結局コーヒーって何だったんだろう?
ぼくは戦慄した。
ここはとてもピカピカしてて、スラッとしたお姉さんが多い。
負けじとヴィヴァーチェが背伸びをしているよ。
「コーヒーください」
あ。レントってば。勝手にお金を持ち出して……。
「こちらのメニューからお選びください」
ん?
んんんんんん?
コーヒーってどこにあるの?
「オイラこのオレンジのがいい!」
「大学芋フラペチーノですね」
「あ、でも……」
レントがすごく迷っている。
これがコーヒーなの?
ぼくも迷っちゃった。君が選んでくれると嬉しいな♪
カフェアメリカーノ。
「サイズは何にしますか?」
ヴィヴァーチェと二人で、首をかしげるぼく。
「ぼくちゃん。後ろ……」
きれいなお姉さんが、そっとぼくたちに教えてくれた。
「トールがおすすめのサイズよ」
うわわわ!
もっと混んできちゃった……!
早く頼まないとね。え、君はレントと同じのが良いの?
ヴィヴァーチェも?
ぼくだけ? この黒いの飲むのー?
まぁいいや。みんなの分のお会計が出たよ。
レントとヴィヴァーチェはアーモンドミルクを追加したみたい。
追加って出来たんだ。へー。
まぁいいや。合計……
2千円を超えるの!?
払えないことはないけれど、うーん。
あ!
オマケがあるじゃないか。
「お会計が無いとドリンクを提供はできません」
ええ!
こどもは無料で良かったんじゃないの?
北海道の行きつけのお店はそうだったよ?
決まり……ルール。
うん。分かった。
謎の箱の中に吸い込まれていくお札。
小銭がバラバラと吐き出されてくる。
なんか、ばっちいなぁ。
「こちらレシートと、ドリンク引換券です。出来上がったら交換してください」
笑顔で対応してくれてるけれど、お金を払わなかったら、このヒトはどんな顔をするんだろう。困った顔? 怒った顔? それとも呆れた顔?
ちょうど四人掛けの机があったよ!
一緒に飲もう♪
……。
……。
――!
「にっがーい!」
「甘いー♪」
くっそぉ。どうして僕のだけ苦いんだよ!
あ。笑った。
君はこうなることを分かってぼくをはめたな。
ゆるすまじ!
「ねぇねぇ、スールズへのお土産が決まってない!」
「あー……この紙でいいんじゃない」
「ぼくちゃんがすねてるーぷぷぷー」
むむむむ。
意外と量が多くて、長居してしまった。
外は茜色に焼かれていて、綺麗だ。
でももう、スカイツリーへと戻らないと。
「ねぇ。本当にお土産それで良いの?」
「ふーんだ」
「あー、ぼくちゃんってば無視する! きらい!」
「まぁまぁ喧嘩はだめだよ」
……。
にらめっこするぼくとヴィヴァーチェ。
レントと君が言うから、仲良くしてあげたんだよ。ほんとだよ。
なんて言っているうちに喧嘩のことなんて忘れて、スカイツリーの上空に行くぼくたち。
「――ぎゃふん(なんだそれ)……」
ごめん。ぼくにも分からない。
「ぎゃふ(今度は俺の番だ)」
「わー!」
風でぶわっと浮かされて、強制的にみんながスールズのフサフサの背中の上にのった。風が心地いい。箱のような建物に明かりがつき始めた。
東京のヒトは夜行生なのかな。
ところで、スールズは次にどこへ行きたいの?
君も聞いてみよう!
せーの!
「――ぎゃふん(大阪だ)!」
スールズの起こした風によって、薄いレシートは深い深い都会の森へと消えていった。