第四章 第五節 ~ 無力感 ~
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結論から言うと。
≪ランブの塔≫までの道のりで、リオナを見つけることはできなかった。
周囲は平原で見晴らしが良いし、他に分かれ道や隠れられる場所も無い。
真っ直ぐ道を進んでいれば、見落とすはずがないのである。
それでも彼女は見つからなかった。
(……間に……合わなかった……?)
愕然とした表情を顔に貼りつけ、塔の麓で膝を突くミラ。
彼女の心中を嘲笑うかのように、聳え立つ塔は無言でそこに佇み、彼女を見下ろしていた。
揺れる瞳で塔を見上げる。
普段は太陽の光を受けて美しく輝く純白の塔が、今は悪魔が憑依して、ゆらゆらと嗤っているように見えた。
(……リオナさんは、この中に……?)
ゴクリと息を呑み、彼女の後を追って塔の中に踏み入ろうとする。
が、ドモスファミリーの存在を思い出し、身が竦んでしまった。
彼らは第20層から動いていないはずだが、万が一道中で出くわしてしまったら、自分一人では対処し切れない。
そもそも、昨日失くした分の装備も整わないうちに突入するのは、無謀過ぎる。
言い訳じみた理性的な思考がミラの脳に絡みつき、身体を押さえつける。
どれだけ恐怖を押し殺して立ち上がろうとしても、四肢に力が入らない。
気付けば、砂を握り締めた拳がプルプルと震えていた。
(……私だって……私だってリオナさんを守りたいのに……! 私はあの人に追いつくことさえできないと言うのですか……!)
リオナがウォーリアの攻撃から自分を庇った場面が脳内にフラッシュバックする。
彼女がそうまでして守ってくれた自分は、彼女を助けに行く勇気も持てず、ただこうして地に這いつくばっていることしかできない。
それが悔しくて悔しくて、頭がどうにかなってしまいそうだった。
「……う、うぅ……」
懸命に堪えてきた涙が堰を切ったように溢れ出す。
目的が潰えたことで、感情が抑えきれなくなってしまった。
皮肉にも穏やかな風が吹く平原に、枯れかけたウサギの鳴き声がか細く響く。
ひとしきり泣き腫らしたミラは、そっと立ち上がり、胸が締めつけられる思いで≪ランブの塔≫に背を向けた。
こうなってしまった以上、救助隊が結成されるまでの間、リオナの帰りを待つ以外にできることは何もない。
震える足を懸命に前へ動かし、塔から遠ざかる。
(……せめて、リオナさんが生きて帰って来てくださいますように……!)
そう切に願いながら、ミラは重い足取りで≪サンディ≫に帰還した。
失踪した猫はまず見つからない
……猫飼ってないけど




