第四章 第十一節 ~ 命と誇りと信念を賭けて ~
☯
「……来たな」
「おう、待たせたな!」
リオナ達が第20層に姿を見せるや否や、瓦礫に足を組んで座っていたドモスは、鋭い視線を二人に向けた。
その傍らには、禍々しい三つの碧眼を不気味に光らせるウォーリアが控えている。
この三日間でHPは回復したのか、体色は赤から青に戻っていた。
剝き出しの殺気を放ってくるドモス達に、リオナはおどけた様子で言った。
「ハハ、手厚い出迎えをありがとよ! 歓迎されてるようで何よりだぜ!」
「ああ、待っていたとも……。今度こそ、この手で貴様を葬り去る為になッ‼‼」
ドモスが大剣を引き抜きつつ立ち上がる。
それに呼応するように、そばで控えていたウォーリアが「グルル……」と低い唸り声を上げた。
「う……相変わらず凄い迫力ですね……!」
「……ミラ、狐ロリはいるか?」
ドモスとウォーリアの動向に気を配るリオナに代わり、ミラが部屋全体を見渡す。
赤褐色のキツネ耳少女は、隅の瓦礫の上に横たわっていた。
「リィさんっ‼‼」
彼女の姿を認めたミラが思わず叫ぶ。
一瞬、死んでいるのではないかと思ったが、ミラの声が届いた途端、キツネ耳がピクッと動き、続けて眠たげな眼をこすりながら、リィはゆっくりと身体を起こした。
「……ウサギのお姉さん……?」
状況がまだ掴めていないのか、何処かぼんやりとした様子で目をパチクリさせるリィ。
一先ずは無事な様子に、ミラはホッと胸をなで下ろした。
(よかった……単に眠っていただけのようです……)
「……リィさん、少しだけ待っていてください。すぐにこの戦いは終わらせて、≪サンディ≫の街まで安全に連れ帰って差し上げますから……!」
リィを安心させるように、ミラが柔らかな微笑を見せる。
その隣で、リオナはくつくつと哄笑を噛み殺していた。
「……『すぐにこの戦いは終わらせる』、ねえ。随分な自信だな、オイ?」
「えっ⁉ いや、そういう意味で言ったわけでは……!」
わたわたと慌てふためくミラに、リオナがケラケラと笑う。
「やっぱコイツをイジってんのは楽しいな」と思いつつ、ミラの茶髪をぐしぐしと撫でてやった。
「ん……何ですか?」
「腹括れよ、ミラ。この作戦はテメェの魔法が成功しなきゃ始まらねえ。〝魔術師〟のセオリー通り、兎に角被弾しないよう距離を取って、確実にキメてみせやがれ」
荒々しい、けれども妙にウサ耳に心地良い激励の言葉に、ミラの胸の内が熱くなる。
彼女の言葉を反芻するように、ミラはしっかりと頷いた。
「……はいっ!」
ミラの迷いの無い返事を合図に、二人は臨戦態勢のドモス達に相対した。
何処か余裕すら感じられる風貌で、リオナが挑発的に口を開く。
「さあ、かかって来いよ、ボス猿共! この前はしくじっちまったが、今度こそきっちり落とし前つけさせてもらうぜ⁉」
「フ……死にかけたと言うのに、恐怖すら感じねえ、か。その胆力は称賛に値するッ‼」
ドモスの言葉に力が篭もると同時、彼はウォーリアと共に、一斉にリオナ達に強襲を仕掛けてきた。
猛スピードで迫る巨体は、ダンプカー並みの迫力と威圧感がある。
戦いの気配に脳髄が痺れるような快感を感じつつ、リオナは拳を構えた。
「いいぜいいぜ! テメェらがどんな手を使って来ようが、正面からまとめてぶちのめしてやらあッ‼‼」
彼女の咆哮が、天井の無くなった第20層に遠く、高く響いた。
演出の為にずっと座って待ってたのかな?
身体痛いだろうな……




