第三章 第七節 ~ 勇気の代償 ~
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「っつう……ッ!」
埋もれた肩を岩壁から引き抜き、どうにか体勢を立て直す。
受けたダメージは壁や地面に逃がして肩代わりさせたが、流石に疲労を隠しきれなくなってきた。
額に浮かんだ汗を雑に拭い、再びドモスとウォーリアのコンビに相対する。
「チッ……しぶといにも程があんぞ、ボス猿ッ!」
「それはお互い様だろう。よもや、〝レイジ状態〟のコイツを相手にして、ここまで粘れる奴がいるとは」
ウォーリアはHPが半分を切ると、パラメーターが1・5倍になり、行動パターンが変化する〝レイジ状態〟に移行する。
強力なステータスから繰り出される数々の特殊行動を前に、リオナは若干押され気味であった。
(……レイジ状態のウォーリアとやり合うのは分が悪ィ。早えトコ倒すか逃げるかしたいところだが、ボス猿の野郎がそれを許さない。全く、面倒な相手だ……)
そうは言いつつも、リオナの内心で燃える闘争心はまだ尽きていない。
次の攻め手を考え、彼女は拳を握った。
「……回復しないのか?」
「ハッ、バカ言え! オレがポーチに手を伸ばした瞬間、二人がかりで畳みかける腹心算だろうがッ! だったら……これ以上被弾する前に、テメェらを叩き潰せばいいだけの話だろッ⁉」
リオナが駆け出す。
それに呼応するように、ドモスとウォーリアも駆け出した。
(衝突まで残り0・8秒! このタイミングで……!)
「≪白式・旋風――」
武技を繰り出そうとした、その時だった。
「リオナさんっ‼‼」
明後日の方向から砲弾のような光球が飛んで来た。
ドモスとウォーリアの移動のタイミングを完璧に読み、寸分違わず彼らのみを狙う。
既に最高速度に達している彼らは、急停止も方向転換もできず、光球をモロに喰らった。
「ぐおぉッ⁉」
着弾と同時に起こった爆発に巻き込まれ、ドモスは大きく体勢を崩す。
そこへ、魔法を放ったミラが降り立った。
「はあっ!」
≪ルナ・ブレイド≫の光の刃を纏ったダガーを一閃、ドモスに見舞う。
体勢を崩されていたドモスは、下手に迎え撃つことを避け、バックステップで距離を開けた。
敵が怯んでいることを確認し、ミラは背後にいるリオナに振り返った。
「リオナさん、ご無事ですか⁉ 物凄い音がして振り向いてみたらリオナさんが壁に埋もれていたものですから、慌てて――」
「バッ……! テメェなんでこっちに来やがったッ⁉」
「……え?」
リオナがこれまで見たことがない程狼狽した顔を見せる。
予想外の反応に、ミラが呆気に取られていると、
「グオオオオォォォォオオォォオオオオオ――――ッ‼‼」
爆発で巻き上がった土煙の中から、ウォーリアが姿を現す。
そのまま淀みない動きで、鋭い爪の生えた手刀をミラに突き込んだ。
ミラは知らなかったが、ウォーリアはレイジ状態に移行すると、一切の状態異常が無効になる。
そして、それは一度の攻撃で一定以上のダメージが入った時に一瞬相手の動きを鈍らせる〝怯み状態〟も例外ではなく――
つまるところ、ウォーリアはあの爆発の中でも、動きを止めることなく自由に行動できたということだ。
「……ぁ」
ウォーリアの強烈な一撃を喰らった彼女は、その勢いのまま岩壁に叩きつけられた。
彼女だって、守りたい




