第四章 第四節 ~ 届かない背中 ~
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≪サンディ≫の北門から伸びる平原の道を飛ぶように駆ける。
遠くに見える純白の塔を目指し、力強く地面を蹴飛ばす。
獲物を狙う鷹の如き鋭い視線を周囲に張り巡らせ、リオナの金髪の頭を探した。
(本当にもう! あの人はいつもいつも問題ばかり……!)
心の中で悪態を吐く。
リオナが現れてからというもの、彼女の悪戯や蛮行や問題行動の数々に心を乱す瞬間が後を絶たなかった。
全く、自分が何度方々に頭を下げ、彼女のフォローをしたと思っているのか……
だが、今回ばかりはそれらの文句を飲み込んだ。
今回の件は、自分が弱かったことも一因にあると思ったからだ。
自分が弱いばかりに、彼女は自分を巻き込まないよう、たった一人で決着をつけに行ったに違いない。
(……悔しい、ですね……)
彼女にとって、自分は守るべき対象でしかない。
対等な仲間でありたいと願っているものの、彼女の横に並び立つには、もっと技術と経験と実力が必要である。
今のままでは、共に戦うことも、彼女に頼られることも夢のまた夢だ。
或いは、既に見限られて、見捨てられてしまっているのではないか……
「っ!」
ふと零れ落ちそうになった涙を懸命に堪える。
様々な思考が胸を衝くが、今はそんなことを考えている場合ではない。
一刻も早く、リオナを見つけて止めなければ……!
大きな赤い瞳を目いっぱい見開き、視界のありとあらゆる範囲を観察する。
決して彼女の姿を見逃さないように。
どんなに小さな痕跡も見落とさないように。
「はぁ、はぁ……!」
≪サンディ≫を出てから走り続けて、もう十分は経っただろうか。
後ろに流れて行く景色は緑ばかりで、眩い金色はここまで一度も目にしていない。
純白の塔が近付くにつれ、胸中の不安は次第に増していった。
(私とリオナさんの敏捷性を考えれば、もうそろそろ追いついてもよい頃のはず……。ここまで来ても追いつかないということは、まさか……)
彼女は既に≪ランブの塔≫に辿り着いてしまったと言うのか。
もしそのまま塔に登り、ドモス達とぶつかれば、今度こそ命が無いかもしれない。
まだ一度しか一緒に冒険をしていないのに大切な仲間を失うなど、そんなの絶対に認められない……!
(リオナさん、その先へ行ってはダメです! 必ず……必ず追いつきますから……!)
祈るような心地になりながら、ミラは一心不乱に≪ランブの塔≫への道を急いだ。
携帯くらい持ってなさいよ(あるわけないか)




