「あ。船があたふたしてる」
マイペースなレントは、ボーっと動物たちの動きを追っていた。そうしたらスールズの起こした波に、ヒトの船が巻き込まれたことを発見したみたい。心配そうにしているよ。
「なんとか丸って書いてある! 助けよう、ぼくちゃん!」
なんとか丸……。どこの国の船だろう。
え。そんなこと考えている場合じゃないって?
そうだね、今すぐ助けに行こう!
スールズはできるだけ上空をゆっくり進んだ。波を立てないように。上空から見たらどうやら船に乗っているヒトは、みんな倒れて気絶しちゃってるみたい。
……ん。魚が沢山。
そっかぁ、これが漁師さんっていう仕事のヒトの持っている漁船なんだね。
「ぼくちゃん、近くに島が見えるよ」
レントが珍しく興奮気味でぼくに話しかける。
ねぇ、スールズ。この島は何なの?
「ぎゃふん(地図によると“日本”だ)」
「ニッポン……」
みんな不思議そう。
え、君の方が詳しいって?
首都はどこ。おいしい食べ物はあるの。どんな動物がいるの?
……質問が多くなってごめんね。
まずは、漁師さんたちを助けないと。
「スールズ!」
「ぎゃふん(わかってる)」
大精霊様の加護で、スールズの姿はヒトには見えない。地球上ではただの風のような存在になるんだ。すごいでしょ。
スールズが風を起こしながら、船を陸の方へと誘っているよ。
いったいどこへと流れていくのかな。
「ぎゃふん(北海道)」
「えー! 言っちゃうのー」
ぼくたちは少し頬を膨らませた。
こういうことは着くまでのお楽しみにしたかったからだ。
君は知ってる? 北海道。
スールズにも負けないぐらい大きな島……。
「ぎゃふ(札幌味噌ラーメンがおいしいですよ。と大精霊様が言っていた)」
「食べ物!? おいしいの?」
レントが食いついた。
ごめんね。今度はこいつの都合に合わせてもらうことになりそう。
漁師さんたちを無事陸に届けた。
君は好きかな。札幌味噌ラーメン。
大精霊様のお言葉だもん。絶対においしいよね♪
今のうちにお金を“円”に変えておかないと。
え、いやこっちの話。君は旅を楽しめばいいんだよー。