翻訳機もビックリな大阪弁。
東京とおさらばしたぼくたちは今、大阪を見下ろしている。
ギラギラピカピカだぁ!
どこか降りるところ。
あ。
あれって通天閣じゃない?
いろんな色がチカチカしてる!
「ぎゃふん(降りるか?)」
「うん。今度は優しく降ろしてよ」
もう夜だ。通天閣の上には誰もいない。
チャンス!
スールズの尻尾が通天閣のぼこっとした部分に合わさったのを確認するぼくたち。
みんなで手を繋いで綱渡り。いや尻尾渡り。
大丈夫? 怖くない?
下は見ちゃだめだよ!
「ぎゃふん(うまそうな匂いだ)」
スールズったら。のんきに空気を食べたりして。
でも……なんだかとても刺激的なにおいがするぞ!
それに何あのお魚! 大きいね!
“づぼらや”?
魔法の呪文かなぁ。
「ねぇ、どうしてスールズは大阪に行きたいと思ったの?」
「ぎゃふん(新世界って名前が気に入った。それだけだ)」
へぇー。
ここって“新世界”っていうのかぁ。
日本の中にはもう一つの世界の入り口があったんだね。
ギラギラの、ピカピカの、新世界。
突入ー!
「こらー。ここで何してるんだい」
大変だ! ヒトに見つかった。
どうしよう、どうしよう。
あ。
でもこの人が居ないと、通天閣から降りられないし……。
きっとこの服装は、警備員さんだ。
変な人について行っちゃいけないけど、このヒトなら大丈夫かなぁ。
君はどう思う?
あぁ!
かくれんぼをしていたら取り残されたって言えばいいんだね!
いい考えだぞー。
「仕方ないな。ちょっとまっておき……や」
や?
おかしいな。翻訳機能がちょっと誤作動を起こしているみたい。
「君たちはどこからきたんです……ん?」
わかりづらーい!
音楽みたいに話す大阪のヒト。言葉ってメロディ?
「づぼらや!」
「おー。良いボケだ……や!」
摩訶不思議な言葉で相手を脅かしてやろうと思ったら、わはははって笑われた。くそぅ。大阪のヒトは何でも笑いに変えちゃうって辞書に書いてあった。
口をぷくっと膨らませるぼくたち。
「君たちがフグになってどうするんです……や!」
さらにぷくー!
失礼なおじさんにはあっかんベーだ。
――ってすごいヒトの数!
迷子にならないように気をつけなきゃ。
とにかく新世界は、新世界だった。
ギラギラ、ピカピカ、ででーん!
ねぇ。きみは知っているんでしょ。あの、宇宙人の赤ちゃんみたいな目のギュっとした置物の名前。教えてよ!
……ビリケン。
ビリケン。
づぼらや。
新世界は、ぼくの知らない言葉でいっぱいだ。
「ねぇ、ぼくちゃん。とにかく何か食べて行こう!」
レントは動きはのろいのに、消化は早い。
ヴィヴァーチェがビリケンの体をツンツンしている。
もう、みんな別行動しすぎー。
君はどのお店に入りたい?
何、串カツ?
それっておいしいの?
じゃあ目の前にある“だるま”ってお店に行こう!
づぼらやの看板は永遠に新世界のシンボル……。