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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第四章 「その異世界人、消息不明につき」
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第四章 第一節 ~ 残された不安 ~


     ☯


「なるほど。そんなことが……」


「ええ」


 ≪サンディ≫のギルドに戻り、治療を終えたミラは、ベッドで眠るリオナを見守りつつ、ハイドルクセンに≪ランブの塔≫でのいきさつを話していた。


 第20層でドモスファミリーと交戦したこと。

 ドモスが第20層の天井をぶち抜いて、第30層のウォーリアを召喚したこと。

 リオナがウォーリアの攻撃からミラを(かば)って大怪我(けが)をしたこと。

 手に負えないウォーリアから逃げる為、ダンジョンの壁を破壊して、そこから飛び降りたこと……


 それら一連の出来事を聞き終えたハイドルクセンは、


「……しかし、≪ランブの塔≫から飛び降りるとは随分な無茶をしたものだな、リオナちゃんは! ミラちゃんが重力操作の魔法を使えなければ、二人共無事では済まなかっただろうに……」


「……恐らく、リオナさんはそこまで計算してこの強硬策に出たのでしょうね。一見破天荒に見えて……いえ、実際その通りなのですが……それでも、最後には全て丸く収めてしまう。そういう判断ができるお方です、リオナさんは」


「フッ、そうだね」


 隣で眠るリオナの寝顔をチラリと見()って、それから二人は小さく笑い合った。


「……それにしても、ドモスファミリーの連中がダンジョンを根城にしていたとは……」


 一転して声のトーンを低くして、ハイドルクセンは(うな)った。


「道理でなかなか尻尾を(つか)ませないわけだ。モンスターの群れの中で暮らすなど、普通考えつかないことだからね」


「環境は危険ですが、その分足を踏み入れる人の数も少ない……。適応することさえできれば、身を隠すのにはうってつけの場所ということでしょう」


「だが、今のミラちゃんの話を聞くに、団員の(ほとん)どはミラちゃん達と〝コバルト・ガード〟――〝子ウォーリア〟にやられてしまったのだろう?」


「ええ、そのはずです。残っているのは――運良く生き延びた団員と、召喚術士と、団長のドモス……ですね」


 ハイドルクセンは「ふむ……」と(つぶや)きながら右手を顎にやった。


「……居場所がわかった以上、早々に討伐隊を出したいところだが、ギルドは今、人手が足りていない。準備が整うまで、当分の間≪ランブの塔≫は立入禁止とすべきだろう……」


「ま、待ってください!」


 ミラが慌てて声を上げた。


「む? どうしたんだい、ミラちゃん?」


「……実はその、私達と行動を共にしていた運び屋のリィさんをダンジョンに置き去りにして来てしまって……。すぐに救助隊を出して欲しいのです!」


「何⁉ そうだったのか⁉」


 ハイドルクセンが驚いた声を上げる。

 ミラはギュッと拳を握りながら、


「……あの時は緊急事態で、リオナさんの命が最優先でしたから、リィさんを再び探している時間がありませんでした……。で、ですが、彼女はまだ幼い少女で、あんな化物達に襲われたら、もう……っ!」


「落ち着くんだミラちゃん! ドモスファミリーの目的は金銭や装備の簒奪(さんだつ)だろう⁉ 恐らく命までは取られない! それに、彼女とて運び屋の一人なんだ! 万が一の時の対処法くらい心得ているはず!」


「うぅ……!」


 ポロポロと涙を流すミラを(なだ)めるように、ハイドルクセンは彼女のウサ耳に言い聞かせる。


 運び屋は契約によって冒険者パーティーに同行するだけなので、冒険者に運び屋を守る義務は無い。

 その為、運び屋は自力である程度の事態に対応できるよう、相応の準備をしているものである。

 それは、仮令(たとえ)年端のいかない少女であっても例外ではない。


「……無論、救助は早いに越したことはないが、そうなるとドモスファミリーと遭遇する可能性が高い。いくら頭数を減らしたとは言え、まだ団長とダンジョンボスが残っている。生半可なパーティーでは、返り討ちに遭うだけだろう」


「ではどうすれば……⁉」


「……救助隊に私も加わったとして、最低でも10――できれば20人程度のメンバーを集めたい。それまでの間、くれぐれも一人で救助に向かうなどという愚かなことは考えないでくれたまえ。何、そう時間はかからない。必ずその少女を救ってみせるとも!」


「……はい、お願いします……。あと、その救助隊には私も同行させてください」


勿論(もちろん)だ。頼りにしているよ」


 ハイドルクセンが縮こまるミラの肩にポンと手を置く。

 励ますようにギュッと力を込めてから、彼は立ち上がった。


「さて、私は早速準備に取り掛かるとしよう。ああ、リオナちゃんが回復するまで、この部屋は自由に使ってもらって構わないよ。ポーションで傷は治したが、疲労まで回復したわけじゃない。二人共十分に休んで、体調を整えてくれたまえ」


「はい、何から何までありがとうございます」


「フフ、これもギルドマスターの仕事のうちだとも」


 そう言い残して、ハイドルクセンは部屋を出て行った。


 二人きりになり、リオナの規則正しい寝息だけが静寂に溶ける。

 彼女の寝顔をまじまじと見たのは、これが初めてかもしれない。


(……リオナさんが回復したら、救助隊と協力してリィさんを助けに行かないと……! でも、リオナさんですら敗北を喫するような相手にもう一度挑んだとして、次は本当に勝てるのでしょうか……?)


 一抹の不安が頭を(よぎ)る。

 リオナの実力を絶対的に信頼していた為に、彼女が敗れたことに対する衝撃は大きい。

 誤魔化そうとしてどれだけ頭を振ってみても、それが完全に消え去ることはなかった。


(……いけない。こんな不安な気持ちになってしまうのは、きっと疲れているからなのでしょう。私も早めに休むとしますか……)


 意識的に考えることを止め、部屋に置かれたもう一つのベッドに潜り込む。


 最後に、もう一度だけ隣で眠るリオナの横顔を見遣ってから、


(……リオナさん、私はあなたを信じていますから……。だから、早く目を覚ましてくださいね……?)


 そう心の中で呟いて、ミラは穏やかな眠りの世界へと落ちて行った。


運び屋はブラック

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[一言] >「……実はその、私達と行動を共にしていた運び屋のリィさんをダンジョンに置き去りにして来てしまって……。すぐに救助隊を出して欲しいのです!」 >運び屋はブラック  ブラック……?  企業……
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