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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」
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第二章 第十九節 ~ リオナ VS ドモス ~


     ☯


「ぬんッ‼‼」


 ドモスの右手の剣が振り下ろされる。

 リオナは片手剣を両手で支え、角度を付けてドモスの剣が滑り落ちるように受け流した。

 そのまま反撃に移ろうとしたが、


「どわっと⁉」


 ドモスは受け流されるのも構わず、大剣を思い切り地面に(たた)きつけた。

 地面が(ひび)割れ、そこに足を取られたリオナの元にもう一本の大剣が襲い来る。

 すぐさま体勢を立て直したリオナだったが、想像を超える怪力で叩きつけられる大剣を受け切ることはできなかった。


 止めるのは不可能と判断したリオナは、下手に踏み(とど)まることはせず、わざと空中に身を投げ出して吹き飛ばされた。

 着地を決め、剣を握る手をプラプラと振りながら、


「あー痛え。とんでもねえ馬鹿力だな、オマエ」


「ふんッ‼‼」


 リオナの軽口には付き合わず、ドモスが追い打ちを仕掛ける。

 重い大剣を持っている割には動きが早い。

 もっとも、リオナからすれば、マ○オカートの重量級を相手にしているような気分だった。


 交互に振られる二本の大剣を優雅に(かわ)していく。

 リオナを仕留め損なった剣がフィールド上の岩を破壊し、地面を陥没させ、岩壁に亀裂を生んでいく。

 威力は抜群だが、当たらなければ唯の大振りの剣。恐るるに足らなかった。


「フ! 上手く避けるじゃねえか……ッ!」


「そっちこそ、なかなかの剣(さば)きだぜ? 無骨だが、人の身にゃ真似(まね)できねえ力強さだ」


「だが、それでは貴様に当てられんらしい。なら……!」


 不意にドモスが攻撃のパターンを変えた。

 リオナを岩陰に追い詰め、一本ずつ交互に繰り出していた剣を、二本同時に横()ぎに振るう。

 これは流石(さすが)に避けられまい、と思ったのだが、


「あらよっと!」


「何ッ⁉」


 リオナはほぼ地面に()いつくばるような低いブリッジの姿勢で、二本の剣を躱した。

 そのままバク転の要領で身を起こす間際、ドモスの顎に蹴りを入れる。

 突き抜けるような衝撃がドモスの脳を襲った。


「ぬぐぅッ⁉」


「そこだッ!」


 のけ反ったドモス目掛けて、リオナも横薙ぎの剣を繰り出す。

 首を狙ったつもりだったが、寸でのところでドモスが半歩下がり、薄皮一枚を切り裂くだけに終わった。


「……ふむ、勘がいいな。今のは本能的な動きだろ?」


「ほう……そんなことまで見破られてしまうのか」


 ドモスが顎に蓄えた(ひげ)をさする。

 その瞳には、未だリオナを品定めし、戦いを楽しむような色が見て取れた。


「フ、フハハ……面白い、面白いぞ⁉ これ程の獲物は、果たして何年振りか⁉」


 哄笑(こうしょう)を上げるドモスに、リオナも獰猛(どうもう)な笑みで返した。


「ハッ、馬鹿言ってんじゃねえッ! オレは獅子(しし)だ! 狩猟者だ! そのオレが〝獲物〟になるわけねえだろッ⁉」


 吐き捨てつつ、ドモスへの距離を詰める。

 大剣を振り上げ、迎撃の構えを見せてきたので、≪(おぼろ)()き≫でタイミングを見誤らせた。


「ッ⁉」


「おらよッ‼‼」


 意表を突かれ、一瞬動きを止めたドモスの脇腹に一閃(いっせん)

 シャツの下の筋肉に一筋の朱線が走り、そこから僅かに鮮血が滴り出す。

 痛みに顔を(しか)めるドモスの背後に回り、今度は後頭部に全力の回し蹴りを叩き込んだ。


「ぐぁッ⁉」


 ドモスの重い身体がふらつく。

 脳に激しい衝撃が加わり、彼の意識を刈り取らんとする。

 確かな手応えを感じつつ、リオナはふと違和感を覚えた。


(……? クリティカルを狙ってるとは言え、思ったより効いてんな。かなり高ステータスっぽかったし、オレの攻撃なんて、蚊が刺したくらいのダメージしか与えらんねえと思ってたが……)


 そこで、リオナは一つの可能性に思い当たる。


(……ひょっとして、レベルが上がってるのか?)


 言われてみれば、確かに打撃の威力も斬撃の鋭さも、若干だが増しているような気がする。

 演出も何も無い所為せいで、これまで気付いてこなかったのだが……


 湧き上がる高揚感に口角を()り上げつつ、リオナは更に攻撃の手を激化させた。


(そういうことなら、遠慮なくいかせてもらうぜッ!)


