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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第四章 「その異世界人、消息不明につき」
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第四章 第三節 ~ デジャヴ、若しくは蘇る悪夢 ~


     ☯


 翌日、野鳥の(さえず)りが聞こえる穏やかな朝の訪れと共に、ミラは目を覚ました。

 一瞬見慣れぬ天井に(ほう)けてしまったが、すぐにそこが≪サンディ≫のギルドであることを思い出し、安堵(あんど)する。

 それから、もぞもぞとベッドを抜け出し、閉じていた窓を開放した。


 窓を開け放った瞬間、遮られていた日光が一気に部屋になだれ込み、突然の光量に思わず目を閉じる。

 (しばら)くしてから目を開けると、日は既に高く昇り、昼時に差し掛かっていることに気が付いた。


(あやや……また寝過ごしてしまったのですよ……。最近、気が緩むと起床時間がおざなりになって良くありませんねえ……)


 そうは言っても、初夏の温暖な気候に包まれて思う存分惰眠を貪るのは、何とも気持ちの良いものである。普段は優等生のミラも、睡眠に対してだけは甘くなってしまう。


 このまま二度寝を決め込んでしまおうか……。

 そんな考えは、「くぅ」という可愛らしい腹の音に()き消された。

 ふとリオナの様子が気になったミラは、怠惰な思考を振り払いつつ、リオナの眠るベッドを見()った。


(あれだけの戦闘があった後ですから、流石(さすが)のリオナさんもまだ目覚めて……)


 そう思ったのだが、


「……あれ?」


 ミラの予想に反して、ベッドはもぬけの殻だった。

 昨日まで確かにそこにいたはずの人物は忽然(こつぜん)と姿を消しており、後には無造作に剥がされたブランケットと数本の金髪だけが残されている。


 その光景を見て、ミラは壮絶に嫌な予感を覚えた。


(……そう言えば、リオナさんがこの世界に召喚された翌日にも、似たような事があったような……)


「リ、リオナさんっ⁉ 何処(どこ)に行ってしまわれたのですかーーっ⁉」


 慌てて部屋を飛び出し、リオナを探してギルド中を駆け回る。

 寝間着姿のままだったので大層驚かれたが、ミラにとってはそれどころではない。

 一度彼女から目を離すと、再び見つけ出すのに多大な困難を伴うということを、ミラは身を(もっ)て知っていた。


「リオナさーーんっ‼‼ いたら返事を……!」


 廊下の曲がり角を曲がろうとした時、向こうからやって来た人とぶつかりそうになった。


「わっ⁉ す、すみません!」


「いや、こちらこそすまな……ってミラちゃんじゃないか。どうしたのだ、そんな恰好(かっこう)で?」


 向こうから歩いて来たのは、ハイドルクセンだった。

 丁度ミラ達の様子を見に来ようとしていたのか、片手にパンやら水やらの入ったバスケットを提げている。


 ハイドルクセンの指摘で、ミラは初めて自分が寝間着姿であることを思い出したが、それを気にするより早くリオナの所在を尋ねていた。


「リ、リオナさんを見ませんでしたかっ⁉」


「ん? ああ、見たとも」


「そうですか、見ていな……え、見たんですかっ⁉」


「う、うむ」


 まだ寝ぼけて頭が回っていないのか、ミラは一瞬ハイドルクセンの返事を聞き逃した。


「何処に行かれたのですかっ⁉」


「それはわからないが……。装備一式を持って、まるでダンジョンにでも潜りに行くかのような様子だった」


「なっ⁉」


 それを聞いて、ミラは顔を青ざめさせた。


(ま、まさか、ドモスファミリーにリベンジする為、一人で≪ランブの塔≫に向かったと言うのですか……⁉ まだ昨日の疲労が残っているはずなのに、なんて無茶な……!)


「ど、どうして止めなかったのですか⁉」


「いや、私も止めようとしたのだが、『止めてくれるな』と言われてしまってね」


「う……ならせめて、私に伝えてくだされば……!」


「『ミラには伝えるな』と言われてしまってね」


「用意周到ですかっ‼‼」


 がっくりとウサ耳ごと項垂(うなだ)れる。

 こんなコミカルな様子だが、事態は見た目より深刻だ。


(早くリオナさんを見つけて連れ戻さないと! 今のコンディションで彼らに挑むのは危険です! それなのに一人で行くなんて、自ら死にに行くと言っているようなものです!)


「ハイドさん、リオナさんを見たというのは、いつ頃のお話ですか?」


「つい三十分程前のことだったかな。遅めの朝食を取っていたのか、一階の大衆食堂から階段を上がって来たところですれ違ったんだ」


(三十分前……急げばリオナさんが≪ランブの塔≫に辿(たど)り着く前に追いつけるはず……!)


 ≪ランブの塔≫は現在、ハイドルクセンの指示で立入禁止になっているはずだが、リオナがそれを律儀に守るとは思えない。

 彼女が塔に足を踏み入れる前に、どうにかして止めなければ……!


「わかりました、ありがとうございます!」


 勢いよく(うなず)いたミラは、つむじ風が巻き起こる程の速度で反転して部屋に戻り、手早く着替えと装備の点検を済ませて、風と共にギルドを飛び出して行った。


 嵐のように去って行った彼女の背中を呆然(ぼうぜん)と見送ったハイドルクセンは、片手に伝わる重さをふと思い出し、ポツリと(つぶや)いた。


「……朝食のパンと水、渡しそびれてしまったな」



今日も≪サンディ≫の街は平和です!(棒)

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