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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第三章 「その異形、最凶につき」
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第三章 第六節 ~ 奮戦 ~


     ☯


「はあああぁぁあああっ‼‼」


 ミラがムーンダガーで斬りかかる。

 相手は三日前にも遭遇したナイフ使いの男。

 魔法を使いたいところだが、MPの残りが心もとない今は我慢して、近接戦を挑んだ。


 ミラが接近するのを阻む為、ナイフ使いは投げナイフを駆使して、彼女の進行を妨害した。

 真っ直ぐ彼女を狙うだけでなく、床や壁の反射も利用して、四方八方から攻撃を仕掛ける。

 軌道を読みにくい強力な攻撃だったが、


「ふうっ!」


 ミラは宙高く跳躍すると、さながら体操選手のように華麗なひねりを披露した。

 無論、ただ魅せる為ではなく、身体の回転により、飛来するナイフを受け流す為である。

 何十本と迫るナイフの軌道は、彼女の咄嗟(とっさ)の身のこなしにより、綺麗(きれい)()らされた。


 投げナイフ攻撃の第一波を(しの)いだ彼女は、自慢の敏捷性(びんしょうせい)で一気にナイフ使いとの間合いを詰めた。


「はあっ!」


 ミラがダガーを振るう。

 しかし、ナイフ使いにはもう一つ、強力なスキルが存在する。


「……≪影討ち≫」


 ナイフ使いが自らの影の中に潜る。

 そこへ逃げ込まれてしまえば、どんな攻撃も通用しない。

 三日前、リオナもこの影のスキルで苦戦を強いられたのは、ミラの記憶にも残っている。


 ズブズブと全身を沈めていくナイフ使いに、ミラは懸命にダガーを伸ばす。

 が、ナイフ使いが影に潜る方が僅かに早い。

 ミラのダガーは、最早誰もいなくなった岩壁を突くのみに終わる――




 そんなナイフ使いの油断を、ミラは見逃さなかった。




「≪ルナ・ブレイド≫っ!」


「何ッ⁉」


 ミラの手に持つダガーが淡い光に包まれる。

 ダガーの刀身に(まと)わりついた光は、新たな光の刃を形成し、ダガーの刃体を1m超にまで伸長させた。

 伸長したダガーは影に潜るギリギリのところでナイフ使いの肩を貫き、相応のダメージを与えた。


「ぐぅ……!」


 負傷したナイフ使いはスキルを維持することができず、潜りかけた影から弾き出された。

 そこにミラが飛び込み、長剣程になったダガーを振り回す。

 ナイフ使いも咄嗟にナイフを構えて応戦するが、不意を突かれたことで、あっさりと体勢を崩された。


「……ッ!」


「そこですっ‼‼」


 体勢の崩れたナイフ使いの脇腹目掛けてダガーを突き込む。

 殺すつもりはないが、すぐに戦線に復帰されても困る。動けない程度に大ダメージを与えるつもりだった。


 光の刃がナイフ使いの肉体を貫き、多量の血液が地面に滴り落ちる。

 ナイフ使いは貫かれた脇腹を抑えつつ、そのまま戦線を離脱していった。


「よし、まずは一人……!」


 一旦呼吸を落ち着け、ダガーを構え直しながら、次の敵の方を振り向く。


 人の身の丈程の鉄槌(てっつい)を持った子ウォーリアが襲いかかろうとしていた。


「……次の相手はあなたですか」


「キシイイィィィッ‼‼」


 子ウォーリアは鉄槌を目いっぱい振りかぶると、小さな身体全部を駆使してミラに(たた)きつけた。

 それを光の刃を纏ったダガーで受け止めようとするミラだったが、


「くっ! 重い……!」


 見た目は小柄でも、中身はモンスター。秘めている腕力がまるで違う。

 押し込まれそうになるのを、ミラは懸命に踏ん張って耐えた。


「う、うぅ……」


「キシ……」


 (つば)()り合いのような形になりながら、両者は自分の得物を押し合う。

 身長は同じくらいだから、位置関係による有利不利はない。

 だが、元々近接戦が不得手なミラは腕力が続かず、徐々に押し負け始めた。


(こ、このままでは……!)


 ジリジリと迫って来る子ウォーリアの鉄槌に、ミラが焦り始める。

 どうにか状況の打開を……と考える彼女の前で、子ウォーリアが不意に別行動を取った。


「キシャアッ!」


「きゃあっ⁉」


 ミラと肉薄していた子ウォーリアは、彼女の顔目掛けて何かのブレス攻撃を繰り出した。

 焦りで頭がいっぱいだった彼女はこれに反応できず、子ウォーリアのブレスをモロに()らってしまう。

 咄嗟に跳躍して間合いを開けたが、


「あ……か、身体……が……」


 急に身体が(しび)れ、動けなくなってしまう。

 指一本動かすどころか、声を上げることもできない。

 全身に力が入らなくなり、ダガーを取り落としてしまった。


(これは……スタン状態⁉ さっきのブレスには麻痺毒が含まれていたのですか!)