「≪バーストフリップ≫ッ‼‼」


 未だ視界のはっきりしていないドモスに、リオナが猛ラッシュを浴びせる。

 どれも致命傷にはならないが、着実に彼のHPを削り取り、一方的に追い込んでいた。


「ぐ……ぐうぅ……!」


 ドモスの口から(うめ)き声が漏れる。

 効いてることを確信したリオナは、その上で決定的なダメージを与えるべく、自身の最大威力の剣技を放った。


「≪()(けん)の五・天衝(てんしょう)≫ッ‼‼」


 加速をつけてからの一直線の突き。

 剣先に全エネルギーを集中させた刺突は、分厚い岩盤すら貫通する威力を秘めている。

 地面を蹴飛ばし、跳躍したリオナは、自身ごと突っ込む勢いでドモスに迫った。


 弾丸のような速度で突っ込んで来るリオナの剣に対し、ドモスは、


()めるなッ‼‼」


 あろうことか、ドモスは大剣を置き、リオナの剣を素手で(つか)み取った。

 手のひらから出血しながらも、両足を地面に縫いつけ、突きの勢いを完全に減殺する。

 常人離れした膂力(りょりょく)と気力と反応速度に、流石のリオナも驚愕(きょうがく)した。


「うおッ⁉ マジかッ⁉」


「ふんぬらぁッ‼‼」


 剣を掴まれ、宙吊りになったリオナの腹に、渾身(こんしん)のストレートパンチが埋め込まれる。

 いつもなら地面を転がったり衝撃を逃がしたりしてダメージを抑えるリオナだが、宙に浮いていてはそれもできない。

 ドモスの全力で殴られたリオナは、そのダメージの大きさに顔を顰めた。


「ぐッ……!」


 即座に剣から手を離し、殴られるまま吹き飛ばされる。

 どうにか着地はしたが、あまりのダメージに思わず膝を突いてしまった。

 リリアンの店で買った防御力アップの衣服を着ていなければ、ここで勝敗は決していただろう。


(クソッ! アイツの攻撃、隙は大きいが威力は馬鹿にならねえ……!)


 胃の中のモノが逆流して来そうになるのを必死に(こら)えながら、冷静な頭で考える。

 多少レベルが上がったところで、ステータスが飛躍的に上昇しているわけでもない。今の低HPでは、二撃目を耐えることは不可能だ。


(……ここから先は、一撃たりとも攻撃をもらうことは許されねえ。あの威力じゃあ、防御すんのは危険だ。回避に専念しねえと……。ったく、攻めてたはずが、一発でピンチじゃねえか……!)


 絶対絶命。

 そんな言葉が頭を(よぎ)る。

 しかし、そんな内心とは裏腹に、リオナの顔には実に楽しげで獰猛な笑みが浮かんでいた。

 この異世界に来て初めてと言ってよい程の大ダメージを受けながら、彼女は強敵の出現に歓喜していたのだ。


「……いいぜいいぜ、面白くなってきたなあッ! あんなに効いた一発は久しぶりだッ‼」


「……そうか。なら次こそ、本当に貴様の命を終わらせる一撃を()らわせてやろう。――覚悟はいいな?」


「ああ! いつでも来なッ‼‼」


 リオナが叫ぶと同時に、ドモスは置いていた大剣を拾い上げ、次の攻撃の構えを取った。

 左手の剣を横一文字に、右手の剣は大きく背中まで振りかぶってバネを()める。

 そのモーションに、リオナは見覚えがあった。


(……なるほど、スキルを使う気か。なら、ギリギリで躱して、攻撃後の隙を狙う……!)


 相手の挙動を注視しながら、リオナも拳を構える。

 剣は先程手放してしまったから、拳で立ち向かうしかない。

 大剣を相手に不利とも思えるが、リオナは全く臆した様子がなかった。


(……とは言え、あのスキルは二点同時攻撃。躱すのも一苦労だな。失敗すれば、その時点でゲームオーバーだし、もっと安全に立ち回る方法もあるんだろうが……ま、取り()えずやってみっか!)


 様々な不安や可能性、策を薄い笑み一つで放棄し、ドモスが繰り出すであろうスキルを真っ向から打ち破る為に、リオナは限界まで集中力を高めた。

 二人の戦いを見守るミラやリィ、ドモスファミリーの団員達の存在が彼女の視界から消える。

 鈍化した世界の中で、ドモスがゆっくりと動き出し、スキルを発動させるのが見えた。


 そして――


「≪グランドクロス≫ッ‼‼」


 彼女の命を刈るべく滑らかに走る凶刃がリオナに迫った。



Lv5くらいにはなってそう

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