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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第四章 「その異世界人、消息不明につき」
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第四章 第六節 ~ 僅かな手がかり ~


     ☯


 その後も(しばら)く、ミラは≪サンディ≫の街でリオナを探し歩いた。

 望み薄とわかっていながらも、思い当たる箇所を片っ端から調べて回った。

 何かしていないと、また泣き出してしまいそうだった。


 そうして(ようや)く日も暮れかけた頃、ミラはギルドに戻って、併設された大衆食堂で夕食を取っていた。

 食欲など湧かないが、腹に何か入れておかなければ、いざという時に動けない。

 適当に〝トマトの冷製パスタ〟を注文し、機械的な動作でフォークを口に運ぶ。


 黙々と食事を進めていると、その隣に誰かの気配が近付いて来た。


「隣、いいかい?」


 一度食事の手を止めて声のした方を振り向くと、ハイドルクセンが〝グリルチキンセット〟を手に立っていた。


「ええ、どうぞ……」


「失礼するよ」


 ハイドルクセンが椅子に腰かけ、食事を始める。

 暫く丸焼きにされたチキンの解体作業に勤しんでいたが、


「……リオナちゃんは見つかったかい?」


「……それが……」


「……そうか。見つからなかったのか」


「はい……。もうこんな時間ですし、戻って来ていてもおかしくないのですが……。何処(どこ)を探しても、何処にもいないんですっ! そりゃ、リオナさんは私なんかより、(はる)かに賢くてお強い方ですよ……? でも、私、リオナさんの身に何かあったんじゃないかって、もう気が気でなくて……っ!」


「………………」


 フォークを握り締め、嗚咽(おえつ)を漏らすミラ。

 彼女にかけるべき言葉を、ハイドルクセンは見つけられなかった。

 どんな気休めを言ったところで、彼女の心を落ち着かせることはできないとわかっていたからである。




 だから、ハイドルクセンは気休めなどではない客観的な事実を述べた。




「……こちらでも少し情報を集めてみたのだがね――」


 ハイドルクセンが解体し終わったチキンの手羽の部分を持ちながら、何処か遠くを見るような瞳で言った。


「……ここから西の方角――≪怪鳥の渓谷≫で〝金髪で容姿端麗の獅子人族(ライオネル)〟を見た、という情報をイヌ耳に挟んだ」


「! それは……」


「まあ、それだけではリオナちゃんかどうか判別つかないが……。≪怪鳥の渓谷≫は推奨レベル50以上の高難易度ダンジョン。この周辺であそこに挑めそうな冒険者は、数が限られてくる。リオナちゃんのような実力者なら()(かく)、普通の冒険者はあそこに近付こうとも思うまい」


「なら……!」


 ミラの赤い瞳に僅かに希望の光が戻る。

 ハイドルクセンは優しく微笑(ほほえ)み、


「ああ、可能性はあるだろう?」


「……!」


 ハイドルクセンの話を聞いて、ミラは強張(こわば)っていた身体がスゥと軽くなるのを感じた。


 彼の持って来た情報は曖昧で不確かなものだが、それでも希望が無いよりは遥かに良い。

 最早再開は望めないかもしれないと思って、ずっと塞ぎ込んでいたミラには、ウサ耳寄りな情報だった。


 (はや)る気持ちを懸命に抑え、ミラはハイドルクセンに()き返した。


「そ、その情報の出は……⁉」


「≪怪鳥の渓谷≫のすぐ近くにある街、≪ボーパル≫のギルドマスターからだよ。今日偶々(たまたま)この街に来ていて、会って話をしたんだ。フフ、街では見かけない超絶美少女がいたものだから、珍しく思ったんだろうね」


 ハイドルクセンが軽く肩を揺らす。


 ギルドマスターの話というのであれば、信憑性(しんぴょうせい)もかなり上がってくる。

 ミラはじわ……と瞳が熱くなった。


(リオナさんは、まだ生きている……!)


「あ、ありがとうございます……! そんな情報を、私に……!」


「気にすることはないさ。私もリオナちゃんの動向は気になっていたからね。あとは無事戻って来てくれるとよいのだが……」


 心配するような瞳で杯の水を(あお)るハイドルクセンの隣で、ミラはぐしぐしと涙を拭い、夕食のパスタを()()らい始めた。

 少し気が抜けたお陰で、急に空腹を感じるようになったのだ。

 リオナの心配をするあまり、朝から何も食べていないのだから、腹が減っていて当然である。


 残りのパスタを平らげ、杯の水を一気に飲み干したミラは、ドンッと勢いよく杯をテーブルに置いた。

 その様子を見て、ハイドルクセンが朗らかに笑った。


「少しは元気が出たみたいだね、ミラちゃん。やはり、美しい女性に涙は似合わない」


「ふふ、からかっているんですか? 私が『美しい』なんて。……でも、ありがとうございます。お陰で、明日から何をすればよいか、目標がはっきりしました!」


 グッと何かを決意したように、ミラが拳を握る。

 彼女が何をするつもりなのかは、誰の目にも明らかだった。


「……≪怪鳥の渓谷≫に行くつもりなのかい?」


「ええ! そこにリオナさんがいる可能性が少しでもあるなら、行ってこの目で確かめて来なければなりません!」


「そうか」


 ハイドルクセンは一つ(うなず)き、


「……でも、決してダンジョンの中には入らないように。ミラちゃんの今のレベルじゃあ、あそこはまず攻略できないだろうから」


 ハイドルクセンの厳しい言葉に、ミラは昼間≪ランブの塔≫を前に身が(すく)んでしまった経験を思い出す。

 その時の悔しさがまた込み上げてきたが、自分が弱いというのは紛れもない事実である。


(……今はまだ、届かなくてもいい。でも、いずれはちゃんと……)


 改めてその想いを胸にしたミラは、明日の冒険の為、早めに就寝することにした。



何だかんだで役に立つハイドルクセン



ネタキャラのつもりだったんですがねぇ……

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