 必死に痺れを振り払おうとしながら、唯一動く頭で、冷静に自らに起こった異変について考える。


 スタン中は呪文の詠唱を含めた一切の行動が封じられるが、バインドと違って効果は一瞬である。

 自然回復するので、回復アイテムを使わずとも、直に身体は動くようになるだろう。

 子ウォーリアとは間合いも取ってあるし、追撃を受ける心配もない。




 ――もっとも、その隙を他の団員達が見逃すはずもないのだが。




「ヒャアァァッ‼‼ もらったゼェッ‼‼」


「っ⁉」


 ミラの背後に、一人の団員の気配が現れる。

 姿を確認しようにも、スタンが続いて振り向くことができない。


(こんな所に伏兵が⁉ しまっ……)


 何かをする間もなく、ミラの脇腹を鈍い痛みが襲う。

 硬質な何かで殴られたようだ。


「かふっ!」


 そのまま吹き飛ばされた彼女は、蹴られたサッカーボールの如き勢いで壁に叩きつけられた。

 その衝撃でスタンは解けたが、受けたダメージが大きい。

 岩壁に身体を預けながら、何とか立ち上がった。


「はぁ、はぁ……っ!」


 涙で(にじ)む視界の中、自分を襲った伏兵を見()る。

 六尺程の長い棒状の武器を持っていた。あれで殴られたのか。


「ぅ……くっ……!」


 団員がとどめを刺すべく近付いて来る。

 反撃したいが、受けたダメージが大き過ぎて、思うように身体が動かせない。

 魔法を使おうにも、ダガーは手の届く範囲に落ちていない。

 ダガーが無ければ、魔法の精度は格段に落ちてしまう。


「っ!」


 絶体絶命を悟り、ギュッと目を(つむ)る。

 暗くなった視界で、団員が地面を蹴飛ばす音だけが聞こえた。


「これで終わ……ゴバアッ⁉」


 団員の声が不自然に途切れる。

 覚悟していた衝撃はいつまで経っても襲って来ない。

 それどころか、眼前まで迫っていたはずの敵の気配も全く感じられなくなっていた。


(……?)


 恐る恐る目を開けてみる。


 団員は(はる)か向こうまで吹き飛ばされ、口から泡を吹いて地面に倒れ伏していた。

 六尺棒はグシャグシャにひしゃげ、彼の手に握られている。

 アーマーは砕け、(かろ)うじて彼の身体に引っかかっているというような状態だった。


 気絶し、動かない団員に近付く影が一つ。


(子ウォーリア……⁉)


 団員に歩み寄った子ウォーリアは、手にしていた重たい鉄槌を振り上げ、そして――


「っ!」


 倒れ伏す団員の顔面目掛けて、力いっぱい振り下ろした。

 一度に飽き足らず、何度も何度も打擲(ちょうちゃく)する。

 その度に、潰れた彼の頭は柘榴(ざくろ)色の花を咲かせ、脳漿(のうしょう)を辺り一帯に()き散らした。


「ぅ……!」


 目の前で繰り広げられるあまりに残忍な光景に、ミラは思わず嘔吐(えず)いた。

 胃液の逆流を必死に(こら)え、冷静に状況を確認する。


(……仲間割れでしょうか? 子ウォーリアが団員を……)


 ふと、戦いの剣戟(けんげき)がウサ耳に届いたので、そちらに目を遣る。


 すると、広場のあちこちで、団員達が子ウォーリアと戦っているのが目に入った。

 演技――というわけではなく、本気で互いの武器をぶつけ合っている。

 一体の子ウォーリアに対して、五、六人程の団員が打ちかかっていた。


(……いえ、元々仲間というわけではないようですね。モンスターに敵味方の区別はつかないということでしょうか)


 何にせよ、これはチャンスだ。

 子分のモンスターと言えど、やはり一筋縄ではいかないようで、団員達は子ウォーリアにかかりっきりになっている。

 この隙に上手く脱出方法を確保できれば、彼らに気付かれることなく、スムーズにこの場を脱出できるかもしれない。


(そうと決まれば、早速リオナさんと合流を……!)


 落ちていたダガーを拾い上げ、一際大きな轟音(ごうおん)が鳴り響く方へ振り向いた。


「リオナさん! そろそろ脱出を――」




 リオナがウォーリアに吹き飛ばされ、岩壁に埋もれていた。




※注意:ややGシーンあり(遅い)

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