宇宙をかけるぼくたち。
「ぎゃふん(しっかり掴まってろよ)」
光の速さでびゅびゅんと宇宙を泳ぐぼくたち。大丈夫。大精霊様の加護を受けているから、体が燃えることも、吹っ飛ばされることも、ぺっちゃんこになることもないから!
ブラックホールが太陽系への入口さ。地球のヒトには教えちゃだめだよ!
それより見て。
宇宙には石ころが沢山。これみんな地球から見たらお星さまになるんだよ。早く行きたいね、地球。おっと。あちち、太陽の光が見えてきた。
スールズ、近寄りすぎちゃだめだよ。溶けちゃうからね。
ま。言わなくてもわかるか。
おぉすごいや!
太陽系に入って真っ黒だった宇宙から眩しい光が生まれたよ。
あれが地球。君の生まれた場所。
片側の地球が影って、もう片方が蒼く輝いているね。きれいだなぁ。
君は知ってる?
地球には二つの宇宙があるんだ。
一つはここ。太陽系も含めた本物の宇宙。そしてもう一つが、ヒトの造り上げた灯り。地上の宇宙。ヒトってすごいね。どうやって造ったんだろう?
「ぎゃふん(まずは一周するか)」
スールズの動きが次第にゆっくりになっていく。
「太平洋の水飲んでみたいな!」
話を聞いていない様子のヴィヴァーチェ。
どうしようか。
彼女に合わせてあげる?
え、迷ってるって?
レントは地球のことがおいしそうだって。
天鉱飴に似ているからかなぁ。
じゃあ、ヴィヴァーチェに合わせてあげよっか。優しいね、君。
「スールズ、太平洋! ほらほら!」
「ぎゃふん(太平洋ならどこでも良いんだな)」
ちょっと強引だけど、ヴィヴァーチェは満足そう。
なんかごめんね。合わせてもらって。
君も楽しめたらいいけれど……。
「ぎゃふん(歯を食いしばれよ)!」
ぼくたちは光の速さで進んだ。宇宙ステーションや人工衛星たちにバレないような速さで。
これも大精霊様の加護のおかげさ。君は何の心配もない。
旅を楽しんでね!
さぁ、瞬きをしたらもうそこは大きな大きな太平洋だ!