大精霊様に会いに行こう。
さて。準備といっても、地球で一番大事なのはなんだろう?
この世界で一番偉い、大精霊様に聞いてみよう。
大精霊様はエルフィナ族みたいな容姿だけれど、不死身で物知りで、地球のことをよく知っている。そして不思議な魔法も使えるんだ。
すごいでしょ、えっへん。
そうとなれば、レントとヴィヴァーチェと一緒に、スールズに乗って大精霊様のいる祠に案内しようかな。ちょっと狭くなるけれど大丈夫?
大丈夫か。だってスールズは大きいもの。
さぁ、木で出来た階段を上ってもこもこの毛を掴んで。君が特等席だよ!
「ぎゃふ(重い)……」
「気力が足りない! ドラゴ族の誇りを持って!」
ヴィヴァーチェがベチべチとスールズを右手で叩いている。ちょっと、かわいそう。相棒はもう結構いい歳なのに。でも怒ったりしない。いつものことだからだ。
「まぁまぁ、天鉱飴でも舐めてれば落ち着くよ」
「おまえはエルフィナ族の誇りを持って!」
レントは差し出した天鉱飴をじっと見つめると、パクっとそれを自分の口の中に入れた。なんだか、ほわーっとしてる。こいつはいつもしあわせそうだ。
◇
――びゅおおおおおお!
大精霊様の居場所は少し遠い。だから、少し飛ばしてって言ったらこれだ。
大丈夫? 振り落とされないようにね。
あともうちょっとだから。
「ぎゃふ(ほいよ)」
急ブレーキ。
その勢いで、ヴィヴァーチェの矢の何本かが祠の付近に落ちてしまった。レントの天鉱飴たちも。
「誰です。物騒な」
「あ、大精霊様! ごめんなさーい!」
誰よりも謝るのが早いのもヴィヴァーチェのいい所。
それにしても不思議な存在だなぁ。大精霊様は。
風もないのに、長くて白い髪がまるで地球のクラゲのようにうねっていて、面白い――と思っていたら、ザクロのような紅い瞳でぎろっと睨まれた。
「取り敢えず、降りてきなさい」
「ぎゃふ(叱られるな)」
相棒は鼻でフッと笑った。
どうして。ぼくは悪いことしてないもんー。
いやだいやだ、降りたくなーい!
ね。君もそうだよね?
え。大精霊様に会いたいって。
……誘ったのはぼくたちだもんね。降伏するよ。はぁあ。