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初期レベ廃人ゲーマーと獣人少女の異世界終焉遊戯<ワールズエンド・ゲーム>  作者: 安野蘊
第二巻 第二章 「その巨塔、予測不能につき」
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第二章 第十一節 ~ モンスターハウス ~


     ☯


「ひいっ⁉ 〝リトルデーモン〟ですうっ!」


「てい!」


「ひいぃっ⁉ 〝メイズスネーク〟ですうぅっ‼」


「そい!」


「ひいぃぃぃっ⁉ 〝スネークデーモン〟ですうぅぅぅっ‼‼」


「……いや、アレは〝デーモンスネーク〟じゃね?」


「どっちだっていいですよっ‼‼」


 ミラの≪ムーンライトアロー≫が突き刺さり、全長3mを超える悪魔顔の蛇が黒い粒子となって消えていった。

 荒い息を吐き、モンスターの消えた方を(にら)みながら、


「はぁはぁはぁはぁ……! というか! なんで! こんなに! モンスターの出現率が高いんですかっ!」


「きっとウサギのお姉さんを食べたくて仕方ないんだろうねえ!」


「モンスターに好かれたって(うれ)しくありませんよ! あと、私は食用ではありませんっ‼」


 怒りに任せて≪ムーンショット≫を乱射する。

 それで、残っていたモンスターは全て掃討された。


 モンスターの気配がなくなったところで、ミラは(ようや)く一息()いた。


「はぁ……やっと休めるのです……。このペースでは、次のフロアに進むまでに、MPを使い果たしてしまうのですよ……」


「魔法の使えねえ魔術師なんざ、期限切れのイベチケ並みに役立たずだな」


「そ、そこまでひどくはありませんよ……たぶん」


 ミラがポーチからMP回復ポーションを取り出し、一気に飲み干す。

 空になった容器が石の地面を(たた)く音が、暗い迷宮区画に響いた。


「ふう、生き返りました……。あ、リオナさん、こちらの道はどちらに……?」


「左だ」


 リオナの指示通り十字路を左に曲がる。

 間もなくして、第16層への階段が見えてきた。


「あ、階段だ! すごいねえ、ライオンのお姉さん! ここまで迷わずあっという間に辿(たど)り着けちゃったよ!」


「まあな。迷宮区画っつても、道がわかってるなら恐れる程のモンじゃあない。モンスターとトラップにさえ気を付けてりゃあ、この通りだ」


 第11層からは、石のブロックで形作られた巨大な迷宮が広がっていた。

 薄暗く、道が複雑で、トラップもふんだんに仕掛けられている。

 更に、通路には隠れられる場所が(ほとん)ど無い為、遭遇するモンスターを全て蹴散らしながら進まなければならなかった。


 階段のある広間。そこに差しかかった時、先頭を歩いていたミラが唐突に足を止めた。


「あれ? どうしたの、お姉さん?」


「……リィさんは下がっていてください。私が合図するまで、絶対に来てはいけません」


「え? どういうこと……?」


「リオナさん」


「ああ」


 リィを背後に(かば)いながら、ミラとリオナが前へ出る。

 その瞳は険しく、鋭い視線で目の前の広間を見つめている。

 二人が自らの得物を引き抜き、臨戦態勢を取った。


「え? え? 一体どうしたんだい……?」


「……ここは初心者向けフロア最後の難関。ある意味、ギガスコーピオンよりも厄介な敵がいる所です。リオナさん、覚悟はよろしいですか?」


「いつでも行けるぜ」


「では……参りますっ‼‼」


 困惑するリィを置いて、二人は階段の広間へと突入した。

 周囲を警戒し、いつモンスターが現れても即座に対応できる態勢を作る。

 リィが見つめる前で、リオナ達は広間の中心で背中合わせになりながら、敵が来るのを待ち受けた。


「……何も、起こらない?」


 リィが小首を(かし)げた瞬間、広間の奥の暗闇に無数の赤い光が(うごめ)き出した。

 壁一面、床一面に広がるそれらの光は、ゆらゆらと揺らめきながら、次第にこちらに近付いて来る。

 それら全てがモンスターの目であることを理解するのに、そう大した時間はかからなかった。


「ア、アレが全部モンスター、なのかい……?」


 リィが目を見開く前で、暗闇の向こうからモンスターの軍勢が姿を現した。

 種類は様々で、二足歩行、四足歩行、六本足、八本足、単眼、複眼、有角、有翼、無貌、無機物……まるで統一感がない。

 正しく混沌(こんとん)と呼ぶに相応(ふさわ)しい状況だ。


 にじり寄るモンスター達を注視しながら、ミラが(つぶや)いた。


「……〝モンスターハウス〟。大量のモンスターが現れ、一斉に攻撃してくるダンジョン屈指の危険地帯……! 第16層以降では度々見かけますが、確定で遭遇するのは、このフロアだけです!」


「大方、初心者を脱する為の試練ってトコだな!」


 嬉々(きき)とした表情で剣を構え、気持ちを(たかぶ)らせたリオナが笑う。

 彼女にとって、目の前のモンスター達は草食動物の群れと変わらない。蹂躙(じゅうりん)し、()らい尽くす為の餌だ。


 背中越しにミラが冷静な声で言った。


「リオナさん、くれぐれも突出しないようにお願いします。状況を見失っては、逃げる機会すら失うことに……」


「安心しろ、ちゃんと全部片付けてやるから!」


「そういうことじゃないって言ってるでしょう⁉ どうしてリオナさんはいつもそうなるんですかっ⁉」


 いつもの戦闘狂っぷりでケラケラと笑うリオナ。

 そんな彼女が不安材料ではある。

 あるのだが……


(……まあ、ここまでの冒険で、リオナさんには思う存分暴れてもらった方が効率が良いということはわかっています。全体の状況判断は私が行えばよいでしょう)


 いつも通りの彼女の存在が、今は何処(どこ)か頼もしかった。

 胸の中に一握りの安心感を抱きながら、


「……では、リオナさんはあちらの大型モンスターの群れをお願いします。私は周りの小型モンスターを排除しますから」


「あいよ、任されたぜ!」


「……ご武運を」


 その言葉を合図に、二人はそれぞれの標的に向かって突貫した。


 モンスター達の(うめ)き声や咆哮(ほうこう)や息(いきづか)いが響く中、二人の冒険者は、猛獣も恐れ(おのの)く程の勇猛な戦いを繰り広げた。



鬼が出るか蛇が出るか……




答えは〝両方とその他多数〟

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